3月15日

80年代の中島みゆき、スルメ系の名曲「あした」もお忘れなく!

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中島みゆきのシングル「あした」がリリースされた日
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中島みゆき、70年代からの4年代でシングル1位を獲得した唯一のアーティスト


中島みゆきは、70年代、80年代、90年代、00年代と4つの年代でオリコンシングル1位を獲得した唯一のアーティストであることは、これまで多くのメディアで報道されてきました。ついでに言うと、この20年初に発売されたアルバム『CONTRALTO』によって、10年代、20年代も加え6つの年代でオリコンアルバムTOP3入りを既に果たしている類まれなアーティストでもあります。

ただ、Re:minderサイトでメインとなる80年代には、シングルの「悪女」(1981年)や、アルバム『寒水魚』収録の「歌姫」(1982年)、アルバム『予感』収録の「ファイト!」(1983年)など、2020年2月に発表された雑誌『ダ・ヴィンチ』でのファン投票でも上位のものがありますが、80年代後半の楽曲が語られることがあまりないように思います。

他方、90年代前半には、ドラマ主題歌でミリオンセラーCDとなった「浅い眠り」(1992年)や「空と君のあいだに」(1994年)、ファン人気の高いシングル「誕生」(1992年)、さらには2010年代にダウンロードでミリオンセラーとなった「糸」(1992年)など、記録にも記憶にもヒット曲が多数見られます。つまり、80年代後半の数年間がスキップされて紹介されることが多いのです。

名曲「糸」にも勝るとも劣らない濃密さ、シングル24作目「あした」


実際、84年のアルバム『はじめまして』からは、ロック色の強い作品が増え、それ以前のフォーク系が好きだった人が離れていったのか、1984年から1988年にかけての売上枚数は総じて下がっていきました。私個人、多感期を迎えていた中で彼女の楽曲に救われたことが何度もあり、オリコンデータを見ては、自分が大好きな音楽を聴く人が少なくなっていると感じては寂しい想いをしていました。

そんな中で、1989年の春に発売されたのがシングル24作目となる「あした」です。この歌は、中島みゆきの音楽の旨味が凝縮されたラブソングだと私は思っています。ひょっとすると名曲と名高い「糸」にも勝るとも劣らず濃密さで堪能できるかもしれません。

まず、歌詞とメロディーの展開が実にドラマティックです。「♪ イヤリングを外して」「♪ フリルのシャツを脱いで」と徐々に素の自分を見せていく様を穏やかに歌うAメロ。次に、「♪ カーラジオが嵐を告げている」中で、愛に対する不安にもがきながら歌うBメロ。そして、「♪ ただの心しか持たない やせた猫になっても」、「♪ 何の得もなくても」「♪ 愛を聞かせて」と熱く歌い上げるマイナーなメロのサビ。

不倫ソングでもなく、ましてや当時バブルでアゲアゲな風潮で省みることの少なかった時代に、愛に真摯に向き合うからこそ思い悩む歌が作れたのは「さすが中島みゆきだな」と感心します。

ドラマ性をしっかり支えた瀬尾一三の編曲


そして、本作のドラマ性をしっかり支えているのが編曲家:瀬尾一三の確かな手腕と言えるでしょう。実は、私自身、1986年のアルバム『36.5℃』や1988年のアルバム『中島みゆき』あたりのデジタルロック系の楽曲が好きだったので、瀬尾氏が担当し始めた前年のシングル「涙-Made in Tears-」は、随分とマイルドになったなと感じていたのです。

しかし、この歌の静寂から一変し嵐や土砂降りが訪れ、それでもなお愛を貫こうとするという心象風景の変化を繊細にイメージさせるようなアレンジ、そして体を預けるかのように、より伸び伸びと歌うようになった中島みゆきの歌声に感動し、私の不安も一掃されました。ちなみに、この89年末から、彼女のライフワークといえる言葉の実験劇場『夜会』が始まったのは、瀬尾氏との出会いも大きかったのでしょう。

聴けば聴くほど心に沁みる、オリコンチャートで33週TOP100入り


本作は、オリコンチャートで初登場20位からいったん71位まで下がりながらも、発売から4か月目で最高18位まで盛り返し、通算33週間 TOP100 に入るという80年代の彼女の作品の中で最長のヒットとなりました。また、有線放送リクエストでは最高6位をマーク、彼女の有線ヒットは1983年の「あの娘」以来でした。これは、当時タイアップとなっていたKDD「001」のCMソングが、ゆるやかに荷物が移動する映像と穏やかなAメロが使われたパターンから、愛する人との別れに号泣する女性の映像と中島が激唱するサビが使われたパターンに切り替わったことも要因となっていそうですが、しかし、聴けば聴くほど心に沁みてくる、いわばスルメ系の楽曲の魅力も大きいと思っています。

 形のないものに
 誰が愛なんてつけたのだろう

 凍えながら2人ともが
 2人分傷ついている

LINE の1行メッセージで簡単に別れてしまうような現代ですが、本作をあらためて聴いてみれば、人と人との距離を見つめ直せるキッカケになるかもしれません。


Song Data
■ あした / 中島みゆき
■ 作詞・作曲:中島みゆき
■ 編曲:瀬尾一三
■ リリース日:1989年3月15日
■ オリコン最高位:18位
■ 推定売上枚数:15.4万枚
■ 100位内登場週数:33週



2020.03.14
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カタリベ
1968年生まれ
臼井孝
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