1984年の秋、まだ学生でありながらもテレビ業界に飛び込んだ私は特番を1本担当した後、日本テレビの番組スタッフに配属されて麹町の局内に常駐することになる。それが『TV海賊チャンネル』という番組であった。
当時、民放各局では土曜夜の深夜番組戦争が勃発しており、先行して人気を得ていたフジテレビの『オールナイトフジ』の後を追いかける様にして、テレビ朝日は『ミッドナイトin六本木』、TBSは『ハロー! ミッドナイト』と各局の番組が出揃った。
TBSだけは松山千春司会のトーク番組で独自の路線を展開したが、ほかは後に国会で討議されることとなるお色気路線が敷かれ、『TV海賊チャンネル』はその最たるものだった。
なにしろ名物コーナーが “ティッシュタイム” や “ラブホテルクイズ” である。しかしエロを取り扱いながらも決して低俗番組にならなかったのは、滝大作、高平哲郎らのベテラン作家陣をはじめ、『11PM』や『今夜は最高!』のスタッフで構成された一流のバラエティ番組だったからなのだ。
さすがは民放のパイオニア。司会は所ジョージと早乙女愛(後に熊谷真実)で、レギュラー出演者に谷啓、山本晋也、九十九一、高見恭子ら、通好みな面々。
そういえば三木のり平の息子である小林のり一も出ていた。持続院法一なるおかしな芸名で。氏が出る番組はことごとく終了してしまうことから、長く続く願いを込めて付けられた変名らしい。父親ゆずりのとぼけた味が最高だった。
ゲストの顔ぶれも、由利徹やタモリら芸能界の大御所や、谷岡ヤスジ、わたせせいぞうといった文化人まで実に多彩であった。
ある時、定例会議で本家のオールナイターズに因んで、ウチもガールズを募集してデビューさせようという話が出た。番組で告知するとたくさんの応募が集まり、まず書類選考で絞り込むのは我々の仕事。オーディションが行なわれ、最終的に6人が選ばれて番組のレギュラーとなった。
メンバーは佐々木直子、徳橋志津、長谷川純子、原田照子、星谷昌美、宮迫優香(いずれも当時の芸名)。過酷なAD生活の中で、彼女たちの存在は一服の清涼剤だった。来るべきデビューに備えてのレッスンで日本テレビ音楽学院へ通うのに同行したり、別館の稽古場でのボイストレーニングに立ち会ったりしているうちに情が湧いてくる。自分とちょうど同い年くらいの彼女たちだけに親近感はなおさらだった。
そして、ようやくバップからのデビューが決まり、レコーディングが行われた。作曲は『今夜は最高!』の音楽も担当していたコルゲンさんこと鈴木宏昌。所さんの悪ふざけで「うんちーズ」と呼ばれていたグループ名がデビューに際して「セルフサービス」に変更されたのはちょっと安心した。
かなりキワドい歌詞だが、実は最初はもっと過激だったものが柔げられたという経緯もある。シングル盤は年も押し迫った1985年12月21日に発売されるも、惜しくもヒットには至らず。長年一部の愛好家にだけ認識されていたものが、なんと30余年の時を経て初めてCD化されることとなった。
昨年、ウルトラ・ヴァイヴさんからお話をいただき、かつてバップからレコードを出していたアイドルのコンピレーションアルバムに携わることになった時、真っ先に思い浮かべたのが、自分も縁浅からぬセルフサービスのことだったという次第。
というわけで、この度発売になった『Be-VAPアイドルスクール』というコンピのVol.2に、セルフサービスの唯一のシングル「つまンないガール/大きなお世話よほっといて!」が無事収められている。
こちらに初めて書かせていただく原稿がいきなり宣伝になってしまい誠に面目ないが、80年代アイドルにご興味をお持ちの向きにはぜひお聴きいただきたい。
ほかにも石丸奈津子や藤ゆうこ、Vol.1では、井上美里、杉かおりといったカルトなアイドルのレアな作品を存分にご堪能いただけるコンピ。
決してつまンなくないガールたちなのであります。
2017.07.07
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