11月1日

エンタメの横顔 — 80年代の音楽シーンを大きく変えた「CD」の登場 ②

30
1
 
 この日何の日? 
ソニーのCDコンパクトプレイヤー第一号(D-50)が発売された日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます

 
 1984年のコラム 
大きな誤解を生んだ「ボーン・イン・ザ・U.S.A.」その向こう側にある真実

9月に聴きたいスタンダード、イアン・マッカロクの「セプテンバー・ソング」

80年代タイヤメーカーCMの充実 〜 洋楽もどきのブリヂストン

恐ろしいほどの輝き、松田聖子の「ハートのイアリング」

充ち溢れる「精神」の歓喜 ― レアグルーヴ、田中浩一

UKインディシーンに舞い降りた天使の歌声~コクトー・ツインズ

もっとみる≫






CDは光ディスク第1世代


CDの出現がいかに大事件だったかという話を、前回(エンタメの横顔 — 80年代の音楽シーンを大きく変えた「CD」の登場 ①)しました。アナログレコードに比べて、圧倒的に取り扱いが楽で、音質も充分な画期的アイテム。私だけでなく、おそらく大多数の人にとってそうだったと思います。なぜなら、CDになってから音楽ソフトの売上げは飛躍的に伸びたからです。

誕生の4年後、1986年には LP の売上げを抜き、1990年にはアナログ時代の最高売上げ約3000億円を、CDだけで超えました。98年の約6000億円をピークに、あとは下降線を辿ることになるのですが。

また、CDは「光ディスク」というものの第1世代でもありました。実は「レーザーディスク」のほうがやや早く登場したのですが、直径12cmという形状も含めて、その後CDR、DVD、ブルーレイディスクなどに発展していく、その原点がCDですから、音楽どころか世の中全体にとって、非常に重要な発明だったわけですね。

ただ何と言っても第1世代ですから、その初期にはいくつか問題もありました。

初期のCDが抱えていた問題とは?


まず、音楽の収録レベルが低かった。デジタルというものは入力オーバーになると歪んだりノイズになるので、オーバーしないように、だいじを取ってレベルを低めにしたのだと思います。CDにはテープのヒスノイズのような雑音はないので、それでも問題ないと判断したのでしょう。原理的には、その分音量を上げて聴けばいいはずですが、どうも、痩せてショボい感じに聞こえます。まだレコードがメインで、CDのマスタリングは “ついで” というレベルだったからかもしれません。

次に、成型がやや甘かったのか、初期のCDには、10年くらい経つと、鏡面、つまりアルミの蒸着膜が剥がれ出すものがありました。剥がれると当然音は出ません。90年代以降のCDは20年以上経ってもそういうことがないので、そのあたりも改善されたのでしょう。

0と1の情報を伝達するだけだから、CDプレイヤーの物理的特性(振動に強いとか、ケーブルが太いとか…)は関係ない、つまり安いプレイヤーでも音質は変わらない、という “怪しい情報” も横行しておりました。メーカー自らそんなことを公言していたような記憶があります。けっしてそうではなく、よりしっかりした作りでより高音質のプレイヤーが、やがてどんどん出てきます。まぁ、私は5万円を切ったポータブルプレイヤー「D-50」で充分満足しておりましたが…。

音楽メディアのスタンダード、盤石のCD時代到来


だけどやがて、それらも笑い話の語り草となります。レコード会社の音楽ディレクターだった私としては、一時期は、アナログレコード、カセット、CDと3フォーマットもリリースしなければならず、工程管理がたいへんでしたが、1988年中にはアナログレコードがなくなり、やがてカセットのリリースも終わりました。CDが音楽メディアのスタンダードとして、確固たる存在となったのです。

今でこそ再びアナログレコードも愛聴するようになった私ですが、80年代の後半から2010年くらいまでは、まったくアナログは聴かず、CDのみ。アナログレコードは、処分こそ面倒だからしなかったものの、もう要らないと考えていました。

原理的にはアナログより音質は劣るCDですが、それはポテンシャルの問題です。そのポテンシャルをいかに引き出せるかは、盤の状態、オーディオ機器&ケーブル、部屋の作り、電源など様々なものが関係してきます。CD登場以前のアナログしかない時代、私はそれほど悪くはない、だけど特によくもないオーディオで聴いていましたが、その環境では、CDはアナログを凌駕する “いい音” でした。

レコードの溝をしっかりクリーニングしてやると、50年以上前のレコードだろうと、新鮮な音が蘇る。あるいは、レコードプレイヤーやカートリッジをいいものにすれば、やはりそれだけ音もよくなる。…私がアナログレコードを再認識したのはそんなことに気づいた最近のことです。それまではCDで充分でした。

落ちていくCDの売上げ、その原因は?


90年代末になって、「SACD(スーパーオーディオCD)」というものが現れました。再生周波数の上限がCDの20KHz に比べて100KHz と、物理的にはCDより遥かに高音質なフォーマットですが、ある時、私は池袋の某オーディオショップで、同じ音源をCDと SACD で聴き比べるという体験をしました。ただしCDのほうは、その店が独自にいろいろ改良した特別のプレイヤーを使用、SACD は市販の、でも高級なプレイヤーです。そしたら、確実にCDのほうがよかったのです。音は再生のしかたしだいだなということと、CDのポテンシャルに何の問題もないことを、改めて認識しました。

SACD はまったく普及しませんでしたが、明らかに分かるほどの音質の向上はないのに、新たにハードを購入する必要があることが、いちばんのネックでしたね。

人々はCD以上の音質を求めていたわけではなかった。ならばその操作性のよさと相まって、無敵のCDの天下はもっと続いてもよかったのに、前述のように、1998年をピークにCDの売上げは急降下していきます。

いちばんの原因とされるのが、ちょうど99年に始まった「ナップスター」という違法配信サービスです。たしかにタイミング的にはピッタリ符合しますが、米国のサービスであり、日本ではそこまで広まっていなかったと思います。またレコード会社の猛反発により、「ナップスター」が3年ばかりで潰されたあとも、CD低迷は止まりませんでした。そこにはいろいろな側面がありそうです。

…つづく。

2020.01.04
30
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1954年生まれ
福岡智彦
コラムリスト≫
23
1
9
8
6
メディアの転換期にリリースされた PiL のアルバム、CD、カセットテープ
カタリベ / ジャン・タリメー
33
1
9
8
2
エンタメの横顔 — 80年代の音楽シーンを大きく変えた「CD」の登場 ①
カタリベ / 福岡 智彦
24
1
9
8
1
ビバ、ロック54!80年代の中高生にカセットテープは欠かせない!
カタリベ / ソウマ マナブ
23
1
9
8
7
中森明菜出演!留守電付きのステレオコンポ「パイオニア プライベートCD」
カタリベ / 時の旅人
38
1
9
8
6
デジタル時代の幕開け、CDの魅力を最大限に引き出した「未来派野郎」
カタリベ / KZM-X
35
1
9
8
8
BUCK-TICK 現象とCDラジカセ・シーディアン、中高生をわしづかみ!
カタリベ / 吉井 草千里
Re:minder - リマインダー