7月21日

TM NETWORK「SEVEN DAYS WAR」と 宮沢りえ「ぼくらの七日間戦争」

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テーマは教育問題、宗田理原作小説が映画化


夏休み。リマインダー世代… いわゆるエイティーズの少年期は、川べりで葦(あし)の茂った空き地や、雑木林、建設会社の資材置き場など、ちょっとしたスペースを狙って “秘密基地” を作ったことがある世代だと思う。ご多分に洩れず僕もその輩のひとりであった。

傍から見たら全然隠れていないし秘密でも何でもないけれど、拾ってきた段ボールを敷き詰め、酒屋からビールケースを拝借したりして建築された僕らの秘密基地は、町のそこかしこに点在していたんじゃないかな。

高度経済成長期も終わりに近づいていた1970年代初め… ブラウン管テレビや冷蔵庫など家電製品の不法投棄が目立っていたのもこの頃で、世間的に大人たちは問題視していたけれど、僕らにとってそれはもう宝の山だった。

大きいお兄ちゃんたちの作る秘密基地には、何故か刺激的な雑誌や漫画があって(笑)、それにならって僕らの秘密基地にも拾ってきた雑誌を並べ悦に入ったものだった。

それから時は流れ―― 『ぼくらの七日間戦争』(1985年4月出版)… 宗田理の小説は、管理教育に抑圧された中学生が、教師や親などの大人たちに反抗して “戦争” を挑む話で、深く掘り下げた内容は現代にも通じる教育問題がテーマだった。

宮沢りえ主演映画「ぼくらの七日間戦争」


映画『ぼくらの七日間戦争』(1988年8月公開)では、学校教育(生活指導など)の理不尽な方針に対してひと泡吹かせようと、生徒が廃工場に立てこもり教師や親などの大人たちと攻防する部分に焦点が当てられ、三井のリハウス・初代リハウスガールで美少女旋風を巻き起こした宮沢りえが主役を演じた。

宮沢りえが主役だから… という理由が一番だったけれど、この映画の一番のウリである “廃工場に中学生が立てこもる” というシチュエーションが、僕が幼少期に心血注ぎこんだ秘密基地の懐かしい記憶を呼び覚ましたことは言うまでもない。僕はスクリーンで観るため映画館へと足を運んだ。

映画は、小説に出てこなかった61式戦車 “愛称エレーナ”(※注1)が夜空に花火をぶちかますという大掛かりな仕掛けもあり、教師を先頭にした大人たちが次々翻弄されてゆくドタバタ劇として映像化されていた。「ちょっと子ども騙しじゃないかなぁ」と思いつつも、こういう作品は面白く観ちゃうのだ。

子どもが思考を巡らせた仕掛けで大人を翻弄する… といえば『ホームアローン』(1990年 / アメリカ)が有名だけれど、クリス・コロンバス監督は、たぶん『ぼくらの七日間戦争』に着想を得ているんじゃないかなぁ… おっと脱線。

当時の宮沢りえは、まだ頬がプクっと丸く色白で、それでいて目元の涼しさにどことなく大人っぽさを感じさせる、まさに美少女そのものだった。

そんなあどけなさと清楚な雰囲気を兼ね備えていた宮沢りえは、映画からわずか2年後、17歳で『ふんどしカレンダー』その翌年の18歳でヘアヌード写真集『Santa Fe』を発売。宮沢りえのぶっ飛び人生には本当に驚かされる。確かに、いろいろあったけれど、いまも可愛らしさに溢れていて大好きなのだ。

主題歌はTM NETWORK「SEVEN DAYS WAR」


さて、この『ぼくらの七日間戦』の主題歌を担当したのが、1987年テレビアニメ『シティーハンター』のエンディングテーマ「Get Wild」で一躍人気グループに躍り出たTM NETWORKである。

いまでこそTM NETWORK=小室哲哉のようなイメージがあるけれど、当時はまだまだボーカルの宇都宮隆が全面にフィーチャーされていた。

80年代中盤の小室哲哉はTM NETWORKと並行して、岡田有希子をはじめとするアイドルに向けた楽曲提供で自身のスキルを磨いていて、1986年に渡辺美里へ提供した「My Revolution」が第28回日本レコード大賞金賞を受賞、1987年に「Get Wild」がヒットするなど、波に乗ってきた時期だ。そんな勢いあるタイミングに舞い込んできた仕事が『ぼくらの七日間戦争』の主題歌なのだ。

映画の主題歌「SEVEN DAYS WAR」はTM NETWORK、14枚目のシングルで、作曲は小室哲哉、作詞は小室みつ子である。当時小室みつ子はTM NETWORKの楽曲に多くの歌詞を提供していた。

作詞は小室みつ子、映画の内容に合わせた感動的なバラード


さて、僕はこの「SEVEN DAYS WAR」に、それまでのシンセサイザーを駆使した “小室哲哉らしさ” より、バンドっぽい音作りを感じた。映画の内容に合わせて感動的なバラードに仕上げているのだ。小室みつ子の歌詞も実に興味深い。とりわけ二番の歌詞…。

 ルールと正しさの意味
 わからないまま従えない
 誰かと争うのではなく
 自分をみつけたいだけ
 誰かを憎むのではなく
 想いを伝えたいだけ

リズムと韻を踏んだワード遣いが巧みで、内容がグッとくる歌詞である。管理する大きな組織に対し、小さな存在が異を唱え、反抗するという物語を丁寧に歌詞へ書き起こしたものだろう。

しかし映画でも現実でもそうだけど、「正しい」のゴリ押しは、軋轢しか生みださない。劇中の子どもたちは杓子定規のような「正しさ」に辟易し反抗した。ただ、子どもたちは規則そのものに反抗したのではない。「正しさ」に愛情が感じられなかったから反旗をひるがえしたのだ。

映画公開から33年を経た今、この背景と少しも変わっていないと感じることが多々ある。こういった作品をきっかけとして世の中が変わる… というのは難しいのだろうか。

音楽は平和の象徴、音楽プロデューサーとして小室哲哉が作った世界


この映画を経て90年代に入ると、破竹の勢いで世の中を席巻した “小室ブーム” が到来する。小室哲哉が音楽プロデューサーとして楽曲提供からひとつの世界を作ったのだ。

この頃は、ひとつの音楽が心の救いになることがあった。いま音楽の嗜好は細分化され、みんなが知っている楽曲、ヒット曲は映画やドラマの主題歌に限られてくる。なかなかブームを作り出すことは出来ないけれど、音楽に限らず、映画も、写真も、絵画も、すべてのアート作品に通じる世界観として “愛と平和” があると思う。

「愛こそはすべて(All You Need Is Love)」というビートルズの曲があるけれど、昔も今も音楽家たちは繰り返し世界へ愛と平和を発信し続けているのだ。

人類愛が世界を救う… 『ぼくらの七日間戦争』という “戦争” のワードから随分大きな話に広げちゃったけれど、愛は地球を救うし、音楽は平和の象徴だと、僕は本気で思っている。


※注1
61式戦車:1979年公開の映画『戦国自衛隊』で使用されたレプリカ。角川映画の中で数々の作品に使用された。



※2019年8月17日に掲載された記事をアップデート

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カタリベ
1967年生まれ
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