1995年 3月24日

えっ、これも松本隆? 有名ヒット曲に決して劣らぬ知られざる作詞10選

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半世紀に及ぶ、作詞家・松本隆の意外な名曲


青山で生まれ、麻布、六本木、渋谷界隈で青春期を過ごした都会育ちの作詞家・松本隆が世に送り出してきた作品の数は膨大である。多くは “風街” を舞台にした都会派の作品、殊に昨今シティポップと呼ばれて海外からも支持されている洗練された楽曲のイメージ。歌謡曲では松田聖子に代表されるアイドルのヒットソングの数々が思い浮かぶ。

だが、半世紀に及ぶ作詞の仕事には、知られざる意外な作品も存在しているのだ。その中から独断と偏見で10曲をピックアップして年代順に追ってみた。いずれもリアルタイムで聴いてきた曲ばかり。有名なヒット曲にも決して劣らぬ、個人的に愛してやまない作品ばかりだ。

青春試考 / 中村雅俊(1978年)


ドラマ『青春ド真中!』主題歌。『青春とはなんだ』以来連綿と続いていた青春ドラマシリーズの一本で、学園ものから離れていた中村雅俊が久々に教師役を演じた作品だった。松本が描くストレートな青春節が吉田拓郎の独特なメロディと絶妙にマッチした傑作だ。僅か1クールの放送で姉妹篇ともいえる『ゆうひが丘の総理大臣』へと引き継がれたが、シリーズの原点回帰となったドラマと共に、鮮烈に記憶の片隅に残っている主題歌である。

光進丸 / 加山雄三(1978年)




それまでほとんどの作品を岩谷時子が手がけていた加山雄三の楽曲。アルバムをまるごと他の作詞家が手がけるのは異例のことだった。新田和長がプロデュースした『加山雄三通り』は加山が育った茅ヶ崎の風景やプライベートな事柄が織り込まれたコンセプトアルバムで、松本は詞を書くにあたって加山と会い、長時間にわたっていろんな話を聴いたのだという。

加山の愛艇のテーマとしてファンから長く愛されることとなったこの曲もその時に生まれた一曲であった。島や岬の名前が並ぶサビは圧巻。不慮の事故で船が焼失してしまった後、加山が万感の想いを込めてこの曲を熱唱する姿には胸を打たれた。

青空オンリー・ユー / ひかる一平(1981年)


ひかる一平は『3年B組金八先生』の第2シリーズに出演して人気を得ていたジャニーズ事務所の男性アイドル。加瀬邦彦の作曲ということで、どことなく湘南サウンドっぽさも感じさせるのは伊藤銀次のアレンジにもよるところがあるだろう。

ドラマで演じていたわりと暗めのイメージを打ち破るような、明るく快活なデビュー曲となった。松本は5枚のシングルすべて(5枚目はB面のみ)の作詞を手がけている。原田真二の作曲による映画主題歌「胸さわぎの放課後」も捨てがたい。

高校三年生 '82 / イモ欽トリオ(1981年)




イモ欽トリオといえばなんといっても「ハイスクールララバイ」であるが、松本の提供作はそれだけではない。シングル第2弾の「ティアドロップ探偵団」や第3弾「ティーンエイジ・イーグルス」くらいまではそれなりに知られていても、アルバム曲となると聴いたことのない人の方が多いのでは。

唯一のアルバム『ポテトボーイズNo.1』はほとんどの作詞を松本が手がけており、作曲陣は細野晴臣のほか、吉田拓郎や南こうせつ(南高節名義)らの名前が並ぶ。これも南の作曲で、青春歌謡へのオマージュ。メンバーでは一番年長の山口良一が歌った面白い曲である。アレンジはムーンライダーズの岡田徹。

イエロー・サブマリン音頭 / 金沢明子 (1982年)




ビートルズ「イエロー・サブマリン」を大胆にアレンジした日本語カバーは、ご存知大瀧詠一プロデュース。「軍艦行進曲」のメロディなどが挿入される遊び心満載な編曲は、かの「スーダラ節」の萩原哲晶が手がけており、民謡の金沢明子が起用された人選も慧眼である。

この前年、松田聖子に「風立ちぬ」を提供していた松本×大瀧コンビの振り幅の大きさを示す痛快なノベルティソングであった。エンディングのセリフに、杉真理、伊藤銀次、佐野元春ら、新旧ナイアガラトライアングルの面々が参加しているのも聴き逃せない。

