小泉今日子主演、月曜ドラマランド「あんみつ姫」
かつてフジテレビで放映されていた1時間半の単発ドラマ枠『月曜ドラマランド』は、主に漫画を原作に、毎回様々なアイドルが起用される楽しいプログラムだった。記憶に残っているのは、斉藤由貴の『野球狂の詩』、富田靖子と浅香唯の『一休さん』など。中でも最も印象深い作品のひとつが、小泉今日子主演の『あんみつ姫』である。
原作となった倉金章介の漫画は、1949年から約6年間にわたって光文社の雑誌『少女』で連載された。連載中には逸早くラジオドラマ化されたのをはじめ、雪村いづみや鰐淵晴子主演で映画化、さらに中原美紗緒が演じたテレビドラマも放映されるなど、漫画史に残る人気作品であった。
小悪魔路線を継承? 主題歌「クライマックス御一緒に」
小泉今日子版のドラマは久々の映像作品として、1983年から翌84年にかけて、全3作が作られて好評を博した。3作めが放映されたのが1984年1月9日で、その直前の1月1日には主題歌となった「クライマックス御一緒に」がシングルリリースされた。歌手名義は “あんみつ姫” という企画盤ながら、実質キョンキョンの8枚目のシングルとして、オリコンの週間セールス4位を記録し、『ザ・ベストテン』にもランクインしている。
作曲・編曲は井上大輔。それほど派手ではないものの、耳心地いいアイドルポップス、王道のメロディといえる。作詞は森雪之丞で、珍しく詞先だったとのこと。多感な少女の空想を小説に見立て、恋愛のプロセスを追ってゆく構成。
クライマックスは恋人と結ばれることを暗示しつつも、思春期の男子をドキドキさせるような確信犯のタイトルにされたのであろう。明るく元気なのに不思議と色気が醸し出された独特のため息歌唱は、歌詞カードにはないサビの “アハン” に顕著だ。前作「艶姿ナミダ娘」で開拓された小悪魔路線をしっかり継承している。
さらに「♪ドドドッキン」のくだりは次作の「渚のはいから人魚」の「♪ズッキンドッキン」にも繋がる。その後の「ヤマトナデシコ七変化」の歌詞にも吐息を思わせる「♪A ha」の導入があって、森雪之丞と康珍化との連携が保たれていたことを思わずにはいられない。
なお、カップリングは楽曲ではなく、出演者有志による「あんみつ姫NG集」をキョンキョンが解説するという趣向だった。B面ならではのこういう企画、好きです。
遊び心が嬉しい、別名義でのシングルリリース
「あんみつ姫」はその後、1986年にフジテレビでアニメ化もされ、月曜ドラマランドにも頻繁に出演していたおニャン子クラブが主題歌を歌った。2008年と2009年には井上真央主演で3度めのドラマ化がされたのは記憶に新しいところ。令和版が実現したら、次にあんみつ姫を演じるのは誰だろう。その時にはぜひキョンキョンにも何らかの役で出演してもらいたいものだ。
あんみつ姫から30年経った2013年にNHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』の挿入歌「潮騒のメモリー」が役名の “天野春子” 名義で出された時、「クライマックス御一緒に」のことを思い出したご同輩はきっと多かったに違いない。アイドルに限らず、歌手の別名義でのリリースというのは常に遊び心満載で楽しい。
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2022.02.22