6月5日

平成女子が選ぶ “夏の終わりに聴きたいアイドルソング” に感じる大人びた色気

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夏の終わりに聴きたいアイドルソングとは?


『昭和レコード超画文報1000枚』を手に入れた。昭和のドーナツ盤のジャケットを1000枚分撮影し、それぞれにエピソードがついた大重量版である。

私が大学時代アルバイトしていた歌謡曲バーでは、レコードを流すスタイルをとっていた。店内にはたくさんのレコードがあり、それを一枚一枚手にとってリクエストすることができた。だから私は平成生まれの歌謡曲好きとしてはレコードジャケットと、ドーナツ盤には触れ合っている方だと思う。

自分の好きなジャンルに限らず、お店には70年代~80年代のレコードがたくさんあったので、この本を見ていると、「あ~!あったあった、このジャケット!」「これ好きなんだよね…」と、アルバイトしていた頃の思い出が蘇ってくる。

今でこそ、シティポップやバンドの曲も幅広く聞くけれど、アルバイトをはじめた頃は、女性アイドルの曲ばかり聴いていた。もともとピンク・レディーや、キャンディーズ、聖子ちゃんをよく聴いていたけど、お店で流れる曲を聴くたびに好きなアイドルやアイドルソングはどんどん増えていった。

今回は私が大学時代に歌謡曲バーでアルバイトをしている時に知ったアイドルソングで、“夏の終わりに聴きたい曲” をセレクトして紹介したい。

“夏の終わりに聴きたいアイドルソング”といって思い浮かべる曲には、「夏の扉」や「夏色のナンシー」といった夏真っ盛りの溌剌としたアイドルソングとは別の “憂い” や “色気” みたいなものがあると思う。終わりゆく夏の物悲しさと重なるからだろうか… “グローイングアップ” ともいうべき、ひとまわり大人になったような感じがする。

学生にとっては、夏休みの恋は、普段の学校生活とは隔絶した時間だから、会いたいと思う人にしか会えないし、連絡を取りたい人としか取れない。いつもと違う一面が見えたり、いつもと違う一面を見せたりすることになる。そういう部分で、少し照れながらお互いに成長していくイメージがあるのだ。

私が選ぶ、大人びた色気を感じる夏の終わりのアイドルソングはこの5曲である。

リップスティック / 桜田淳子


平成生まれの私は桜田淳子が大好きで、特に夏の曲を偏愛している。これぞ “歌謡曲” というようなリズムと歌い方の抑揚がたまらない。

「夏にご用心」や「気まぐれヴィーナス」など “夏真っ盛り!” という曲がよく似合う淳子が、二十歳の夏を迎えて発売した「リップスティック」(1978年6月5日発売)は、私の好きな淳子歌謡節はたっぷりと残しながら、大人っぽさと色気が漂う。ジャケットのざっくりと胸元がV字にあいた真っ白な衣装。まるでピンナップガールのポスターのようだ。

浮気した彼の家に行き、リップスティックで書いた一文字を残して別れを告げる… というスリルたっぷりのストーリー。恋の終わりに残された淳子のリップの跡に、夏の終わりを重ね合わせる。

波乗りパイレーツ / ピンク・レディー


ピンクレディの夏曲といえば「渚のシンドバッド」が思い浮かぶ人が多いだろう。だが「波乗りパイレーツ」(1979年7月5日)がグルーヴ感たっぷりの魅力的な曲だということは、もっともっと知られてもいいはずだと “波乗りパイレーツ党” の私は思っている。

サビのラスト「♪ 二人~↑ アベ~ック~」と音程が上がるところで、胸がキュ~ッと締め付けられるのだ。色っぽくて、ピンク・レディーのお姉さん二人にこのまま流されてしまいたい… という気持ちになる。

ジャケットのミーちゃんのショートカット+ベアトップ姿がとってもかわいいのだ。健康的なセクシーさが際立っている。ピンク・レディーのジャケットの中で私が最も好きなものだ。

シンデレラ サマー / 石川優子


横長の写真が、まるで銀幕のワンシーンのようなジャケットの、石川優子の「シンデレラ サマー」(1981年3月5日)。「JAL'81・沖縄キャンペーンソング」に使われた一曲だ。

チャゲと一緒に歌った「ふたりの愛ランド」はハツラツとしたサマーソングだが、「シンデレラサマー」の歌い出し「♪ 今~ 南の島では~」を聞くと、南国の甘い香りとゆったりとした優雅な空間に引き込まれる。終わりゆく夏を引き止めたいような気持ちで、南の島へと飛び立ち、魔法が解ける前の、“夏のシンデレラ” をあともうひととき楽しみたいような気持ちになる。

夏は “終わる” からこそ、良さがあるのかもしれない。12時に魔法が解けてしまうシンデレラのイメージと夏を重ねた歌詞は、まるで夢の中の景色のようだ。

マイ・ボーイフレンド / 北原佐和子


北原佐和子のデビューソング「マイ・ボーイフレンド」(1982年3月19日)。まだあどけない “普通の女の子” チックな歌い方がいい。仲の良かった男友達に恋人がいる噂を聞いて、切なくなる自分の心に気がついてしまってもう友達ではいられない、あの頃には戻れない、という恋の終わりのような始まりのような内容の歌なのだが、夏休みの終わりの景色を思い出すような曲だ。

中高生の夏休みは毎日顔を合わせていたクラスメイトに会わなくなるから、好きな人のことをたくさん考えてしまって自分の心の中で恋がどんどん育ってしまう、彼はやっぱり友達じゃないのかも、とか悶々と考えていたりするのも楽しい。「マイ・ボーイフレンド」は、そんなノスタルジックで切ない感情を思い起こさせてくれるアイドルソングだと思う。まるで少女漫画の表紙のようなジャケットも可愛らしい。

メロンのためいき / 山瀬まみ


「メロンのためいき」(1986年3月21日)で山瀬まみの歌声を初めて聴いた時に、話す声とは全く違うその大人っぽさに驚いた。ジャケットのファンシー感と、「国民のおもちゃ、新発売」というコピー、よりグッと色っぽいこの曲は、主人公と彼が雨のプールサイドで恋のはじまりを予感する様子が、まるで映像を見ているかのように切り取られている。

歌詞の中に言葉のやりとりはないのに、目配せをするような様子や、沈黙を破るタイミングがわからないどきどきが描写されているのだ。「♪太陽がご機嫌斜めなの」から始まる歌い出しは、太陽きらめく真夏とはまた違う、夏の終わりの憂いが表現されていると思う。

―― と、夏の終わりに名残惜しさと眩しい思い出を残していくようなアイドルソングをセレクトしてみた。切なかったり、色っぽかったり、終わりゆく夏を惜しみつつも成長を感じさせるアイドルたちの “ひと夏の魔法” をぜひ味わってみてほしい。

レコードショップでジャケットをディグるように『昭和レコード超画文報1000枚』を眺めながら。


2021.09.02
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