80年代のガールズバンドとしてもうひとつ忘れてはいけないのが GO-BANG'S。
ベティー・ブープそっくりな森若香織(Vo Gt)、元歯科助手の谷島美砂(Ba)、身長183センチのクールビューティー斉藤光子(Dr)。札幌で結成され、森若家が東京に転勤することになって活動休止するも、そのときに作ったテープを忌野清志郎が聴いて「いいじゃん!」と言ったらしい、という話に喜び勇んであとのふたりも上京してきた。若さゆえの勢いがいかに大事かを象徴するエピソードだ。
GO-BANG'S の曲はとことんポップで、キッチュな初期ニューウェーブ風味があり、でも根っこはパンクだった。トレイシー・ウルマンとデボラ・ハリーが同居していた。文化屋雑貨店や大中で買い物をしていそうな親しみやすいお洒落感が女の子に人気だった。メジャーデビューは88年4月だが、それ以前から東京のライブハウスシーンでは名が知られており、ヒット曲「あいにきて I・NEED・YOU!」は89年12月27日リリース。アルペンの CMソングは本当に打率が高い。
3人にもよくインタビューをした。香織ちゃんはスポークスウーマンとしてずば抜けた才能を持っていて、考えていることを言葉にするのに口が追いつかないようなところがあった。“お茶の間からロンドンまで” は絶妙なキャッチコピーだと思う。美砂ちゃんはいつもにこにこしていて、光子ちゃんはときどき人をギクッとさせるようなことを言った。詞も曲もどこにでもいる女の子たちの味方だった。
私がいちばん好きなアルバムは91年3月に出た『SAMANTHA』だ。マンチェスターで808ステイトのエンジニアによってミックスされた音の抜けは抜群で、取材のために訪れたスタジオの扉を開けると光子ちゃんがいたので挨拶よりも早く「アルバムすっごくかっこいい!」と言うと「でしょーーー?」と満面の笑顔で応えてくれたのを覚えている。
武道館公演も89年と91年の2回経験した。最初のとき、葡萄の衣装(武道館だから葡萄)でブランコに乗って上から登場した香織ちゃんの髪飾りがブランコの持ち手に絡まってステージに着いてもなかなか降りられなかったことなど懐かしい。でも、潮が引くのも早かった。あのガラガラの中野サンプラザはいつだったろう、と古い手帳を見たら92年の8月だった。
94年に解散。現在 GO-BANG'S は森若香織のソロユニットとして、女性ミュージシャンを集めて活動している。アンジーの水戸華之介など共通の友達も多いのになかなか話す機会がない。きっといろいろなことがあったのだと思う。私が見る限り、香織ちゃんは昔よりも50歳を過ぎた今のほうがずっときれいだ。
※2017年3月20日に掲載された記事をアップデート
2018.12.11
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