2022年 10月19日

37年ぶりの新曲 ♪ 畑中葉子は「カナダからの手紙」と「後から前から」で終わらない!

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歌手デビュー45周年の畑中葉子、新曲「夜雲影」配信リリース


2022年10月19日、歌手デビューから45周年を迎えた畑中葉子の新曲、「夜雲影(やうんえい)」が配信リリースされた。本作を詳しく紹介する前に、彼女のこれまでの経歴と、近年再評価が高まっている“意外な”魅力について触れておきたい。

畑中は、1978年1月10日、恩師・平尾昌晃とのデュエット「カナダからの手紙」でデビュー。本作がオリコン週間チャート1位を獲得し、累計70万枚(当時の年間第7位、当然、イベント特典目当てで一人が大量に購入した結果ではない)の大ヒットとなり、同年末のNHK紅白歌合戦にも初出場となった。翌年、ソロ歌手に転向し、1980年には映画『愛の白昼夢』で女優デビューし、それに合わせたセクシー路線のシングル「後から前から」もリリース。清純なデュエット時代との大きなギャップからオリコン最高69位とは思えないほど大きな話題となった。




90年代に入って結婚、出産を機に休業していたが、2007年に発売された『ゴールデン☆ベスト』が初回プレス約350枚から、ほぼクチコミだけで売れ続け累計5千枚を超えるセールスとなり、2010年歌手活動を再開。2014年に発売されたソロワークス集『後から前からBOX』(2007年と本作の企画・監修は臼井孝)はディスクユニオンの週間チャートで1位となる人気に。その後、2010年代の後半にアルバムを3作リリースしている。

とはいえ、世間的には「カナダからの手紙」と「後から前から」の2曲のイメージだけが突き抜けているように見られるが、実はこの令和の時代に意外な再評価を受けているのだ。



「カナダからの手紙」と「後から前から」だけではない畑中葉子の人気


まず、ストリーミングサービスで意外な人気となっている。Spotifyによると、畑中の月間リスナーは常時4〜5万人とのこと。これは、昭和女性アイドル出身では南沙織、桜田淳子、南野陽子など10作以上のベストテンヒットを持つ歌手と同レベルで、明らかに当時以上の人気となっている(詳しくは、筆者が日経クロストレンドで執筆した『昭和女性アイドルのSpotifyランキング』をご参照いただきたい)。

そのリスナーの内訳を見ると、意外にも約2割超が海外のリスナーとなっている。「カナダからの手紙」は、Spotifyだけで累計160万回以上再生されており、これは1970年代のデュエット曲としては「銀座の恋の物語」や「いつでも夢を」といったデュエットの超定番を凌ぐ人気。今聴いてもオシャレに感じるメロディーラインは、海外や若い世代などにも支持されているのだ。

また、ダンスビートに乗ったセクシーな呟きやボーカルの「モア・セクシー」は、海外のディスコでも人気。さらには異国情緒あふれるムーディーなポップスの「誘惑」は、アルバム中にひっそりと収録されていたにもかかわらず、約2万再生の圧倒的大多数は海外リスナーだ。いずれも“シティポップ・ブーム”という言葉では説明できない現象が起こっている。

さらに、彼女のSpotifyでの人気曲を紐解いてみると、中島みゆき「悪女」、森昌子「せんせい」、増田けい子「すずめ」、辺見マリ「経験」など、上位20曲中、11曲がカバーを占めている。意外にも、畑中はカバーの名手でもあったのだ。これは、決して“イロモノ歌手”ではなく、その確かな歌唱力が認められているという証拠とも言えるだろう。

畑中自身の意図を反映、シリアスなメッセージを貫く「夜雲影」


そんな畑中が今回リリースした「夜雲影」は、打ち込みサウンドの中、落ち着いた歌声で、言葉をかみしめるように歌ったミディアムポップスとなっており、冷徹な世間と温かな人の優しさを対比するような描写がじわじわと胸に迫る。現在も他の楽曲では、語尾がキュートにカールする、いわゆる “キャンディボイス” が健在だが、本作ではそれを一切封印し、ひとえに「生きたいよう 生きれば良い」というシリアスなメッセージを貫いている。

これは、コロナ禍で自殺する人達が増えたことを受け、死に向かう人の足をどうにか踏みとどめられないか、と畑中自身の意図が反映されているとのこと。これも、「後から前から」や「もっと動いて」を歌った畑中のイメージを持つ人には、意外に思えるかもしれないが、実はその次のシングル「ダスターシュート・ベイビー」は、性をテーマとしつつ、その代償にも踏み込んだ社会派ソングだし、東日本大震災の際にチャリティーCDや被災地を舞台とした映画『青いソラ白い雲』に参加したことも考えると、本作を企画・制作したことも自然な流れだと理解できる。



YouTubeで公開されている本作のミュージックビデオ(監督:北岡一哉)でも、そのシリアスな表情から畑中の真摯なメッセージが胸に響くし、洋画家・今井喬裕が畑中を描いたジャケットもまた、深い慈しみに満ちている。今、深刻に悩んでいる人たちに届くことで、少しでも心が軽くなればというメッセージがそのまま投影されているからだ。

なお、畑中葉子の新曲と人気曲を集めたプレイリスト『畑中葉子 新曲「夜雲影」+Spotify人気TOP40』も作成されているので、新旧の作品から彼女の深遠な魅力に触れる人が増えれば嬉しい。

Song Data
■ 畑中葉子 / 夜雲影
■ 作詞:中村隆之
■ 作曲:中村隆之
■ 編曲:中村隆之
■ リリース日:2022年10月19日

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2022.11.26
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カタリベ
1968年生まれ
臼井孝
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