ロックの好きな高校生の正月の楽しみといえば、お年玉につきる。買うのはもちろんレコードだ。1983年のお正月、自分にはどうしても欲しい物があった。“12インチシングル” である。
なにしろそれは、輸入盤とは縁遠い田舎の高校生には未知のフォーマットだった。国内盤ではシングルといえば7インチというのが常識の時期。それまでで思いつく12インチシングルといえば、さだまさしの「親父の一番長い日」くらいだった。しかし欧米では普通に12インチのシングルがリリースされていて、それには国内盤では聴けない曲やバージョンが入っているらしい――こうなると欲しくなる。
そして正月、洋楽雑誌「音楽専科」に載っていた輸入盤店の通販広告が目に留まった。普段なら貧乏高校生には目の毒とスルーするが、お年玉をもらったばかりで気が大きくなっている。広告内のカタログを見ると欲しいものばかりだが、その中から一枚を選んだ。バウハウスによるデヴィッド・ボウイのカバー「ジギー・スターダスト」のUK盤12インチシングルだ。
82年の秋にこの曲が全英チャートに入ったことはラジオ日本の「全英TOP20」で知っていたし、バウハウスというバンドも音楽専科のクールなグラビアを見て気になっていた。が、音はちゃんと聴いたことがない。しかもこのレコードは7インチでさえ国内盤が出る気配なし。買うしかないだろう… というわけで、通販で買った。
約2週間後に到着したそれは、とにかくかっこよかった。「ジギー~」もよかったがB面収録の「サード・アンクル」にもぶっとんだ。代金に加えて送料、現金書留料金でアルバム並の出費ではあったが、買ってよかったと思えるレコードだった。
白状すると「ジギー・スターダスト」という曲を初めて聴いたのはボウイのオリジナルではなく、このカバーで、だった。ボウイの命日なので、懺悔しておく。
2017.01.10
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