1999年 12月1日

エンタメの横顔 — 80年代の音楽シーンを大きく変えた「CD」の登場 ④

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 1999年のコラム 
エンタメの横顔 — 80年代の音楽シーンを大きく変えた「CD」の登場 ③

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【エンタメの横顔 — 80年代の音楽シーンを大きく変えた「CD」の登場 ③ からの続き】

CDの致命的欠陥はコピーガードがなかったこと


90年代末、「mp3」という音声圧縮技術、そしてCDから mp3 に簡単に変換することができる「リッピングソフト」が出現し、ファイル交換、あるいはレンタルCDからのリッピングにより、CDの売り上げは急降下していきました。

ですが、mp3 や「ナップスター」やCDレンタル店を責めてもしょうがないでしょう。ナップスターはひょっとしたら確信犯かもしれませんが、より楽しいもの、より便利なものに対する人間の欲望は本能みたいなものだろうし、多くの人たちがその方向に動いたのですから。

前回、「CDの致命的欠陥はコピーガードがなかったこと」だと書きました。ただ、当初はそれを欠陥だとは思っていなかった。思っていたら世に出さなかったでしょう。

CDはなぜコピーガードされなかったのか?


CDに収められている音源ファイルは1曲 50MB 前後。それは、パソコンなんてものが生まれたばかりの80年代初頭の感覚では巨大なデジタルデータでした。たった 10MB のハードディスクが数万円!もしていましたから。そんな大きなデータを個人がどうこうできるなんて、誰にも想像すらできなかった。

…でしょうか? いやいや、技術者には見えていたと思うのです。「ムーアの法則」もありましたから。「1年半毎に集積回路のトランジスターの数は倍になる」ってやつです。それでいくと20年後(2000年)には1万倍以上のデータが扱えることが予想できた。

予想できたけど、対応できなかった? それも違うと思います。「光ディスク」などという革命的な発明ができるような技術力があれば、コピーガードをつけることくらいできたと思うし、mp3 みたいなものだって予測できたんじゃないですか。文化系な私ですからここは適当ですけれど。

もちろん、音楽業界人には見えなかったでしょう。その時点でもコピー行為はありましたが、それはアナログコピー。音楽の長さと同じ時間をかけて、カセットテープなどにひとつだけコピーできる(レコーダーが複数あればその数だけできますが…)、しかも音は確実に劣化するというのどかなもの。コピーガードなんて必要だと思ってないし、できるとも思ってない。

しかし、CDはそれまで存在しない画期的なメディアでしたから、その仕様について、技術陣は音楽関係者から、詳しい説明を求められたでしょうし、しているはずなんです。しかも、CDを発明した SONY は CBSソニー(当時)と関係も深いですし。その中で「コピーフリー」であることには触れられなかったのでしょうか?

これは私の推測に過ぎませんが、技術者には「デジタルコピーされたら音楽が売れなくなる」という発想がなかったのだと思います。「デジタルコピーは劣化もなく、時間もかからず、超便利!」くらいの認識だったのでは? だからコピーガードなど開発しようとも思わなかったし、存在しないものの説明はしなかった…。

レコード会社の愚策、厳密過ぎるコピーコントロール、そしてCCCD


結局、誕生から20年後に、音楽業界はその “欠陥” に気づくのですが、それは mp3 にリッピングされた音源がネットで自由にやり取りされるようになってから。時既に遅しでしたが、その反動でしょうか、その後は過剰なまでに、コピー行為に対して敏感になります。

その最初の表れが前回お話しした、“公式” 音楽配信サービスにおける厳密過ぎる「コピーコントロール」。もっと専門用語だと「Digital Rights Management」、略して「DRM」と言いますが、違法配信に対抗するためにと唱えながら、“タダ& DRM なしで扱いやすい&曲多数” というナップスターなどに、“高い&ガチガチの DRM で扱いにくい&曲少ない” 公式サービスが太刀打ちできるはずがありません。そもそも日本では、コピーフリーのCDが250円くらいでレンタルできるのに。

もし公式も、DRM フリーで曲も万遍なくあって、値段もせめて1曲200円くらいなら、違法とされる行為に若干の罪の意識を感じながらファイル交換するよりは、公式を利用してくれたんじゃないかと思います。

しかし2002年、レコード会社はさらなる愚策に乗り出します。「Copy Controlled Compact Disc」=「CCCD」です。

考え方は分かります。コピーガードがなかったから改めて付けましたと。トラブルが起きてからの後手の対応ということで、格好よくはないですが、しかたありません。ですが、その内容が問題だった。後付けでは他にやりようがなかったのかもしれませんが、音楽CDの仕様を取り決めた「レッドブック規格」に違反し、意図的にエラーを起こさせて、PC では読み取れないようにする方式だったため、再生機器に無理を与えて故障の原因となったり、音質そのものの低下も引き起こしてしまったのです。

音楽業界始まって以来最悪の愚策、CCCD について、もう少しお話ししましょう。

…つづく。

2020.02.07
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あなた
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うそっち
CDにコピーガードが採用されなかった理由は優先順位が低かったからだと思う。
量子化ビット数、サンプリング周波数、ディスクの直径、収容時間など、ソニーとフィリップスの間には考えの相違がたくさんあって、そのすり合わせでお互い手いっぱいで、後回しにできるものの話はしたくなかったのではなかろうか。

ソニーはVHS対β戦争の敗北があって、デジタル音楽の規格の策定を急いでいたはず。
仮に、コピーガードを何とかしなければいかんなぁという認識があったとしても、とにかくまずは他社に先んじて市場に現物を出すことのほうが至上命題で最優先だったのではないだろうか。
2020/02/07 20:24
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カタリベ
1954年生まれ
福岡智彦
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