共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.57
Don’t Forget Me / Glass Tiger
新人アーティストを売り出す際に、送り手側であるレコード会社がその時点で旬のシンガーを客演させる手法は、もちろん80年代に限らずいつの時代にも散見される事象だ。
グラミー賞を独占したクリストファー・クロスのデビュー曲にはマイケル・マクドナルドの歌声が印象的にフィーチャーされていたし、鳴り物入りのデビューだったロックウェルは人気絶頂のマイケル・ジャクソンを迎えていたこと等は、80年代の典型例だろう。
80年代55番目に誕生したナンバー2ソング、カナダ出身のグラス・タイガー「ドント・フォゲット・ミー(Don’t Forget Me -When I’m Gone-)」(86年10月2位)も、そんなパターンに当てはまるヒットソングだった。
ハードロックを基盤としたイケメン・ロックバンドによるわかり易いポップロック。もちろん、その魅力は作品自体に溢れているが、2分30秒過ぎから聞こえるブライアン・アダムスの歌声のインパクトに拠るところが大きいことは否めない。
その当時のブライアン・アダムスといえば、アルバム『カッツ・ライク・ア・ナイフ』(83年)でのブレイク後、全米ナンバーワンを記録した「ヘヴン」を筆頭に「サムバディ」、「想い出のサマー(Summer of ’69)」といった6曲ものシングルヒットを輩出した名盤『レックレス』で世界的なロックスターになっていた頃… グラス・タイガー台頭時の86年は、待望の新作『イントゥ・ザ・ファイヤー』(87年)がリリースされる直前であった。
そんなタイミングでのブライアンの歌声投下。世界のブライアンファン(特に女性)が飛びつかないわけがない。「ドント・フォゲット・ミー」は、特に英語圏であるアメリカ、オーストラリア、イギリス、本国カナダ(ナンバーワン!)で大きなヒットを記録している。
ところでグラス・タイガーとブライアン・アダムスは同じカナダ出身で同郷の士。プロデューサーとして起用されたジム・ヴァランス(一連のブライアン作品で名を馳せた)もカナダの出身。もちろんこれは偶然でもなんでもなく、ブライアンがグラス・タイガーを見出したというストーリーと共に、レコード会社の目論見が見事に当たったというわけ。
グラス・タイガーは他にもいくつかヒットソングを残しているので、一発ヒット・アーティストではないが、やはりブライアン・アダムスには足を向けて寝られない… というか、足を向けて寝ようなんて、思ってもいないだろうけど。
2018.10.16
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