2022年 10月20日

【ライブレポ】セットリスト一新!61歳の田原俊彦が魅せた “変化と挑戦” 

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田原俊彦のコンサートライブ「TOSHIHIKO TAHARA DOUBLE‘T’ TOUR 2022 Romanticist」が中野サンプラザで開催された日
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photo:西村彩子  

“トシ活”を再開するファンが続出。「今もスゴいトシちゃん」


フルバンドとダンサーを従え、曲はバラード偏重にせず、2時間踊りっぱなしで口パクなし。ターンの回数も、上げる足の高さも、曲のピッチも、80年代と変わりナシ。SNSを通じ、かつての田原俊彦ファンに「今もスゴいトシちゃん」の評判がジワジワと広まったのは2010年代後半のことだ。以後、従来の根強いファンに加え、推し活ならぬ “トシ活” を再開させるファンが続出。さらに、女性ファンが圧倒的多数派だったことから若い頃は現場に来られなかった男性ファン、年代を問わず新規ファンも増加することで、ライブ会場の熱気は年々高まっていった。

2019年はデビュー40周年記念ライブ、緊急事態宣言下の2020年には生配信ライブ、2021年には還暦記念ライブと、ここ数年はファンが一体になれるようなスペシャルイベントが行われたことも相乗効果となった。

それに対し、2022年は特別なことがなにもない年だ。また、現場復帰組のファンも「今でもスゴいトシちゃん」を見慣れてくる頃だろう。ライブのセルフプロデュースを続ける田原には、その状況がよく分かっていたはずである。だからこそ、2022年の全国ツアー「TOSHIHIKO TAHARA DOUBLE‘T’ TOUR 2022 Romanticist」では、ファンを刺激する「変化」と「挑戦」のステージを用意したのである。

セットリストを一新させた2022年田原俊彦全国ツアー


ここでは、ツアーの終盤戦である10月20日に行われた、恒例の中野サンプラザ公演の模様をレポートしたい。今回のツアーは全4幕構成。田原は、ここ何年かで型が出来上がっていたセットリストのパターンをぶち壊している。

【第1幕】オープニングとヒット曲メドレーなど
〈Set list〉
▶「スーパー・コミュニケーション」
▶メドレー
・「原宿キッス」
・「グッドラックLOVE」
・「チャールストンにはまだ早い」
・「ハッとして!Good」
・「哀愁でいと」
▶「美しい人よ」
▶「どうする?」
▶「シンデレラ」
▶「悲しみ2ヤング」

オープニング、まずファッションが挑戦的だった。鮮やかなイエローのスーツ姿で登場したのだ。全身黄色の衣服が似合う61歳に驚かされる。1曲目に選んだ「スーパー・コミュニケーション」は、ファーストアルバム『田原俊彦』(1980年)に収録された、当時からのファンは “キュン” となること必至のディスコ調の楽曲。なるほど、これはライブのオープニングにハマる。そこから、80年代のヒット曲のメドレーで会場の熱を上げる。人気曲「チャールストンにはまだ早い」や、デビュー曲の「哀愁でいと」などが出し惜しみせずに投入された。

「チャールストンにはまだ早い」では、これまでの男性4名から、男女各2名に編成を変えたバックダンサーが登場。女性ダンサー起用はステージのビジュアルに変化をもたせるためだろう。そういえば、客席にも大きな変化があった。今回のツアーのオフィシャルグッズ、赤外線カラーチェンジ機能搭載のペンライトが効力を発揮したのだ。これは、公演の照明演出に合わせてカラーが自動的に変化するというスグレモノ。メロディに合わせて客席の色が赤に青に緑にと瞬時に切り替わる様は新鮮だった。

田原俊彦の「変化」と「挑戦」。レア曲の披露で常連ファンをざわつかせる


【第2幕】アルバムメドレー&キラーチューンの連発
〈Set list〉
▶アルバムメドレー
・「ザ・青春セイリング」
・「Love Storyを抱きしめて」
・「ミルキーウェイ」
・「ムーンライト・センセイション」
・「二ペイジだけのラブ・ストーリー」
▶「ごめんよ涙」
▶「ジャングルJungle」
▶「顔に書いた恋愛小説(ロマンス)」
▶「愛しすぎて」
▶「Bonita」

一旦、ステージから姿を消した田原は、上下黒のタイトな衣服に、シルクのような素材のマント状のもの(カラーは黒×赤)をプラスしたファッションで再登場。「変化」と「挑戦」はここから一層顕著になる。今回のツアーにあたり田原のファンクラブでは、会員に “ライブで聴きたいアルバム曲” のアンケートを募っていた。第二幕ではまず、その結果を反映させたメドレーを展開し、過去のアルバム曲に再び光をあてたのである。

「ザ・青春セイリング」は映画『ブルージーンズ・メモリー』(1981年)の挿入歌であり、同作品のサントラ盤に収録された曲。そのほか、80年代前半のアルバムから4曲がピックアップされた。

メドレーとはいえ、普段は歌わない40年近く前のアルバム曲を歌うとなれば、頭の中に歌詞の再インストールが必要だろうし、振り付けは1からマスターとなるだろう。このメドレーは、コアな常連ファンにはなんとも刺激的なパートに、新規ファンには知らない曲との出会いの機会となった。



