11月18日
たった一度の来日公演!福岡サンパレスで観たラッシュとの一期一会
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ラッシュの初来日公演が福岡サンパレスで行われた日
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記憶に残るライヴを観た会場は、自分にとっていつまでもかけがえのない場所になる。

福岡・博多のふ頭近くに81年にオープンした「福岡サンパレス」は、僕にとってそんな場所のひとつだ。以前、このコラムにも書いた洋楽ライヴ初体験だった82年のスティクスを皮切りに、全米から凱旋し絶頂期だったラウドネスや、ガラガラの観客の前で聖書を投げたストライパーなども観てきた。中でもカナダの至宝ラッシュが行った唯一の来日公演は忘れがたい。

本日2018年9月12日にドラムのニール・パートが66歳を迎えた… そんなラッシュを僕が知ったのは、アルバム『パーマネント・ウェイブス(永遠の波)』(80年)発売時にラジオで流れた「ザ・スピリット・オブ・レイディオ」だった。彼らの中では比較的キャッチーなこの曲も、もっと HM/HR らしさを期待した洋楽初心者の僕には正直ピンとこなかった。

時は少々流れ84年、そんな僕が当時の新作『グレイス・アンダー・プレッシャー』をレコード店で見かけて衝動買いしてしまう。少しは洋楽ロック歴も重ねたことで、彼らが世界中で評価されている理由を改めて知りたいと思ったのがきっかけだった。

実際に作品を聴いてみて、以前より(ゲディ・リーの)ハイトーンを抑えたわかりやすいメロディと、分厚いシンセに覆われたモダンでドラマティックなサウンドが意外にも聴きやすく、複雑な展開が控え目だったこともあり、彼らの音楽がすんなり耳に馴染んできた。熱烈なマニアからすれば重要なアルバムではないだろうが、ラッシュ初心者の僕にはむしろ入りやすい作品だった。

すっかりラッシュが気に入った高校生の僕にタイミングよく朗報が届く。なんと彼らが初来日し、わずか4回の公演地に福岡が含まれているではないか。音楽誌は、海外でのライヴを絶賛していたし、これは絶対に観なければ! と思った。チケットの発売日、僕はバンド仲間とチャリンコを疾走させ、小倉・井筒屋デパートのチケット売り場へと急いだ。手に入れたチケットは前から6列目、あっけなく取れたチケットに喜びとともに、日本ではやっぱり人気がないのかと心配になってしまった。

ライヴ当日、開演の数時間前に意味もなく会場近くまで行って、この中にラッシュのメンバーがいるのかと期待を膨らませた。いざ入場すると客の入りは決して悪くなく、異様に外国人の観客が多かったことを覚えている。本国ではスタジアムアリーナクラスでプレイするアーティストをわずかキャパ2300人のホールで観られるなんてあり得なかったからだろう。

客電が消え、僕らの目の前に降臨したラッシュの3人は神々しいほどのオーラを放っていた。寸分の狂いもない演奏と完璧なライヴ構成と演出。そのすべてを見逃すまいと、僕は瞬きもせずステージを凝視した――

下手(しもて)でベースを鳴らしていたと思えば、次の瞬間まるで忍術のように上手(かみて)に移動しキーボードを奏でるゲディ・リー。音源でのサウンドメイキングを完全再現するアレックス・ライフソン。360度のドラムセットに囲まれ超絶技巧を繰り出すニール・パート。どうしてラッシュがあれだけ世界的に評価されているのか。その答えのすべてがそこにあった。本物だけが奏でられる最高レベルのライヴを多感な時期に観られたことが、僕のロック観に大きな影響を与えてくれた。

その後、新作が出るたびにラッシュの再来日は熱望されたが、結局一度も実現しなかった。ギャランティの問題とか、納得できるステージセットを持ちこめないとか、その理由は諸説語られている。けれども、日本と諸外国との人気の温度差はやはり歴然であり、結局はビジネスとして費用対効果が見合わなかったのであれば仕方がないことだ。どんなライヴもまた観られるとは限らないということを、多くのロックファンはこの経験から学ぶことになった。

そんなラッシュだが、2018年に入りアレックスがツアーからの引退だけでなく、バンド活動自体の終わりを示唆する発言をしている。そして、福岡サンパレスも博多のウォーターフロント都市計画の一環で2020年頃に取り壊しが決定したという。

時代の流れとはいえ、どちらも残念なことだ。けれども、かけがえのない音楽や場所の記憶は永遠に消えない―― それこそが、とりわけ80年代の空気の中で見聞きした音楽の持つチカラなのである。

2018.09.12
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カタリベ
1968年生まれ
中塚一晶
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