80年代に活躍したガールズバンドで真っ先に思い浮かぶのは、ゴーゴーズやバングルスだが、クライマックスのことは覚えているだろうか? このバンドの特徴は、メンバー6人のうち5人が黒人だったことだ。黒人のガールズバンドは珍しかったから自分たちで楽器を演奏する彼女たちの姿は、やけに新鮮に映ったものだった。 僕は彼女たちの歌を1曲しか知らない。でも、その曲「アイ・ミス・ユー」は、玉石混淆な曲が並ぶヒットチャートの中で一服の清涼剤だった。 歌詞の内容は、許されざる恋(おそらく不倫)の終わりを未練たっぷりに歌ったもので、少しも清涼剤とは言えないのだけど、当時は歌詞の意味などわからないから、清々しい気持ちで聴いたものだった。 とにかく曲がよかった。派手さはないが、歌に込められた静かな情感が多くの人の胸にさざ波を立てた。この美しいメロディーを書いたのは、メンバーのリン・マルスビー。つまり、彼女たちのオリジナルということになる。 「アイ・ミス・ユー」は1985年の秋に、アルバム『レディーズ・ルーム(Meeting in the Ladies Room)』からの3枚目のシングルとしてリリースされた。9月14日に86位でチャートインすると、着実に順位を上げていき、年末年始にかけて全米5位を4週つづけるヒットとなった。だから、僕としては「アイ・ミス・ユー」を1985年のヒット曲だと認識していた。ところが、実際はそうではなかったらしい。 1年後、つまり1986年の年間チャートにおいて、「アイ・ミス・ユー」はそれまで週間ランキングで到達した最高位をさらに上回る第3位に輝いたのだ。これには僕もラジオの前で盛大に驚いた。 なんでも、あらかたヒットし終えた1986年2月に、ディオンヌ・ワーウィックが自ら司会を務める音楽番組『ソリッド・ゴールド』でカヴァーしたらしく、その評判もあってか、じわじわと売れつづけ、ヒットチャートの100位以内に合計6ヶ月以上も居座ったというのだ。 事情を知った僕はすっかり感心し、ヒット曲とは順位の高さだけでなく、どれだけ長く売れたかも重要なのだということを、このとき知ったのだった。 結果として、「アイ・ミス・ユー」は1986年を代表するロングセラーレコードとなった。多少の幸運はあったにせよ、これだけ長く売れたのは、楽曲の力によるものと言って然るべきだろう。 僕はこの曲しか彼女たちの歌を知らない。それだからか余計に「アイ・ミス・ユー」を聴くと、当時のことを思い出す。ノスタルジックに。少しセンチメンタルに。楽器を演奏する彼女たちの姿とともに。
2017.10.04
VIDEO
YouTube / KlymaxxVEVO
VIDEO
YouTube / EyeLook2U
Information