7月25日

クールスと青の神話学「カリフォルニア・ブルースカイ」

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人間Aと人間Bが出会って新たな価値Cを産み出す、という文化が生まれる瞬間の当たり前の原理が結構忘れられがちだ。いうなれば「出会い系」の文化史が足りないというか、カフェやサロンのことをもっと知らないと日本サブカルチャーの真髄は見えてこない。

ということを思うに至ったのは、伝説の不良バンド・クールスのベーシストである大久保喜市さんから著書『ストレンジ・ブルー プラス』(DU BOOKS)が届いたことに端を発する。「若い世代にこの “ビート小説” がどう読まれるか知りたい」という一言が添えられて。

この小説の舞台となる70年代原宿の伝説のカフェ「レオン」にクールスもたむろしていて、そこにいるだけで時代をときめくクリエイターたちが集まって仕事が生まれたというから、僕のような世代にはうらやましい話だ。60年代には新宿があって、70~80年代には原宿があって、90年代には渋谷が、00年代には秋葉原という具合に、それぞれの時代にそれぞれの場所が〈クール〉とされた、というのが僕の大雑把な日本サブカル観。それ以降は確実に文化的な出会いの場所は「SNS」に移ったように思う(よかれあしかれ、この SNS 世代に僕は属すると思う)。

〈クール〉という言葉を括弧付きでいま敢えて使ったが、「物理的な冷たさ」や「単純なかっこよさ」以上の含みを持つ、この魔術的な「アメリカ語」を冠するクールスというバンドについて考えるうえで、「〈クール〉とは何か?」という問いは避けられない。ましてや「クール・ジャパン」という、まったく〈クール〉とは程遠い政策を見せつけられた世代としては、なおさらのこと。

ここで導きとなるのが『クール・ルールズ』(研究社)という滅法おもしろい〈クール〉の心理学・社会学の本で、これによると時代の変遷あれど、概ね〈クール〉であることの特徴は以下の三つに絞られる。

➀ナルシシズム(※要は「個人主義」)

②ロマンティック・アイロニー(※要は「ぜんぶ疑え」という哲学)

➂伝わりづらい快楽主義(※要は「ドラッグ」など)

この三要件を大久保さんのビート小説が恐ろしいくらいにすべて満たしていたので古典的なまでに〈クール〉。ところで大久保さんの小説(&クールス回想本)が「ブルー」をその名に冠し、『クール・ルールズ』の装幀も「青」で統一されていることは、〈クール〉の起源(らしきもの)と無関係ではないのではないか?

要するにヒップホップのクール・キースあたりから遡って、マイルスのクールジャズへ、そこからブルースへと下降する黒人文化の〈クール〉の変遷があって、その起源はじつは西アフリカのヨルバ族の「イトゥトゥ(英訳:クール)」なる概念にまで行きつく。この「イトゥトゥ」が儀礼上「青」と結びついていたという。これが黒人奴隷によってアメリカ大陸にわたり、白人文化と出会うなかで複雑に形を変えていったというわけだ。

一方ヨーロッパでも〈クール〉なものが「青」と結びついていたことは、ドイツ・ロマン派のノヴァーリスの幻想小説『青い花』を考えれば早い(ロマン派が最も愛した色なのである)。

ヨーロッパ産のロマン派幻想の「青」と、アフリカ産のイトゥトゥの「青」を交配させて生まれた〈クール〉は、ストレンジ・ブルー色の花を咲かせたアメリカ産の変種だ。そして50年代のカウンターカルチャーの発生とともに「青」はリーヴァイスのジーンズのインディゴ・ブルーをその象徴とし、一気に文化の中心に躍り出て、〈クール〉はアメリカでもっとも大切な存在・思考様式となった。日本でも九鬼周造のいう「粋(いき)」であるとか〈クール〉に近いものはあるが、クールスは気持ちいいくらいにそれを撥ね付けて、アメリカ式の、それもフィフティーズの頃の〈クール〉を採用している。

『ビッグ・ディール』というアルバムの冒頭を飾る「カリフォルニア・ブルースカイ」の突き抜けるような「青さ」が、僕は大好きだ。アメリカンポップスへの愛に溢れていて、ロイ・オービソンの「“Blue” と “Dream” という言葉を使わずに私は詞が書けない」という名言を思い出さずにはいられない。クールス式の「青の神話学」が凝集した、どこまでも青く、〈クール〉な一曲だ。

2019.04.03
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カタリベ
1988年生まれ
後藤護
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