うさぎ温泉音頭 / 角川博 (1982年)


温泉街を舞台にしたホームドラマ『あんちゃん』(日本テレビ)劇中歌。主演の水谷豊と、血の繋がらない妹役の伊藤蘭が初共演し、二人が後に結婚するきっかけとなったドラマとして知られる。角川博の起用は、音頭ものの第一人者であった三波春夫のモノマネを十八番としていたことからだろう。ほぼ同時期に作られた「イエロー・サブマリン音頭」と同じく大瀧詠一との仕事で、アレンジはやはり萩原哲晶である。

ドラマでは「宇佐木温泉音頭」としてクレジットされていたが、放送当時にレコードが発売されることはなく、初音盤化は『NIAGARA BLACK VOX』(1984年)。その際にタイトル表記が「うさぎ温泉音頭」となり、1995年のコンピ盤『大瀧詠一 SONGBOOK 2』にも収録された。

アメリカからの手紙 / オレンジ・シスターズ(1984年)


ベンチャーズとの共演アルバム『フェアウェルパーティー』収録曲。オレンジシスターズは当時流行っていたミニFM局の「KIDS」のDJで結成されたガールグループで、ジュディ(吉竹加世子)、サンディ(酒井妙)、キャンディ(吉川聖美)の愛称で呼ばれた3人は、女優やモデルとしても活躍した。

後にC-C-Bとなるココナッツ・ボーイズもKIDSから生まれたバンドで松本がヒット曲を手がけることになるが、同じプロジェクトだった彼女たちの存在はよほどのアイドルファンしか知らないはず。松尾清憲の作曲、芳野藤丸のアレンジによる気持ちのいいサマーポップスなのだ。

青空 On My Mind / 沢田富美子(1985年)




サントリービールのCMで人気を博したペンギンを主役にしたアニメ映画『ペンギンズ・メモリー 幸福物語』挿入歌。沢田富美子は1981年に当時のCBSソニーからデビューし、ポスト松田聖子と称された期待の新人であった。渡辺プロに所属し、ルックスにも楽曲にも恵まれた彼女がブレイク出来なかったのは80年代アイドル七不思議のひとつである。

これは1983年に一旦活動を休止した後の活動再開となった作品で、映画では声の出演をしてピアノ弾き語りの形で披露された楽曲。音楽監督の松任谷正隆が作曲している。沢田のプレデビュー曲がアニメ『こぐまのミーシャ』の主題歌「ノルマーリナ・ミーシャ」だったことを思うと感慨深い。

メロンのためいき / 山瀬まみ (1986年)


元祖バラドルのひとり、山瀬まみの歌唱力はもっと評価されていい。このデビュー曲も呉田軽穂こと松任谷由実の作曲によるアイドルポップスの秀作。フレッシュな新人アイドルに果物の名前を織り込んだ曲を歌わせるという構図は、昭和の歌謡界におけるスタンダードな様式美であり、非常に清々しい。それが純朴な歌声と確かな音程で歌われたら無敵なのだ。シングル4枚目まではすべて松本の作。

「セシリア・Bの片想い」や「Heartbreak Cafè」も佳曲だった。タレントとして既にベテランの域に入った彼女だが、たまには可憐な歌声も聴かせて欲しい。

恋、みーつけた / 真璃子(1986年)




とんねるずと同じ事務所の後輩として売り出され、1986年元日に「私星伝説」でデビューした真璃子のセカンドシングル。とんねるず主演のドラマ『お坊っチャマにはわかるまい!』の劇中で盛んにかけられるのを聴いているうちに、清廉な詞とメロディの虜になった。

爆発的なとんねるず人気に乗ってかなり破綻していたドラマにおける、一服の清涼剤のような役目を果たしていたと思う。浅田美代子、田中美佐子、麻生祐未、島田奈美(現・島田奈央子)ら女優陣のキャスティングも魅力的だった。もう一度見たいドラマのひとつである。


―― 拙い記憶をちょっと紐解いただけでも、これらの作品はすぐに思い出された。ほかにも再評価されて然るべき傑作がまだまだたくさんあるはずである。おそらくリアルタイムでは自分が一番レコードを買わせてもらったであろう作詞家、青春期のイマジネーションを刺激してくれた松本隆さんに敬意と感謝を込めて。

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2022.07.15
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カタリベ
1965年生まれ
鈴木啓之
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