7月21日

工藤静香×中島みゆき×後藤次利、三位一体で燦然と輝く「証拠をみせて」

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工藤静香のミニアルバム「静香」がリリースされた日
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アイドルファン以外からも支持を集めていった工藤静香


今から32年前… 1988年の7月21日に、工藤静香のミニアルバム『静香』が発売されました。

工藤静香は自身が所属するおニャン子クラブのレギュラー番組『夕やけニャンニャン』の最終回となった1987年8月31日にシングル「禁断のテレパシー」でデビューし、オリコン1位を獲得。番組終了後も、シングル2作目の「Again」(1987年12月)と同3作目の「抱いてくれたらいいのに」(1988年3月)と、オリコン最高3位ながら順調に前作よりセールスを伸ばしていました。

特に、松井五郎が作詞を手がけた情熱的なロッカバラードの「抱いてくれたらいいのに」は、おニャン子出身の多くが苦戦した有線放送リクエストでもロングセラーとなり、アイドルファン以外にも支持を広げていきました。

そうした良い流れを受けて、6月に4thシングル「FU-JI-TSU」、7月にミニアルバム『静香』、そして8月に自身が出演する化粧品キャンペーンソングとなった5thシングル「MUGO・ん…色っぽい」と、3か月連続で中島みゆき作詞作品がリリースされました。

トップスターになるための布石、88年夏のミニアルバム「静香」


もともと工藤本人が中島の大ファンということもあり、相性は抜群で、「FU-JI-TSU」は3作ぶりにオリコン1位を獲得、累計は初めて20万枚を突破し、さらに「MUGO・ん~」では2作連続オリコン1位、こちらは遂に累計50万枚を突破しました。

また、シングルの狭間に発表されたミニアルバム『静香』は、超濃厚な楽曲が詰まっており、全5曲ながらフルアルバム並みの聴き応えがあります。つまり、この88年夏の中島みゆき×後藤次利プロジェクトは工藤静香がトップスターになるための必要条件だったと言えるでしょう。

今回紹介する「証拠をみせて」は、アルバム収録曲ながら、多くのファンからシングル並み、あるいはそれ以上に愛されている楽曲です。その “証拠” に、ファンのカラオケ歌唱回数とインターネット投票で収録曲が決定された2015年の企画CD『カラオケで歌いたい工藤静香ベスト10』(レンタル専用商品)では、堂々の6位にランクイン。シングルのオリコン1位曲が11作、累計30万枚以上が12作もある工藤静香の代表10曲に入るのですから、相当な人気だと分かります。

本作の最も明解な特長は、なんといっても、インパクト絶大のイントロ!ライヴ会場では、シンセサイザーが弾くたった5つの音だけで会場が騒然としてしまうほどです。イントロ部分に限定すれば、工藤静香作品の中でも、TOP3に入るのではと思うほどの衝撃度です。

後藤利次のワイルド歌謡ロック、中島みゆきの歌詞の両面でヤンキーを魅了


勿論、後藤次利はアレンジのみならずメロディーの構築も技巧的。本作ではAメロでなだらかに流しつつ、Bメロで徐々にテンポを上げて、サビで一気にスパークするという展開が、あたかも海辺の断崖目指して全速力でバイクを飛ばしているような疾走感が伴っており、当時、彼女のキャラクターやルックスが好みだったヤンキー達も、このワイルドな歌謡ロックに魅せられたことでしょう。

そして、そのスリリングなメロディーに乗せた中島みゆきの歌詞も秀逸。相手のことをどんどん好きになっていくという心象風景を描きつつも、主人公を「わたし」ではなく「あたし」として蓮っ葉な雰囲気を出したり、「曲がりくねったスパイラル」で道路をかっ飛ばしている風景を想起させたりと、ここでもヤンキー達を惹きつけます。

ちなみに、この約10年後、工藤静香に中島みゆきが作詞・作曲で提供したシングル「雪・月・花」(1998年2月発売)では、舞台をベッドの上に移し、同じように主人公の女性が “愛しすぎるもどかしさ” を描いており、10年経過した分、大人の情念系ラブソングへと進化しています。

工藤静香×中島みゆき×後藤次利、オンナの本音に迫る最強のトリニティ


中島は、工藤静香の強い眼差しや太い眉毛の気迫、その一方で眉間から感じ取れる繊細さも同時に表現しようとしたのか、彼女への提供曲には総じて “意志が強い、けれど実は内気” という主人公が多く登場するように思えます。その二面性が実は人間の本質であり、より幅広いリスナーに愛された要因と言えるでしょう。

そして、工藤静香自身も、起伏の激しい後藤次利メロディーと、それをドラマティックに描いた中島みゆきの描く世界観を熟知した上で、強い部分と弱気になる部分を見事に歌い分けています。時にドスを利かす寸前まで力強く歌い、時に悩むようにけだるく歌うという落差は、ミラクルひかるのモノマネでも有名になるほど、彼女の大きな個性と言えるでしょう。

そんな訳で、工藤静香×中島みゆき×後藤次利は、オンナの本音に迫りうる最強のトリニティと言えるかもしれません。なお、2015年に、全作詞:中島みゆき、全作曲:後藤次利の楽曲を集めたベスト盤『My Treasure Best -中島みゆき×後藤次利コレクション-』が発売されています(手前味噌ですが、筆者も作品の企画と楽曲解説で関わっています)。全18曲をまとめて聴くと、より深遠な世界に入り込むこと間違いありません!


Song Data
■ 証拠をみせて / 工藤静香
■ 作詞:中島みゆき
■ 作曲・編曲:後藤次利
■ 収録アルバム「静香」
■ リリース日:1985年7月21日
■ オリコン最高位:1位
■ 推定売上枚数:26.5万枚
■ 100位内登場週数:20週


2020.07.20
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1975年生まれ
はやしとも
すみません
場末感は表現が大き過ぎたかもしれません汗

中島みゆきにとっては「工藤静香」を使って若い女性の恋唄を唄わせてた気がしてました。

中島みゆきも90年代に入ると恋愛の楽曲だけでは無く人生がテーマの曲をアルバムでは無くシングルで発表していくスタイルに変わっていくのもちょうどタイミングが良かったのかと勝手に感じてしまってました。

今度カラオケ行ければ「裸足のライオン」歌います!
2020/07/21 12:39
11
返信
1975年生まれ
はやしとも
ミニアルバム
レコードは片面だけの収録
工藤静香のアルバムはシングル候補曲をバランスよく収録した雰囲気を感じてしまうが
この「静香」だけは確実にコンセプトがハッキリしたアルバムだと今でも思ってます。
コンセプトアルバム「カレリア」もミニアルバムでしたね。
工藤静香は中島みゆきの場末感と
全部お見通しだけど心のうちに秘めておくって女性をうまく表現できた歌手
だから「静香」は本当によく聴きました。
でも
私はヤンキーではなかったw
2020/07/20 19:04
2
返信
1968年生まれ
臼井 孝
コメントありがとうございます。
静香さんは、バリエーション豊かなアルバムが好きだと公言しているので、仰る通りコンセプトアルバム少なめですね。『静香』はコンセプト…というより、全作詞が中島みゆきという時点で統一されていますね。場末感…、静香作品にはそこまで現れてないかな~と思いますが(近年のファンに怒られそうです 汗)、シリアスとシャイネスをうまく掛け合わせた歌詞が多いなと思いますね、特に静香作品は。
2020/07/21 05:18
12
カタリベ
1968年生まれ
臼井孝
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