佐橋佳幸が引き合わせたイルカとスターダスト☆レビュー 昨年(2025年)生誕55周年を迎えた日本クラウンのPANAMレーベル。これを記念して、同レーベルのカタログに残るポップスの名曲を新たな解釈でカバーする企画『PANAM 55/100 SUPER SONG COVERS』が、佐橋佳幸のプロデュースにより展開されている。その第1弾として、南こうせつと藤井フミヤによる、かぐや姫「僕の胸でおやすみ」のリメイクをリリース。また、シティポップの記念碑的な1曲である大貫妙子「都会」を槇原敬之 feat. 大貫妙子という形でリメイクするなど、音楽ファンを唸らせる好企画となっている。
そしてその第6弾として、3月25日に配信限定シングルとしてリリースされたのが、鈴木茂の「8分音符の詩」だ。鈴木茂の楽曲が『PANAM 55/100 SUPER SONG COVERS』で取り上げられるのは、2025年10月8日リリースの「LADY PINK PANTHER」がGOOD BYE APRIL with 南佳孝によってカバーされたのに続き、2回目となる。今回の「8分音符の詩」をリメイクカバーしているのは、イルカとスターダスト☆レビューという組み合わせだ。
初共演とは思えない歌声が重なる「8分音符の詩」 「8分音符の詩」は、鈴木茂が1976年に発表したアルバム『LAGOON』の収録曲。作詞した松本隆が、はっぴいえんど時代の思い出を鈴木に託した歌詞が印象的な1曲だ。今回、意外にも思えるイルカとスタ☆レビの組み合わせは、プロデューサー佐橋佳幸のアイデアによるもの。カバーに当たっては、イルカとスタ☆レビが一緒にレコーディングを行ったそうである。
「要さんが歌われるキーは男の人のキーとしては高い方。私は男の人の高いキーとハモる方が、合うんですよ。今回初めて歌ったけど、全然違和感がなかった」(イルカ)
「イルカさんの声と合わせてみた時に、こんなにも合うんだと思った。ビブラートの感じとか声質とかが合って、すごく楽しくやれました」(根本)
—— イルカと、スタ☆レビのボーカル根本要は、初顔合わせながらいきなり意気投合。初めて組んだとは思えぬほどスムーズにレコーディングを終えたそうだ。スタ☆レビは佐橋のプロデュースでアルバムを何枚も発表しているが、イルカと佐橋はこれが初対面だ。鈴木茂が歌うオリジナルバージョンは、三連のゆったりとしたロッカバラードで、サンバやボサノバなどトロピカル系サウンドで統一されたアルバム『LAGOON』の最後にふさわしいレイドバック感が耳に心地良い。
今回のリメイクカバーについて、ボーカルの2人は口を揃えて “難しい曲だった” と語っており、それゆえ “そのまま素直に歌えばいい” という結論に達したようだ。もちろん、そこにはスターダスト☆レビューのメンバーによる流麗なコーラスも加わる。さらに当初はアカペラで仕上げる予定だったが、根本のリクエストで佐橋のギターも加わった。その結果、2人の温かみにあふれたボーカルが美しく融合し、加えてノスタルジックなムードが全体を覆っているのが印象的だ。
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「なごり雪」から続くイルカと鈴木茂の長い関係 鈴木茂ははっぴいえんど、イルカはシュリークスで、ほぼ同時期にプロとしてのキャリアをスタートさせている。ソロデビューはイルカの方が早く、1974年にPANAMから、ソロシングル第1弾の「あの頃のぼくは」を発表した。鈴木が最初のソロアルバム『BAND WAGON』をPANAMから発表したのが1975年である。2人はレーベルメイトとしても長く交流があった。イルカの代表作である「なごり雪」のシングルバージョンでは、鈴木茂がギターを弾いている。編曲は鈴木と共にティン・パン・アレーで活動していた松任谷正隆であった。
イルカはソロデビュー以降、初期のアルバムでは石川鷹彦や木田高介などのフォーク系アレンジャーに編曲を任せていたが、1980年のシングル「十九の春に」で、鈴木茂が初めてアレンジを手がけた。さらに1981年にリリースした8作目のアルバム『FOLLOW ME』は、表題曲以外のすべての作品を鈴木茂がアレンジしている。
当時のイルカは、前作『我が心の友へ』でオフコースの小田和正に編曲を任せるなど、フォークからポップス、AORへとサウンドを変えていった時期にあった。大人の女性のラブソングを歌うイルカの力強いボーカルに、鈴木のロックテイストの強いサウンド作りが見事に合致し、『FOLLOW ME』は名盤となった。このレコーディングは日本とハワイで行われ、演奏には鈴木のほか、林立夫、後藤次利、松原正樹、松任谷正隆といったメンバーが参加している。特に1曲目「うつろな二人」のキラキラと響き渡るギター・カッティングにはドゥービー・ブラザーズを彷彿とさせるものがある。
50年の時をつなぐ、新鮮さと懐かしさが同居したリメイク 続いて翌年に発表した『JULIA』でも鈴木茂がほとんどの曲のアレンジを手がけ、さらに1986年の『ESSAY』や1989年の『ケサラン・パサラン』でも半数以上の楽曲をアレンジしている。フォーク調やメルヘンタッチの楽曲が多かったイルカが、ロックやAOR的な方向性を打ち出した作品で、鈴木茂のアレンジが効果的に響いたのだ。実はロック好きでもあるイルカの別の側面を引き出したのが、鈴木茂のアレンジだった。そして2022年、デビュー50周年アルバム『うたのこども』でも、20年ぶりに鈴木茂がアレンジャーとして起用されている。
イルカは鈴木茂について “音に対して真剣で、私も大好きな人” と話しており、今回のカバーにあたっても “茂さんの曲ならなんでもいい” と言うほど厚い信頼を寄せている。鈴木もイルカについて “年齢もキャリアも同じぐらいで、とても気持ちが通じ合える” と語っている。そんなイルカの思いと、スターダスト☆レビューの清廉な歌声が重なり合って生まれた「8分音符の詩」は、新鮮さと懐かしい空気感が同居する秀逸なリメイクカバーなのだ。
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2026.09.21