10月21日

バングルズのプロモーション来日にみたガールズバンドの絶対的な掟とは?

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バングルズ「気分はモノクローム」命名の背景にあったもの


私がCBSソニー(昔話なので、あえて当時の社名をつかってます)洋楽のディレクターとして、最初に担当したバングルスの作品は、彼らのメジャーデビューアルバムとしての1984年『All OVER THE PLACE』ですが、これにあろうことか、『気分はモノクローム』という意味が分からない邦題を付けて、同年9月に発売しています。

アルバムカバーからのイメージと秋の季節感を含めたこういう雰囲気だけのタイトルをつけていたことを、恥ずかしながら白状します。

ちょうど西海岸カルチャーとかAORがお洒落で格好いいと思われた時代でした。この流行りのトレンドに乗っかろうとしただけの未熟なディレクター時代の話です。

今更、誰に弁解しているのか分かりませんが、この年、フットルースやブルース・スプリングスティーン、スティーヴ・ペリーなどのヒットアルバムが目白押し。大型プロジェクトやプライオリティ・アーティストに挟まれた中で、バングルスのデビュー盤に雰囲気だけのタイトルをつけるだけつけて、何もやってあげれなくて申し訳ない気持ちでいっぱいでした。個人的にも大好きなバンドでしたので、もうちょっと時間とエネルギーのかけようがあったはずです。



次作「マニック・マンデー」「エジプシャン」の大ヒットの時は、私は半年だけたまたま制作を離れて宣伝の立場でメディアへプロモーションしていましたが、1988年『EVERYTHING』発売の際は、制作担当に戻ってました。発売日は1988年10月21日。

今回も邦題で、またちょっと変化球を投げてみました。発音する分には同じなので気づきにくいものもありますが、タイトルは実は英語表記のままで、あえて邦題はありませんし、“エブリシング” とカナをふることもやめました。

カナなし英語表記のままでいい! 新譜タイトルは「EVERYTHING」


洋楽ディレクターとして、アメリカの音楽を日本に紹介するのが私の役目でしたので、アルバムでもシングル盤でも、メディアにのったり、ユーザーに覚えてもらうために分かり易く邦題をつけることは当然の仕事でしたが、80年代も半ばに入ると音楽シーンも様変わりし始めました。

MTV登場以降、VJもラジオDJもそうですが、英語タイトルのまま曲を紹介することが増えてきたし、海外の音楽事情も直輸入で続々入ってき始めました。すると今までレコード会社のディレクターが自由気ままにつけていた邦題も、オリジナルとかけ離れたものはさすがにナンセンスなものに感じられ始めたようです。

そして国内制作では歌謡曲に変わって、洋楽っぽさをウリにしている、つまり、のちにいうJ-POPの台頭です。こちら洋楽では、営業からの要請もあり、原タイトルが誰でも分かる英単語だとしても、邦題をそのままカナ表記にしたり、アーティスト名もあわせて英語表記を避けて日本語にしているにもかかわらず、むしろ彼らの方が、タイトルもアーティスト名もあえて日本語使用せずに、英語表記にすることが増えてきました。

これに対抗した気持ちもあり、私は誰でも読めるし意味も分かる英単語の場合には、特別な邦題をつけるわけでなく、単なるカナをふるだけでしたら、そのまま英語表記でいいのではないか―― と、常々思っていました。

そしてバングルスの新譜タイトルは誰でも分かる『EVERYTHING』。カナなしの英語表記のままです。日本盤の帯にも解説書にも資料にも一切のカナは使わず、メディアの新譜紹介でも “英語表記でお願いします” と訴えていましたが、その後再発売される時は、当時の私の考えなどに気を遣ってくれるわけなく、時の担当者が普通のようにカナ表記にしています。もっとも、このアルバム以外にもミックの初ソロの『SHE’S THE BOSS』やスプリングスティーンの『BORN IN THE U.S.A.』も英語表記で通してましたが、再発時にはあえなく普通の姿になっています。

