その名前を最初に見たのはいつのことだったろう。
小学生の時に買ってもらった「勝手にしやがれ」のシングル盤だったでしょうか。それとも中学生の頃に口ずさんだ「大都会」なのか。いや、その長いイントロが印象的な「恋人よ」のクレジットだったかもしれません。
その記憶は不鮮明ですが、あの頃、ボクが好きだった “流行り歌” にはいつだってその人の名前が寄り添っていました。
―― それは、誰あろう船山基紀。
1951年、東京に生まれたニッポンを代表する編曲家。デビュー作は中島みゆきのファーストシングル「アザミ嬢のララバイ」で、みんなが知っている 70年代後半の沢田研二や渡辺真知子のヒット曲はほぼ彼のアレンジによるものです。80年代に入ってからは無数ともいえるアイドル歌謡を手掛け、その綺羅星は枚挙にいとまがありません。そして、今もって現役!
そう、40年以上にわたりニッポンの流行歌を紡ぎ続けてきた船山サン。そのアレンジの魅力を一言で伝えるなら、それは “インパクト” に他なりません。船山サン自身もこんなふうに語っています。
―― 地味に終わるのが嫌で、ドカーンとスタジオが盛り上がるのが好きだったっていうのもあるし、綺麗に、丁寧にっていう萩田さんみたいな仕事は僕にはできなかったんですよ。だから本編の中身を無視したイントロを付けることばっかりやってたっていうか、常にどうやって音で惹きつけられるかを考えてましたね。それは今も変わらないです。(DU BOOKS『ニッポンの編曲家』より引用)
なんと言っても “派手なイントロ” が真骨頂。曲のド頭で大衆をいかに振り向かせるか、そこでどうやって人の心を掴むか、そんなプロデューサーからの難題を具体的に落とし込む作業を一手に引き受け、しのぎを削っていたのです。
船山サン、こんなことも言っています。
―― いちばん最初に京平さんに会った時「船山くん、僕のことなんて嫌いなんでしょ?」って言われて。要するに “歌謡曲なんて好きじゃないでしょ” って意味なんだけど、「でも僕と仕事する時は僕の言うとおりやってもらうから」って。(中略) でね、あとで何かの記事になってたんだけど、京平さんが萩田さんと僕を比べてて、「萩田くんは僕が言ったことを音楽的に正しく表現してくれる。船山くんは僕ができないような恥ずかしいことを全部やってくれる」って書いてあったの。「だって合わせろって言ったじゃん」って(笑)(引用は同上)
いやあ、興味津々ですねえ。
ハイ、お待たせしました! リマインダーでは来たる6月1日、そんな船山サンご本人をお迎えしてイベントを開催します。
題して、まるごと船山基紀!恒例となった『80年代イントロ十番勝負』の第1部、14時からの開演です。これ、イントロクイズだけではなく、スージー鈴木サンとのトークショー(しかも初顔合わせ)がありますから、絶対に見逃せませんよ。ここでしか聞けない話が飛び出してくること請け合いです!
さあ、イベントに先駆け、今日は「リマインダー的 船山基紀イントロベスト5」を紹介しておきましょう!
第5位
■ Romanticが止まらない / C-C-B作詞:松本隆
作曲:筒美京平
編曲:船山基紀
発売:1985年1月25日
当時の価格で 1,200万円ほどのフェアライトCMI(サンプラー / シンセサイザー)を導入。イントロのフレーズを弾いているのは SHOGUN の大谷和夫。
第4位
■ 抱きしめてTONIGHT / 田原俊彦作詞:森浩美
作曲:筒美京平
編曲:船山基紀
発売:1988年4月21日
スージー鈴木氏曰く、筒美京平&船山基紀という名コンビによる超一級の完成度を持ったイントロであり、楽曲。まさにその通り。
第3位
■ 恋人よ / 五輪真弓作詞:五輪真弓
作曲:五輪真弓
編曲:船山基紀
発売:1980年8月21日
当時としては破格の長さ。14小節もあるイントロのじわじわ感と、矢嶋マキの弾くピアノが曲終盤のカタルシスにつながっていきます。
第2位
■ 勝手にしやがれ / 沢田研二作詞:阿久悠
作曲:大野克夫
編曲:船山基紀
発売:1977年5月21日
80年代ではありませんが、ボクが心底好きになった初めての曲にして、一番最初に出会った船山アレンジ。フェードインなどもってのほか!
第1位
■ 仮面舞踏会 / 少年隊作詞:ちあき哲也
作曲:筒美京平
編曲:船山基紀
発売:1985年12月12日
バブル前夜を切り取った歴史的名曲。作詞・作曲・編曲・歌唱・ダンス全てにおいて、時代の空気感を見事に表現しています。ニッポンの国宝に指定べきでしょう!
ふふふ、皆さんの脳裏にも、船山イントロが鳴り響いてきましたよね。もはや、6月1日に開催されるイベントは絶対に見逃せませんよ。ぜひ足を運んでみませんか?
2019.05.25