いろんな季節のことを歌った曲がある中でクリスマスソングというのは不思議な存在だなと常々思ってます。夏の歌は夏に聴いた方がぴったりだと思いますが、他の季節に夏の歌を聴くのもさほど抵抗がない。しかしながらクリスマスソングはクリスマスシーズンにしか聴きたくない。わざわざクリスマスソングのCDを他の季節に手に取らない。クリスマス商戦で聞き飽きてしまうからでしょうか? それともやっぱりクリスマスソングって特別な存在だからでしょうかねえ。
アーティストのアルバムの収録曲にたまたまクリスマスソングがあって、そのアルバムを聴くたびにそのクリスマスソングを聴いてしまう。これはよくあるでしょうね。でも名盤とされているフィル・スペクターのクリスマスアルバムなんかは、やっぱり1年のうちクリスマスシーズンしか聴きませんね。限定的な期間しか聴くことのないアルバムってなんだかどうしても購入するのに、ちょっとした抵抗感というかためらいがあります。事実私は、前述のフィル・スペクターとボブ・ディランのクリスマスアルバムくらいしか持っていません。
そんな許容量の狭い私でも盛り上がってよく聴いたクリスマスアルバムが、87年のチャリティアルバム「クリスマス・エイド(A Very Special Christmas)」です。バンド・エイドやUSA・フォー・アフリカなど、ミュージシャンによるエイドものが隆盛を極めていたころにリリースされた、スペシャルオリンピックス(知的発達障害者の自立や社会参加を支援するスポーツ組織)を支援するチャリティアルバムですね。キース・へリングによるジャケットを見てピンとくる人も多いのではないでしょうか。
有名なクリスマスソングを当時人気のアーティストがカヴァーするという企画だったのですが、このメンツが豪華! マドンナ、U2、スティング、ブライアン・アダムス、ボン・ジョヴィ、ホイットニー・ヒューストン、ジョン・クーガ-・メレンキャンプ、ブルース・スプリングスティーン… 当時のチャリティ関連の豪華メンツぶりはやっぱり凄いですね。どの曲もクリスマスソングとして定番の曲なのですぐに親しむことができましたし、当時の洋楽ファンとしてはメンツがメンツなだけに聴いていてホントにワクワクする内容でした。
特に私が好きだったのはU2の「Christmas (Baby Please Come Home)」。前述のフィル・スペクターのアルバムでダーレン・ラヴが歌っていた曲です。バンド・エイドの時に「おいしいとこ持っていきます!」的に披露していた絶叫がここでも冴えわたってます。クリスマス名演集というものがあったら是非入れたい1曲。ジャクソン5のクリスマス名曲「ママがサンタにキッスした」をカヴァーしたジョン・クーガ-・メレンキャンプもいい。彼らしいロックンロール・テイストがお見事。
ロックンロールといえばチャック・ベリーの「ラン・ルドルフ・ラン」を永遠の18歳、ブライアン・アダムスがカヴァーしているのも良いし、鼻にかかったハスキーヴォイスという似つかわしいんだかどうだかわからないスティーヴィー・ニックスの「きよしこの夜」等々、結局全曲いいんですよ。
この「クリスマス・エイド」は大好評だったようで、その後不定期で何作か制作されましたが、インパクトはこれに勝るものはないですね。クリスマスアルバムでありながら、80’sのビッグアーティストの縮図をこの1枚ですべて見たような気になります。洋楽のクリスマスソングはワム!とマライアだけじゃないんです(笑)。
2016.12.02