ニヒルさを鼻にかけた思春期… クリスマスでさえ正直に楽しめない15歳。
恥を忍んで告白するが、ザ・フー生まれザ・キンクス育ちの僕は、ひねくれるだけひねくれた鼻持ちならない高校生になっていた。どうしてもクリスマスソングに馴染めないそんな自分にとって、それでもクリスマスのテーマソングと呼べるものがある。
「サンタクロース、金よこせ!」
―― というサビがなんとも素晴らしい、それこそ、ザ・キンクスが77年に発表した「ファーザー・クリスマス」だ。
この頃のキンクスは、70年代前半から続いた、フロントマン=レイ・デイヴィスの独裁的ロックオペラ路線から離れ、ソリッドな R&R へ回帰しつつあった。その後、彼らは全米で再ブレイクするのだが、その時期に発表された「ファーザー・クリスマス」は、いかにもヒットしそうなポップチューンであり、まさにブレイク前夜という雰囲気だ。特に歌詞のひねくれ具合がなんとも素晴らしい――
デパートの入り口で “ファーザー・クリスマス=サンタクロース” の格好をする「僕」は、「子どもたちのギャング」に襲われる。そして彼らは「おい、金よこせ! おもちゃなんかに騙されるか! お前のパン代をよこせ。おもちゃなど、金持ちのガキにくれてやれ!」とシャウトするのだ。挙げ句の果てには「親父に、職をよこせ!」とまで叫び出す始末。
こんなクリスマスソングを待っていたぞと、一人大喜びしていた記憶がある。そして遂に、僕はこの曲を使ってキンクスの「布教」に取り掛かったのだ。12月の英語の時間は、授業の終わりにクリスマスソングのリスニングをさせるのが恒例だった。
この機会を利用しない手はない!
そして血迷った僕は、英語の教師に“これをかけてください!” と「ファーザー・クリスマス」が収録された86年発売のベスト盤を手に直訴したのだ。優しい先生は、渋々了解してくれた。そして、次の英語の時間。クラスにキンクスが大音量で響いた。
まさに『スクール・オブ・ロック』だな! と一人騒いでいた僕は思いっきり浮いていた… クリスマスの苦い思い出である。
※2016年12月21日に掲載された記事をアップデート
2018.12.19
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