改めて言うまでもないが、ポップミュージックの歴史において、最も多くのヒット曲を生み出したのは、ポール・マッカートニーだ。 実際、1979年にギネスから「最も成功した作曲家(Most Successful Songwriter)」に認定されているし、ビルボードのHot 100(シングルチャート)では、ザ・ビートルズ時代に20曲、脱退後に9曲のNo.1を獲得したが、もちろん歴代断トツの1位である。 そんな星の数ほどある彼のヒット曲の中で、今でも僕が、ふとした時に口ずさんでしまうのが、決して大ヒットとは言えない「グッドナイト・トゥナイト」(全米・全英共に最高位5位)。この曲は当時中学生だった僕の脳裏に強く刻み込まれた。 79年にウイングス名義で発表されたこの曲は、直後にリリースされたアルバム『バック・トゥ・ジ・エッグ』には収録されなかった。だから、おそらくTVかラジオで数回聴いただけだったはずなのに、今でもちょくちょくメロディーが浮かんでくる。 では、何がそんなに印象的だったのか。イントロのフラメンコ(風)ギターや、これぞポールと言わんばかりのベースラインは、それはそれで印象的なのだが、それ以上に “Don't say it! Don't say it!” と何十回も連呼しているのが頭にこびりついて離れなくなってしまった理由らしい。 そもそもこの曲はダンスナンバーとして制作され、先に12インチシングル用のロングバージョンが出来上がっていたそうだ。ビデオクリップの中のメンバーも何だか楽しそうだし、そういうダンサブルなノリが自然に僕の身体に染み着いたのだろうか。 そう言えば、数年前に米国の音楽サイト『Ultimate Classic Rock』が発表した「Top 10 Classic Rock Disco Songs」で、この曲は4位にランキングされていた。 確かに、78~80年頃の音楽シーンはディスコサウンドが席巻していて、ポールのこの曲もそのブームに乗ったものと捉える人がいたのは事実だろう。「まさかポールまで…」といったネガティブな反応も、当時は少なからずあったようだ。 しかし、ロッド・スチュワート「アイム・セクシー(Da Ya Think I'm Sexy?)」、キッス「ラヴィン・ユー・ベイビー(I Was Made For Lovin' You)」、クイーン「地獄へ道づれ(Another One Bites the Dust)」のように、真っ直ぐにディスコに寄せて行った楽曲と比べると、「グッドナイト・トゥナイト」にはディスコの他にも様々なアイデアが詰め込まれているし、あくまでポールらしい良質なポップスに仕上がっていると思う。 そんな訳で、今日も僕は、周りの人にバレないように小声で、 Don't say it! Don't say it! Say anything, but don't say goodnight tonight! と鼻歌を口ずさむのであった。 Wings / Goodnight Tonight 作詞・作曲:Paul McCartney プロデュース:Paul McCartney 発売:1979年3月23日
2017.10.30
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YouTube / Eduardo Robles
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