「あと4時間分減らさないと…」
テレビのリモコンを手に、娘が何かブツブツ言っている。
「どうしたの?」
問いかける私。
娘「パパには関係ないでしょ」
私「……。」
(昨年末の話)
後でその話をカミさんにしたら「返事してもらえるだけマシでしょ」と諭された。
何でも嵐が出ている正月の特番をすべて録画するためにハードディスクの容量を空けていたのだそうだ―― 私も昔、同じ悩みを持っていた。
それはカセットテープの本数が少なく “これは保存版にしよう” と決め、テープのツメを折ったにも係わらず、結局セロテープを貼って上から録音せざるを得ない事がままあったからだ。今あの頃を振り返ると、カセットテープってものすごいアナログな製品であったと思う。
例えばラジオ番組から好きな音楽だけをピンポイントで録音したい時には、事前にテープの透明なところから録音ができる茶色のところまで、予めリールを回してスタンバイしていた。もちろんテープを微妙に回すのに使ったのは六角鉛筆である。
この六角鉛筆は “巻き戻したいけど、わざわざカセットデッキに入れるほどの長さではない場合” にも力を発揮した―― そう、鉛筆を軸にカセットをクルクルと回すのである。
その他にも様々な録音時間、例えば46分、54分、120分などのテープがあったが、どれもこれも帯に短しタスキに長しであり、必ずお尻の数分が余ってしまった。晩年カセットデッキがオートリバースになったときなど、その微妙な間を持てあましたものだ。ただしアナログなカセットテープには、今時のデジタルなハードディスクにはない哀愁というものがあった。
例えば自作のカセットラベルである。気になる女の子に「え~、あのレコード買ったの? ダビングしてくれない」と言われた時に――
ラベルをきっちりと作り込むと気持ち悪いかなぁ。
逆に男らしく殴り書きにしたほうがいいかなぁ。
いつどのタイミングで渡そうかなぁ。
とか思い悩んだものだ。もちろん思い悩んだだけで、そこから恋愛に発展したことはない。
その辺がまた、わたし的カセットの哀愁なのである。
2018.02.27
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