シングルカットされていないおニャン子クラブの大名曲「夏休みは終わらない」
台風のニュースを耳にすると、この曲を思い出します。
そう、おニャン子クラブの大名曲「夏休みは終わらない」です。
シングルカットもされていない、アルバム『PANIC THE WORLD』に収録されたこの曲ですが、ファンの中での人気はとても高く、この曲についてのコラムやブログも多く存在します。
古木秀典さんのコラム
『おニャン子クラブ「夏休みは終わらない」蘇る夏の風景と夕方5時の歌声』もぜひご覧になってください。
僕も何を今更とは思うのですが、書いておきたくなりました。
僕の年代にとって “おニャン子クラブ” は少し特別だと思います。
小学校高学年、『キャプテン翼』の人気をきっかけに始めたサッカーを、入院をきっかけに止めてしまった僕は、すっかり内向的な少年になっていました。サッカー部(同好会のようなものでしたが)に復帰するより『夕やけニャンニャン』を観たいがために完全に帰宅部を選択しました。
お目当てのおニャン子は、会員番号16番:高井麻巳子。彼女の黒髪ポニーテールの破壊力は童貞少年をノックアウトするには完璧でした。
そんな風に『夕やけニャンニャン』と “おニャン子クラブ” で毎日を過ごしていた僕の心を鷲掴みにしたのが、この曲「夏休みは終わらない」です。
Aメロ終わりに突然飛び込んでくる、会員番号19番:岩井 “ゆうゆ” 由紀子の癖になる舌足らずな声で歌われる。
海を抱きしめた 西向きの部屋
少し壊れかけていた 扇風機
このフレーズだけでも胸がキュンとなる夏の描写なのに、まだまだ畳み込むように切ないフレーズがビュンビュンと秒速で飛び込んでくる。
赤いウォーターメロン 頬張りながら
不覚にも当時の僕は「ウォーターメロン? 南国のトロピカルフルーツの一種かな?」と思っていました。後に「スイカやん!!」と分かるのですが、それまで十年以上かかりました(笑)。
入江の近くの秘密の場所で
𠮟れられている花火を試したね
マッチするたびに 君の横顔
大人になっていくようで
「君と二人でする夏休みの花火」このシチュエーションがどれだけ胸をキュンとさせるかは皆さんご存じだと思います。あどけなさの残る彼女はきっとこの日は浴衣だったのではないだろうか? ここに大人への成長を感じてしまう主人公の心拍数を、あいみょんなら「僕の心臓のBPMは 190になったぞ」と歌うのでしょう。
ちなみにこのフレーズ、音源では、会員番号13番:内海和子が、解散コンサートでは、会員番号38番:工藤静香が歌っています。
どちらかに優劣はつけられないのですが、個人的には少し不安定な(工藤静香に比べ)内海和子の方が好みです。この辺の意見も分かれるあたりもこの曲の持つ「力」かな… と思います。
多くのファンが感情移入できたおニャン子からのメッセージ
さてここからが一番の肝と言われているフレーズになります。
古いラジオでは 次の台風
北上すると伝えてた
今まで散々語られてきたフレーズです。
夏を描写する切なげなフレーズから、急に不穏な空気を出すこのフレーズ。ここから彼女との別れへの場面へと流れ込んで行くので、その為のフック(仕掛け)として使われたのでは? と推測されます。
が、意外と作者はそんな事意識してないってのも “あるある” だとは思います。
ただ、夏の終わりと恋の終わり(だと思う)にハマるフレーズが「台風」だったのではと思います。
それよりも気になるのは「古いラジオ」って所です。主人公はどこでこのニュースを聴いているのかな―― と。
田舎の実家? それとも、どこかの定食屋(海の家かな?)、古いラジオってことだから確実に自分の部屋では無いかな… 色々と推測できます。「彼女」と一緒にいる時に聞いたニュースなのか? それとも…。そして物語は最後のフレーズへと流れます。
バスが見えなくなって 君の名前呼べば
なぜか わからないけど 頬に冷たい雫
君が街に帰って 秋が近づいても
今も僕の心は 終わらない夏休み
このフレーズって、おニャン子からのメッセージなのかな? と、僕は思わずにはいられませんでした。
だからこそ多くのファンが感情移入出来たのかな? と思うのです。
秋元康はファンから見た「女の子にはこうであって欲しい」という姿を描くのが抜群に上手い作家です。
「君」というアイドルが去っていっても、ファンの心は楽しい思い出がいっぱい残っていて、だから、夏休みが終わらないのだな、と。僕にはそう思えました。また、解散コンサートの映像の印象がそうさせるのかな?とも思います。
おニャン子クラブ解散コンサートで見られるメンバーそれぞれの表情
解散コンサートでは、涙を浮かべながら歌うおニャン子と、スッキリした顔で歌うおニャン子の違いを観るのも今となっては楽しい。
個人的な見所は「みんな最後です、一緒に歌ってーー!!」と、会員番号18番:永田ルリ子が叫ぶ所です。その感情爆発して歌う姿をチラっと、会員番号36番:渡辺満里奈が見て微笑むんですよね(笑)。
「え? どうしはったん?」みたいな感じで。それまで涙を浮かべていた満里奈が一瞬、冷静になってしまいます。
台風のニュースが届く度に、おニャン子と過ごした「俺はどこへ行くんだろう」なんて思っていたあの夏休みの事を思い出します。
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2022.09.18