写真:西村彩子

大ヒット曲「ジャングルJungle」で29歳の自分への挑戦


メドレーが終わると、ライブに欠かせない鉄板シングル曲、なかでもダンスで魅せる曲を並べた。衣装のマント状のパーツがひらひらとなびき、ダンスを華麗に演出する役割を果たす。特筆すべきは「ジャングルJungle」だ。

29歳の頃にリリースしたこのシングル曲は、田原の長いキャリアのなかでも、もっともダンスがハードな部類に属する。当時はバックダンサーが2名だったが、近年はダンサー4名体制が定着し、ダンスはそのフォーメーションを重視したバージョンにアレンジされていた。そのため、オリジナルより多少ながらハードさが軽減されているようにも見えた。

だとしても、激しいダンスはライブの大きな見せ場になるもので、この曲のパフォーマンスに接する度に、ファンは「やっぱりトシちゃんはスゴい!」と誇らしく思うのが常だった。

ところがどうだ、なんと2022年の「ジャングルJungle」はダンサーが2名となり、4名のときより明らかにダンスのハードさをアップさせた、限りなくオリジナルに寄せたバージョンだった。つまり、田原は61歳にして、29歳の自分に挑戦したのだ。これは、客席をざわつかせるサプライズとなる。

さて、結果はどうなったか? 判定はドロー。間奏でのスーパーハードなシークエンスから、息切れナシでの2コーラス目の歌い始めは、29歳と互角の戦いをする61歳をアピールするに十分だった。

もうひとつの新しい挑戦は「拡散祭り」


もうひとつ新しい挑戦があった。今回のツアーでは「拡散祭り」と称し、ライブ中に指定された1曲のみ撮影自由&WebにアップOKという画期的な企画が決行された。

拡散祭りには、いくつもの意味がある。ひとつは、会場へ来られないファンへのケアだ。また、これからライブを観に行こうとしているファンにとっては嬉しい予告篇に、観終わったファンには余韻に浸るツールとして機能した。そして、もっとも大きかったのは、今の田原俊彦を知らない層へのPRである。その絶大な効果は、各動画に付随したコメントを見れば一目瞭然だ。

なお、YouTubeにアップされた拡散祭りの動画のなかでも愛知公演で対象曲となった「ジャングルJungle」は、特に高い再生回数を誇った。その理由は、言うまでもなく何度もリピートしたくなるパフォーマンスだからにほかならない。

エンディングにふさわしいゴージャスな最新曲「ロマンティストでいいじゃない」


【第3幕】重要曲を畳み掛け、エンディングへ
〈Set list〉
▶「雨が叫んでる」
▶「抱きしめてTONIGHT」
▶「Dynamite Survival~I WILL SURVIVE~」
▶「ヒマワリ」
▶「HA-HA-HAPPY」
▶「ロマンティストでいいじゃない」

2度目の衣装替えが行われ、純白のゆったりとしたシルエットのスーツ姿で田原が再登場。これは、2022年のシングル「ロマンティストでいいじゃない」の衣装と同系統のものである。

ラストスパートは、ライブの重要曲の連続歌唱だ。「Dynamite Survival〜I WILL SURVIVE〜」は、自らの生き様を情熱的に歌った曲。そしてファンとのつながりをテーマにした曲を2作続けた。「ヒマワリ」は中野での拡散祭りの対象曲に。観客はスマホを取り出し、それぞれの角度からステージを液晶画面に捉える。「HA-HA-HAPPY」は2021年のシングルで、「あの世でもよろしく」と微笑みかける60代のアイドルにしか歌えないメッセージソングだ。

そしてラストは、古きよきアメリカのエンターテインメントの世界をイメージして制作されたミディアムナンバー「ロマンティストでいいじゃない」を披露。ミュージカル映画のクライマックスを彷彿させるゴージャスな最新曲は、エンディングに相応しいものだった。



写真:西村彩子

アンコールまで続く田原俊彦の「変化」と「挑戦」


アンコールでも「変化」と「挑戦」は続いた。衣装は白いシースルーのシャツ&タイトな白いパンツの組み合わせに。当然、素肌にシースルーのシャツを着れば、上半身のボディラインがモロ見えになる。これは、“モロ見えでもOK” という自信があるからこそのチョイスだろう。

そして、曲はライブに通い慣れたファンの意表を付くものを持ってきた。「MOON RISE」というのは、1988年のアルバム『Dancin'』の収録曲。最後まで変化を追求したのだ。それは、いかにもアンコール向けの、会場盛り上げ曲だった。



写真:西村彩子

なお、この記事を読んで「そんなにトシちゃんがスゴいのなら観てみたい」と思った方は、まず、Webで「拡散祭り 田原俊彦」と検索することをおすすめしよう。そこには、オフィシャルの公認でファンがアップしたライブ動画がある。

そして、「拡散祭り」の動画を観て「トシちゃんのライブ、もっと観たい!」という思いを強くされた方には、12月18日(日)午後5:00より、WOWOWで中野公演の模様が放送・配信されることを最後にお知らせしておきたい。

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2022.11.13
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miki104guam
ミゾロギさんのレポは とても心に響きます。いつも素敵なレポを ありがとうございます。 仰る通り 今年のセトリは最高に嬉しい選曲で オープニングから鳥肌が立ちました。 ただ トシさんは 毎年 "最高" を更新してくれるので 来年のツアーも きっと何かやらかして(笑)くれると思っています。 楽しみです!
2022/11/13 22:46
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カタリベ
ミゾロギ・ダイスケ
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