3月14日

世界屈指のライブバンド、ネヴィル・ブラザーズの大傑作「イエロー・ムーン」

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ネヴィル・ブラザーズのアルバム「イエロー・ムーン」が米国でリリースされた日
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豊かな音楽性に圧倒、ネヴィル・ブラザーズ「イエロー・ムーン」


ニューオリンズの音楽を私に最初に紹介してくれたのはボ・ガンボスだった。

ボ・ガンボスの影響からニューオリンズの音楽を聴いてみるというのは自然な流れで、最初に聴いたアーティストはバンド名の由来にもなっているボ・ディドリーだった。ボ・ディドリーのベスト盤を聴いた高校生の私は「明るくて、ひょうきんな音楽だなぁ…」というあっさりとした感想しか抱けなかったことは、今考えると誠に恥ずかしいかぎりだ。

そして、同じ頃にニューオリンズを代表するファミリーバンド、ネヴィル・ブラザーズが最高傑作『イエロー・ムーン』(1989年)を発表している。この作品で私は初めてネヴィル・ブラザーズを知り、その豊かな音楽性に圧倒されまくったのだ。

ネヴィル・ブラザーズは、そのライブバンドとしての圧倒的な実力とニューオリンズ出身ならではの音楽性をレコードに刻み込むことができずに苦戦していた。こうした状況を解決するために『イエロー・ムーン』の制作には大胆なプロデューサー人事を行っており、U2との仕事で名を馳せたダニエル・ラノワを起用し、アメリカ南部の土着的なルーツミュージックをモダンに響かせることに成功している。

ロックやフォークにも柔軟姿勢、ボブ・ディランやリンク・レイをカバー


当時の私はニューオリンズの音楽的背景など知るすべもなく、アラン・トゥーサンもプロフェッサー・ロングヘアもドクター・ジョンすらも聴いたことがない、ウブな高校生だった。もっと言っちゃうとネヴィル・ブラザーズの前身がミーターズであることすら知らなかったのだ。

時としてこうした無知は先入観なく音楽に接することを促してくれる。そのおかげで私は本作をルーツロックの新たな解釈として、また、当時流行していたワールドミュージックの一種として、すんなりと受け入れ、超愛聴盤として深く聴き込んだのだ。

また、本作には、ロックファンにも馴染みやすい、カバーが収録されており、ボブ・ディランやリンク・レイの曲が取り上げられている。これは、プロデューサーのダニエル・ラノワのアイデアなのかもしれないが、ロックやフォークに対してもネヴィル・ブラザーズが柔軟な姿勢を持っていることを示しており、ブラックミュージック素人の私でも自然に本作を受け入れることができた理由だったのかもしれない。

一方では、伝統的なブラックミュージックへのリスペクトも忘れてはいない。サム・クックの名曲「ア・チェンジ・ゴナ・カム」もカバーされており、アーロン・ネヴィルが自慢の美声をこれでもかと聴かせてくれる。

研ぎ澄まされた生演奏を武器に作り上げた「イエロー・ムーン」


『イエロー・ムーン』がリリースされた1989年のブラックミュージックシーンでは、ジャネット・ジャクソンがジャム&ルイスのプロデュースのもと、『リズム・ネイション1814』をリリースしている。また、この前年にはテディ・ライリーが自らのグループ、ガイを結成しデビューしており、ニュー・ジャック・スイングがブラコンの新たな潮流となっている。

この時期のブラックミュージックは、シンセや打ち込みを多用し、どんどん重厚な音づくりが推進されていた。しかし、こうしたトレンドと正反対に研ぎ澄まされた生演奏を武器にネヴィル・ブラザーズは『イエロー・ムーン』を作り、バンドにとって初の全米チャート入りのアルバムとし、キャリアを象徴する代表作を作り上げたのだ。

ネヴィル・ブラザーズが受け継ぎアップデイトさせたニューオリンズ的要素


ニューオリンズの土着的な要素をそれまで以上に導入し、それが決して雰囲気モノで終わらなかったのは、ネヴィル・ブラザーズの体内に脈々とニューオリンズのグルーヴやガンボ・カルチャーが受け継がれ、血肉化されていたからだ。

併せて、ニューオリンズの民間信仰であるブードゥー教に由来する呪術的で不穏なサウンドも大幅に取り入れている。

このようにネヴィル・ブラザーズは、ニューオリンズ的な要素を色濃く反映させて『イエロー・ムーン』を作り上げた。本作によってネヴィル・ブラザーズは、ニューオリンズ音楽の個性を際立たせるだけではなく、新たな領域にまでアップデイトさせたのだ。

音楽の都として古い歴史を持つニューオリンズ。その伝統を今日的なポップミュージックのスタイルにまで昇華させた本作は今の感性で聴いても、何一つとして色褪せていない。

むしろ、打ち込み全盛の今日の音楽と比較すると、本作に宿るグルーヴの強靭さはリリース当時よりもさらに強力に響き渡る。
本作は、ニューオリンズ音楽の泥沼にハマるきっかけとして聴くには、最適な一枚なのだ。

そして、ロックンロールもソウルもリズム&ブルースも全てのルーツミュージックはアメリカ南部で地続きで繋がっている。そんなことを改めて教えてくれるレコードがネヴィル・ブラザーズの『イエロー・ムーン』なのだ。


追記
私、岡田浩史は、クラブイベント「fun friday!!」(吉祥寺 伊千兵衛ダイニング)でDJとしても活動しています。インフォメーションは私のプロフィールページで紹介しますので、併せてご覧いただき、ぜひご参加ください。

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2021.10.10
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カタリベ
1972年生まれ
岡田浩史
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