80年代の音楽を語るうえで欠かせないスーパーギタリスト
それにしても、である。2016年の年明け、ミュージシャンの訃報が重なった。このリマインダーで掲載しただけでも、デヴィッド・ボウイ(69)、イーグルスのグレン・フライ(67)、ブラック(53)、アースのモーリス・ホワイト(74)、レインボーのジミー・ベイン(68)、そして松原正樹(61)……
今振り返ってみても、ちょっと多すぎる。4月にはプリンス(57)、12月にはジョージ・マイケル(53)までも旅立った。改めて冥福を祈るとともに、自分自身もより自覚的に生きねばと気を引き締める今日この頃である。
さて、その松原正樹だが、リマインダーのような80年代の音楽を語る場所においては欠かせない人物である。音楽をよく知る人にとっては、林立夫、斉藤ノブ、今剛、井上鑑たちと組んだフュージョンバンド “パラシュート” のギタリストで名が通っているが、当然知らない人も多いだろう。しかし、70年代後半~80年代に10代を過ごした人であれば、絶対に(100%と言っても言い過ぎではない)彼の演奏を耳にしているはず。
歌謡曲系シングル限定、松原正樹セッションベスト10
今回はそれを証明すべく、彼のプレイをランキング形式で紹介してみます。とは言え、あまりにもセッションが多いので(10,000曲を超える!)、1アーティスト1曲縛り、かつ歌謡曲系のシングルに限定した曲を中心に選んでみました。
10位:愚か者 / 近藤真彦
作詞:伊達歩
作曲:井上堯之
編曲:戸塚修
発売:1987年1月1日
井上堯之が弾いているとずっと思ってました、ごめんなさい。
9位:林檎殺人事件 / 郷ひろみ&樹木希林
作詞:阿久悠
作曲・編曲:穂口雄右
発売:1978年6月21日
カッティングかっこいいな~ってずっと思ってましたが、これも彼だったとは。
8位:微笑がえし / キャンディーズ
作詞:阿木燿子
作曲・編曲:穂口雄右
発売:1978年2月25日
キャンディーズの引退曲を盛り上げたのも彼。当時若干24歳、その個性的な音色はすでに完成されていますね。
7位:セーラー服を脱がさないで / おニャン子クラブ
作詞:秋元康
作曲・編曲:佐藤準
発売:1985年7月5日
正直、出番はそんなにありません。だがしかし、Aメロ終わりに忘れられない必殺フレーズが存在!
曲の世界観が一瞬にして伝わってくるギター
6位:カナダからの手紙 / 平尾昌晃&畑中葉子
作詞:橋本淳
作曲:平尾昌晃
編曲:森岡賢一郎
発売:1978年1月10日
まじ!? これもだったのか! と、亡くなってから知りました。ギターで始まるイントロ、この曲で一番印象に残りますよね。
ここまで紹介したナンバーで「あぁ!」とか「えぇ!?」と閃いた皆さん。松原正樹というギタリストの凄さをご理解いただけましたでしょうか。でも、やっと半分。まだまだランキングは続きます!
5位:北ウィング / 中森明菜
作詞:康珍化
作曲・編曲:林哲司
発売:1984年1月1日
サビから始まるイントロでボーカルのロングトーンを受け継ぐギターロングトーン。曲の世界観が一瞬にして伝わってきます。
4位:六本木純情派 / 荻野目洋子
作詞:売野雅勇
作曲:吉実明宏
編曲:新川博
発売:1986年10月29日
なんと言ってもイントロのフレーズ。短いリフ一発で曲全体のノリを決めちゃってますね。
主役を喰う? 松山千春「長い夜」に不可欠なイントロ
3位:さよならの向こう側 / 山口百恵
作詞:阿木燿子
作曲:宇崎竜童
編曲:萩田光雄
発売:1980年8月21日
山口百恵の引退曲を神々しく盛り上げるロングトーン&ギターソロ。出しゃばらずに歌と渡り合う存在感のあるギターを意識して聞いてみてください。
2位:時間の国のアリス / 松田聖子
作詞:松本隆
作曲:呉田軽穂
編曲:大村雅朗
発売:1984年5月10日
80年代の松田聖子作品には殆ど参加しているので、正直全く選べません… なので、ギターリフから始まるイントロで、入門編としてわかりやすい一曲を。アレンジの大村雅朗とはウマが合ってたんだろうなあ。
1位:長い夜 / 松山千春
作詞・作曲:松山千春
編曲:大原茂人
発売:1981年4月21日
このイントロがなければ曲が成立しないでしょう。コクのあるバッキング、間奏、アウトロ、まさに主役を喰う勢いです。
まさに職人芸!存在感を消した存在感
さあ、どうでしたか。既にみなさんの耳の中にあのフレーズが鳴っていませんか? そして、彼のフレーズがなかったら作品として成立しないんじゃないかって曲が多いと思いませんか? これぞまさに職人芸ですよね。
彼自身、自分のバンドやソロでも多くの作品を残していますが、ベースとなる活動は紛れもなくセッションミュージシャン。それは決して矢面に立つ類の仕事ではなく、言うなれば裏方です。当たり前のようにそこにいて、空気のようにその場所に馴染んでいて、いるんだかいないんだか分からない存在感を消した存在感を出しているというか。
そう、彼の名前は知らなくても、彼の魂を込めた演奏はこれからもずっとずっと聴かれ続けることでしょう。それでいいですよね、松原さん… これからも安らかに。
※2016年2月20日、2019年6月27日、2021年6月27日、2021年2月8日に掲載された記事をアップデート
2021.06.27