プロモーション来日が実現!スザンナ・ホフスをアピール


そして、このアルバムでは、プライオリティとして予算もあり、プロモーション来日が実現しました。ディレクターとしての思惑は、ガールズバンドとして演奏している立ち姿を日本の洋楽ファンに観せること。そしてリードヴォーカルのスザンナ・ホフスの可愛らしさを、まだ彼女のことを知らない人々にアピールすることでした。具体的にはTV出演とショーケース、そしてスタジオにいれて大々的なフォトセッションを実行しました。

メディアを通して、ガールズバンドの立ち姿、特にフロントのスザンナ・ホフスをアピールするわけですが、こういうときに、“ガールズバンドの絶対的な掟” が登場するのです。

『夜のヒットスタジオ』にも出演できたのですが、リハ中に今回の日本行だけの為に雇われたツアー・マネージャーから「ガールズがTVに映る時間がみんな均等になるように」と指示がおりました。TV的にも私的にもスザンナを全面に出したいわけですから、私がこのオファーをTVプロデユーサーに伝えるわけありません。「分かった。伝える」と約束したものの、そのまま。そして生放送です。予定通りにスザンナが中心のカメラ割でしたが生放送はその時間が過ぎればどうなっていようが、全ておしまいです。放送後、マネージャーからは何らコメントはありません。彼も雇われただけですから “私に伝えた” ということで仕事をしたのです。

フォトセッションで思い知らされる “ガールズバンドの絶対的な掟”


スタジオに入ってのフォトセッションを行ったのですが、こういう場面では “ガールズみな平等” の掟はさらにシビアになるのです。みんな美しく撮って欲しいに決まってます。

メイクアップアーティストも二人入れて全員バッチリ!メイクをさせました。実は、私としてはバンドのグループショットとスザンナ・ホフス単独の2種類だけが、たっぷり撮れれば目的達成でしたが、それが許されないことはもうお分かりですね。スザンナと同じ時間をかけて同じカット数を他メンバー3人それぞれに行う必要があったのです。

「そんなに撮っても…」と思いながら撮影を見ていた私ですが、これはこれで各担当楽器をフィーチャーした素晴らしい写真が撮れたので、ガールズには嬉しい来日記念撮影になったようです。

バングルスもスタッフもファンも嬉しい“バングルス パーソナル・スタッフ”


ショーケースは横浜と神戸で行ったのですが、来日前から一番の懸念は彼らの荷物の量でした。羽田や成田でお気づきだと思いますが、外人さんは旅行の荷物がやたら大きくて何個も運んできます。しかもアーティスト達はツアーに慣れており、自分達で運ぶ必要がないし、ましてや今回はガールズバンドです。

どのくらいの荷物の量なのか、東京だけでしたら心配無用ですが、一泊二日で関西エリアへでかけます。車を降りて新幹線までどう運ぶのか? 新幹線からTV局に行くときはどうするのか? など悩んでいましたが、頭使って一石二鳥の名案がでました。

若者向けの人気雑誌『週刊プレイボーイ』と組んだ、いわゆる読者応募企画で、“バングルス パーソナル・スタッフ募集” が実現しました。この告知でバングルスの記事は数回掲載されるし最後には読者レポートのオマケ付きです。元気な若者4人を選んで、それぞれのメンバー対応のパーソナルアシスタントと言えば聞こえはいいのですが、つまりは荷物持ちバイトをやってくれました。今のご時世この単語が適しているか心配ですが、当時は「スレイブ、スレイブ!」と言って各メンバー、彼らを可愛がってくれました。4人分の出張費用はかかりましたが、運搬の心配と苦労を考えると、一石三鳥ぐらいの価値はありました。楽しい想い出です。

ちなみに、バングルスのマネージャーは、ポリスのスチュワート・コープランドの兄さんのマイルス・コープランドです。その関係でポリスも初期の頃は彼がマネージャーでした。彼のグループ会社のIRSレコードは、バングルスもCBS以前はここからミニアルバムを発売していますが、洋楽マニアには有名なレーベルです。これは日本の国税局に相当するアメリカ財務省の機関 “IRS” をパロったもの。他の関連会社もブッキングエージェントの “FBI” や制作会社の “CIA” など、政府の重要機関の名称で遊んでいます。



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2022.10.18
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カタリベ
1950年生まれ
喜久野俊和
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