8月7日

甲斐バンドが叫ぶ「THE BIG GIG」都有5号地に刻まれた伝説の一夜

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甲斐バンドが野外イベント「THE BIG GIG」を都有5号地で開催した日
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photo:UNIVERSAL MUSIC  

2019年7月、甲斐バンド結成45年目にして、初めてのライブハウスツアー『CIRCUS & CIRCUS 2019』がお台場 Zepp DiverCity で行われた。開演予定の17時を過ぎても演奏が始まらない。しかし往年の甲斐バンドファンは、彼らのステージが定刻通りに始まらないことを知っている。演奏開始が遅れるのはいつものことなのだ。

あの日もずいぶんとオープニングを待った記憶がある。今からさかのぼること36年前、1983年8月に新宿で甲斐バンドの野外イベント『THE BIG GIG』が開催された日だ。舞台となったのは新宿の都有5号地、現在は東京都庁が立っている場所で、当時は広大な空き地だった。有料入場者数は22,000人とされているが、歩道やビルからの無料観覧を含めると25,000人とも言われているビッグイベントだ。

たそがれ時にステージが始まった。夕刻の空に新宿三井ビルが映える。オープニングは「ブライトン・ロック」だ。重苦しいギターのイントロと、甲斐のハスキーボイスが大都会の風景に見事にマッチする。映画のカーチェイスを想像させるナンバーは『THE BIG GIG』にふさわしい。


 今 銃撃の町の中 マシンガンの弾の雨
 暗闇を吹き飛ばせ ワイルド・サイド
 「ブライトン・ロック」より

甲斐バンドが活躍した70年~80年前半の日本のロックは甘い歌詞の曲が多かった。「♪ 甘い時 はずむ心」とか「♪ 恋にゆれる~」とか「♪ 鏡の中で口紅をぬりながら」など、男女の駆け引きを描いた恋愛ソングが、テレビの歌番組を席巻する中、甲斐バンドは違った。テレビにはいっさい出演せず、ライブ活動を中心にファンを増やしていった。


 悲しき恋の結末に
 ぬけがらのように僕は傷ついた
 火遊びの果ての あれば本気の恋
 指輪ひとつ残し君は部屋を出ていった
 「氷のくちびる」より


 誰か俺に愛をくれよ
 誰か俺に愛をくれ
 一人ぼっちじゃ
 一人ぼっちじゃ やりきれないさ
 「漂泊者(アウトロー)」より


 そうして僕らは声もなく涙して
 本当のさよならを
 さよならを口にした
 「東京の一夜」より


つらく苦しい恋の詞をロックのリズムに乗せて歌うのが甲斐バンドのスタイルだ。若者の孤独感や、恋愛に絶望する気持ちを代弁し、魂の叫びで歌ってくれた。

都心のステージではライブの定番「氷のくちびる」「ポップコーンをほおばって」「翼あるもの」「漂泊者」「きんぽうげ」「観覧車'82」と続く。「100万$ナイト」では、とてつもなく大きなミラーボールが真夏の会場を照らし出す。きらめく光の線に酔いしれた後は「敗れたハートを売り物に」を最後に、真夏の一大イベントが終了した。メンバーがステージを去った後も、アンコールを求めるファンの拍手がいつまでも鳴りやむことはなかった。

甲斐バンドはこのイベントを成功させたのち、メンバーに ARB の田中一郎を迎え、両国国技館のこけら落としをはじめ、積極的なライブ活動を行い、人気バンドとしての存在感を高めていった。

しかし『THE BIG GIG』の3年後の1986年、人気絶頂時に甲斐バンドは解散する。「真夏の花火のようにバーッと夜空に舞い上がって燃焼したい」と語った甲斐よしひろ。その後ソロに転向するも大きなヒット曲はなく、まさに真夏の花火のように、あれだけ熱狂的だったファンの熱も静かに冷めていった。

あの夏から36年、もう一度あの熱さを思い出したくて、久しぶりにライブ会場に足を運んだ。観客の数は約2,000人、チケットは完売のようだ。目の前で激しくシャウトする甲斐よしひろは、間違いなく36年前と同じ、ファンの気持ちも『THE BIG GIG』の会場に戻っているはずだ。

80年代に圧倒的な観客動員数を誇った甲斐バンド。ここはもう一度原点に立ち返ってライブハウスツアーを続けるのもいいんじゃないかな。きっとその場にいるみんなのアツい思いを呼び覚ましてくれるはずだ。

2019.08.29
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カタリベ
1960年生まれ
工藤 大登
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