1月27日

メディアの転換期にリリースされた PiL のアルバム、CD、カセットテープ

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photo:pilofficial.com  

PiL(Public Image Limited. 通称ピル)はほんとうに面白い。

最初のアルバムの題名が『First Issue / 第一弾』
2枚目は缶に入っているから『Metal Box / メタル・ボックス』
それを再発したら『Second Edition / 第二版』

パリでのコンサートは『Paris au Printemps / 春のパリ』
東京でのライブは『Live in Tokyo / ライブ・イン・トーキョー』
その次のアルバムは『This is what you want… This is what you get / これが欲しいんだろ… ほらこれだよ』

究極はそれに続く1986年のアルバムで、収録メディアにより題名がすべて異なる。

LPは『Album / アルバム』
CDは『Compact Disc / コンパクト・ディスク』
カセットテープは『Cassette / カセット』

それで9枚目のアルバムが『9』だから、もう確信犯という他ない。とにかく PiL はシンプルだ。

ヴォーカルのジョン・ライドンがセックス・ピストルズ時代に歌っていた「Anarchy in the U.K. / 英国のアナーキー」、「God Save the Queen / 女王陛下万歳」では皮肉さえ隠さない。「EMI」では契約を破棄したレコード会社への不満をそのままぶちまけた。ファンの期待を裏切って?再結成した際には、金のためだと模範解答をしてくれた。

さて、PiLとの出逢いは1986年、『Album / アルバム』からのシングル「ライズ」のプロモーション・ヴィデオだった。

暴風の中赤く短い髪を逆立てて、瞬きもせず目をひん剥いたライドンのどこか調子はずれな声。盛り上がりのギター・ソロがなく繰り返しの多いリフはスティーヴ・ヴァイ(ほどなくしてホワイト・スネイクで大ブレークした)。

この他の曲も、時に単調でただの8ビートだったりするのに、ずっしり重厚なドラムやベースの音と独特な抑揚をつけた棒読みの唱法がロックでもポップスでもない、名付けようのない音を実現していた。プロデュースは、坂本龍一やミック・ジャガーも手がけていたビル・ラズウェル。

ところで、『Album / アルバム』の発売時期はメディアの転換期にあたる。この頃を境にレコードは廃れCDが主流となり、音楽がデジタル化、均一化された。

LPが主流だった時代に33回転(=LP盤)よりも45回転(=12インチシングル)のほうが音が良いからと、敢えて12インチ3枚組という面倒な形で『メタル・ボックス』を刊行し、大音量で聴くよう促していたPiLの訴えなんて今や誰も想いださないし、いまや MP3で聴く大方の聴衆にはまったく意味がない。

2000年代に入り『メタル・ボックス』は発売当初のような、しかし小型の缶に入ったCDとして再発された。この販売戦略に僕はあきれると同時に、80年代のあの時期ならではの生真面目で一途なPiLの試みを懐かしく想いだす。

2016.07.04
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  YouTube / Jon Parker
 

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カタリベ
1970年生まれ
ジャン・タリメー
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