11月21日

中山美穂「WAKU WAKUさせて」可愛さと危うさを兼ね備えた “夜遊び系ユーロビート”

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中山美穂、TVや映画のツッパリ路線で人気


80年代アイドルは大雑把にいえば “清純派” と “不良少女” の2パターンにカテゴライズできる。前者は言うまでもないとして、後者からは『3年B組金八先生』で演じたツッパリ少女役で大ブレイクした三原じゅん子を先駆けとし、中森明菜、工藤静香など続々とスターが誕生した。もちろんその大半が事務所の戦略によってキャラ付けされただけで、実際に不良少女だったわけではないのだろうが。

今日紹介する中山美穂も、デビュー当初はバリバリのツッパリ系アイドルだった。と言っても、リアルタイム世代よりも下の人間にとっては今ひとつピンと来ないかもしれない。かく言う私も1986年生まれ。物心ついた頃には「世界中の誰よりきっと」が大ヒットを記録するなど、トップスターになっていたミポリンからツッパリの匂いは完全に消えていたし、ツッパリどころから、むしろ結婚後のパリで豪奢な生活を楽しむセレブリティのイメージの方が強かったりする。

しかしデビュー当時は間違いなくツッパリ路線で人気を博し、不良たちからの支持も相当に厚かったようだ。なにしろデビュー作からしてドラマ『毎度おさわがせします』の不良少女のどか役であり、その年の暮れには不良映画の金字塔『ビー・バップ・ハイスクール』のヒロイン、今日子を演じて爆発的な人気を獲得したのである。

ガチヤンキーの三原じゅん子、どこか影のある中森明菜とは異なり、大きな瞳で天真爛漫に振る舞うミポリンはキュートそのもの。それでいてツッパリ少女を演じるというギャップに、同世代の男の子達はやられてしまったのではないだろうか。

歌手・中山美穂の勢いを加速した「WAKU WAKUさせて」


ドラマだけではなく、歌手としてもセカンドシングル「生意気」で早くもオリコン週間8位を記録。あっという間にスターの仲間入りを果たすと、1986年には資生堂のキャンペーンソングに春、秋つづけて抜擢。特に本人も出演した秋の「ツイてるねノッてるね」は自身初のトップ3にランクインするなど、アイドル時代の代表曲として今なお歌い継がれている。

まさしく時代の寵児としてノリにノッていた当時のミポリンだが、さらに勢いを加速すべくリリースしたのが8枚目シングル「WAKU WAKUさせて」だ。

「ツイてるねノッてるね」はデビューから付き合いのある筒美京平からシングルとしては4作品ぶりに提供を受け、これが大ヒットを記録。「次も京平先生で」となるのは自然の流れだった。

当時の筒美京平はC-C-B「Romanticが止まらない」、少年隊「仮面舞踏会」といったエポックメイキングな名曲を連発するなど空前絶後の絶好調モードにあり、特に当時人気のあったユーロビートに、絶妙な塩梅で歌謡曲の要素を溶け合わせる名人芸は、誰もマネできない領域に達していた。

「ツイてるねノッてるね」もまさしくその流れの中にある打ち込み系ダンスサウンドだが、「WAKU WAKUさせて」ではこれをさらに一歩突き進め、アレンジを含めてより洋楽的なニュアンスが濃くなっている。もっともラナ・ペレーの「ピストル・イン・マイ・ポケット」をもろに下敷きにしておられるようなので、洋楽っぽいのも無理からぬことなのだが……。まあそこはご愛嬌ということで。

ミポリンが挑む “夜遊び系ユーロビート” 作詞は松本隆


デビュー3年目を間近に控え、この頃になるとさすがに “ツッパリ” の装いこそ薄れてくるものの、かと言って今さら清純派に変身するわけではない。松本隆がこの楽曲で提示した女性像は、“夜通し六本木や西麻布で遊んでそうな軽い女子大生、OL” といったところか。つまりはバブル期の象徴として今でも資料映像を目にする機会も多い、ディスコで踊り狂っているあの女性達のイメージである。いわば “夜遊び系ユーロビート” にミポリンは挑んだのだ。

 WAKU WAKU させてよ
 マジっぽい恋はいやよ
 DOKI DOKI させてよ
 遊びなら楽しくして

彼女達に言わせれば恋愛とはつまり遊びであり、最初からマジになる気など皆無という高らかな宣言。70年代にはあまり見ることのなかった、いかにも軽薄な80年代的価値観といえよう。一方で、

 どうせ人は同じ
 淋しくて仕方無い
 肩と肩をぶつけ
 夜明けまで踊ろうよ

というフレーズからはこうした生き方のむなしさが表現されており、能天気なだけで終わらせてくれないのが松本流。どうしても80年代というと華やかなイメージが先行するが、松本はその影にある空虚さをも見抜いていたのだろうか。そしてそれを時のトップアイドルに歌わせるのだから、やはり松本、筒美の黄金コンビは一筋縄じゃいかないのだ。

ちなみにこの次のシングル「「派手!!!」」をもってミポリンは松本、筒美コンビから離れ、1987年以降は角松敏生、CINDYといったシンガーソングライター系の作曲陣によってアイドルからアーティストへと。また、“ツッパリ”、“夜遊び女子大生” といったキャラ付けされたタレントから、「中山美穂」という等身大の女優・歌手へと脱皮していくことになる。

その後、平成に入るとアイドル時代をも凌ぐほどの大ヒット曲を連発。どうやら選択は正しかったようだが、個人的には1986年頃までのアイドル時代の方が、見ていてWAKU WAKU、DOKI DOKIする可愛さと危うさを併せ持っていて好みだったりする。



2021.06.18
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カタリベ
1985年生まれ
広瀬いくと
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