U2はメディアミックスに長けたバンドだ。近作の無料配信はもちろん、3Dコンサート映画や凝った仕様のDVD、そしてもちろんPVと、面白い展開を繰り広げている。でも、そこにたどり着くまでに迷走があった気がしないでもない。
1983年、ラジオで聴いた「ニュー・イヤーズ・デイ」にヤラレた。『音楽専科』等のロック誌の記事を読むと、このバンドは真面目で一本気な性格らしい。いいじゃないか! そんなワケで秋田県在住の少年は同年5月、国内リリースされたアルバム『WAR <闘>』をゲット。吹雪を連想させる寒々しいギターの音も東北人のメンタリティにフィットした…
が、この国内盤には引っかかる点が。訳詞もライナーノーツもない。代わりに載っていたのは『音楽専科』誌連載のコミック「8ビートギャグ」でおなじみの志摩あつこ先生のイラストと、キャプションがちょっと。こちらは真面目さの背後にある彼らのメンタリティを知りたかったんだが、“ギャグ” ですか!? いや、志摩先生の8ビートギャグは愛読書だ。でもU2に限って、このコミック戦略ってアリか?
迷走は続く。同年11月、初来日。U2はフジテレビ『夜のヒットスタジオ』に出演し、「ニュー・イヤーズ・デイ」をプレイ。しかし長い間奏で、寒々しいギターの聴かせどころ!という瞬間、エッジはギターを弾かずピアノに専念… 4人編成でこの曲をプレイするには限界があるのは分かっちゃいるが、『WAR <闘>』の8ビートギャグ・ライナーには “エッジのギターワークはP・タウンゼントも絶賛!!” というキャプションがあったのに……。
迷走と言ってはみたが、実際に迷走でなかったのは、彼らの現在の成功が物語っている。当時の筆者の勝手な思い込みが、そう思わせたことも今となっては理解している。振り返ると、U2が真面目なバンドであったことは、外タレの多くが口パク出演だった『夜のヒットスタジオ』で、きちんとライブ演奏した事実に表われていたのだ。
2016.03.14
YouTube / Paula Maria
New Year’s Day(Music Video)/ U2
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