11月1日

エンタメの横顔 — 80年代の音楽シーンを大きく変えた「CD」の登場 ②

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CDは光ディスク第1世代


CDの出現がいかに大事件だったかという話を、前回(エンタメの横顔 — 80年代の音楽シーンを大きく変えた「CD」の登場 ①)しました。アナログレコードに比べて、圧倒的に取り扱いが楽で、音質も充分な画期的アイテム。私だけでなく、おそらく大多数の人にとってそうだったと思います。なぜなら、CDになってから音楽ソフトの売上げは飛躍的に伸びたからです。

誕生の4年後、1986年には LP の売上げを抜き、1990年にはアナログ時代の最高売上げ約3000億円を、CDだけで超えました。98年の約6000億円をピークに、あとは下降線を辿ることになるのですが。

また、CDは「光ディスク」というものの第1世代でもありました。実は「レーザーディスク」のほうがやや早く登場したのですが、直径12cmという形状も含めて、その後CDR、DVD、ブルーレイディスクなどに発展していく、その原点がCDですから、音楽どころか世の中全体にとって、非常に重要な発明だったわけですね。

ただ何と言っても第1世代ですから、その初期にはいくつか問題もありました。

初期のCDが抱えていた問題とは?


まず、音楽の収録レベルが低かった。デジタルというものは入力オーバーになると歪んだりノイズになるので、オーバーしないように、だいじを取ってレベルを低めにしたのだと思います。CDにはテープのヒスノイズのような雑音はないので、それでも問題ないと判断したのでしょう。原理的には、その分音量を上げて聴けばいいはずですが、どうも、痩せてショボい感じに聞こえます。まだレコードがメインで、CDのマスタリングは “ついで” というレベルだったからかもしれません。

次に、成型がやや甘かったのか、初期のCDには、10年くらい経つと、鏡面、つまりアルミの蒸着膜が剥がれ出すものがありました。剥がれると当然音は出ません。90年代以降のCDは20年以上経ってもそういうことがないので、そのあたりも改善されたのでしょう。

0と1の情報を伝達するだけだから、CDプレイヤーの物理的特性(振動に強いとか、ケーブルが太いとか…)は関係ない、つまり安いプレイヤーでも音質は変わらない、という “怪しい情報” も横行しておりました。メーカー自らそんなことを公言していたような記憶があります。けっしてそうではなく、よりしっかりした作りでより高音質のプレイヤーが、やがてどんどん出てきます。まぁ、私は5万円を切ったポータブルプレイヤー「D-50」で充分満足しておりましたが…。

音楽メディアのスタンダード、盤石のCD時代到来


だけどやがて、それらも笑い話の語り草となります。レコード会社の音楽ディレクターだった私としては、一時期は、アナログレコード、カセット、CDと3フォーマットもリリースしなければならず、工程管理がたいへんでしたが、1988年中にはアナログレコードがなくなり、やがてカセットのリリースも終わりました。CDが音楽メディアのスタンダードとして、確固たる存在となったのです。

今でこそ再びアナログレコードも愛聴するようになった私ですが、80年代の後半から2010年くらいまでは、まったくアナログは聴かず、CDのみ。アナログレコードは、処分こそ面倒だからしなかったものの、もう要らないと考えていました。

原理的にはアナログより音質は劣るCDですが、それはポテンシャルの問題です。そのポテンシャルをいかに引き出せるかは、盤の状態、オーディオ機器&ケーブル、部屋の作り、電源など様々なものが関係してきます。CD登場以前のアナログしかない時代、私はそれほど悪くはない、だけど特によくもないオーディオで聴いていましたが、その環境では、CDはアナログを凌駕する “いい音” でした。

レコードの溝をしっかりクリーニングしてやると、50年以上前のレコードだろうと、新鮮な音が蘇る。あるいは、レコードプレイヤーやカートリッジをいいものにすれば、やはりそれだけ音もよくなる。…私がアナログレコードを再認識したのはそんなことに気づいた最近のことです。それまではCDで充分でした。

落ちていくCDの売上げ、その原因は?


90年代末になって、「SACD(スーパーオーディオCD)」というものが現れました。再生周波数の上限がCDの20KHz に比べて100KHz と、物理的にはCDより遥かに高音質なフォーマットですが、ある時、私は池袋の某オーディオショップで、同じ音源をCDと SACD で聴き比べるという体験をしました。ただしCDのほうは、その店が独自にいろいろ改良した特別のプレイヤーを使用、SACD は市販の、でも高級なプレイヤーです。そしたら、確実にCDのほうがよかったのです。音は再生のしかたしだいだなということと、CDのポテンシャルに何の問題もないことを、改めて認識しました。

SACD はまったく普及しませんでしたが、明らかに分かるほどの音質の向上はないのに、新たにハードを購入する必要があることが、いちばんのネックでしたね。

人々はCD以上の音質を求めていたわけではなかった。ならばその操作性のよさと相まって、無敵のCDの天下はもっと続いてもよかったのに、前述のように、1998年をピークにCDの売上げは急降下していきます。

いちばんの原因とされるのが、ちょうど99年に始まった「ナップスター」という違法配信サービスです。たしかにタイミング的にはピッタリ符合しますが、米国のサービスであり、日本ではそこまで広まっていなかったと思います。またレコード会社の猛反発により、「ナップスター」が3年ばかりで潰されたあとも、CD低迷は止まりませんでした。そこにはいろいろな側面がありそうです。

…つづく。

2020.01.04
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カタリベ
1954年生まれ
ふくおかとも彦
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