リリース年は1985年。味の素ゼネラルフーヅ(現:味の素AGF)の『カフェスタ』CMソングになり、評判となった。当時の山本達彦は、雑誌でこう紹介されることが多かったという。“シティポップスの貴公子” ――。まさに時代が彼に追いついた! 実は数年前、松原みきの「真夜中のドア〜stay with me」に代表される世界的シティポップ・ブームを知った時、私の頭に真っ先に思い浮かんだのが山本達彦であった。
「夏の愛人」がリリースされた1985年は「ふたりの夏物語」(杉山清貴&オメガトライブ)、「夏ざかりほの字組」(Toshi & Naoko)、「Bye Bye My Love(U are the one)」(サザンオールスターズ)など、サマーソングの名曲が多く、『ザ・ベストテン』をはじめとしたランキング番組で上位を競いあっていた時期。そんな中、ベストテンっ子の私が、一度もランクインしなかった「夏の愛人」にちゃっかりとロックオンしていたとは、我ながらお目が高いというか、お耳が高い! 山本達彦はアルバムが人気で、「ベストテン界隈」とはまた違うゾーンにて高い評価を得ていたのだ。
時代的にも、1984年から86年にかけてはテレサ・テンの「つぐない」や小林明子の「恋におちて -Fall in love-」などの不倫ソングが多くヒットした時期でもあった。ただ、山本達彦の「夏の愛人」は、色気はあれど、生臭さはない。彼の貴公子のようなたたずまいと、歌詞の1つ1つを音符にしっかりと乗せて歌う、非常に正しくクラシカルな歌唱は、秘密めいた関係を俯瞰で見るストーリーテラーのようだ。