2026年 3月15日

【中森明菜 Best Performance on NHK】映画「国宝」の鷺娘を思わせる凄みの理由とは?

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YouTube「中森明菜 Best Performance on NHK in March, Vol.2」配信日
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中森明菜 Best Performance on NHK in March, Vol.2(2026/3/15配信)

中森明菜のNHK番組歌唱映像が4Kデジタル・リマスターで蘇る『中森明菜 Best Performance on NHK』。2025年4月から毎月2回のペースでお宝映像が公開され約1年。ついにその日が来てしまった。確かにスタートの時点で、2026年3月15日までとアナウンスされていた。いたけど!それは認めるけど!予定変更し、延長することを期待した人も多かったはずだ。

しかしさすがNHKに二言はないようで、今回がラストとなる。しかもフィナーレにふさわしい、明菜姫とさすらいの旅ができるような3タイトル。偶然なのか、ニクイ演出なのか――。勘繰るのは野暮。すぐに映像に飛び、彼女の歌と舞をその目に焼き付けに行こう。ありがとう明菜。ありがとうNHKのお宝映像を残し、美しくよみがえらせた人たち‼

2026年3月15日の配信ラインナップは以下の通り。

▶︎ LA BOHEME
『レッツゴーヤング』1986/3/16放送

▶︎ ロンリー・ジャーニー~サザン・ウインド
『レッツゴーヤング』1986/3/16放送

▶︎ TANGO NOIR
『ヤングスタジオ101』1987/3/8放送

「LA BOHEME」のボブウィッグマジック炸裂!


ちょっと待て待て、いきなり宇宙の旅を思わせる演出!クイーン降臨とばかりにポーズを決め、階段を降りてくる中森明菜の姿は、氷のようでもあり、熱の柱のようでもあり、最高にアバンギャルド!なにより瞳ぎりぎりまで前髪で覆われるボブウィッグがクールだ。言わずもがな、この髪型は「DESIRE -情熱-」で一世を風靡したアレである。歌唱曲「LA BOHEME」は「DESIRE -情熱-」のB面で、作詞家・作曲家が違うにもかかわらず世界観が深くリンクしている。

ボブヘアだけでなく、「♪アアアア!」と伸びる独特のシャウト、見栄を切るような振付にもほんのりと共通点が。おかげで、私たちは「LA BOHEME」を聴きながら、「DESIRE -情熱-」というパラレルワールドを行ったり来たりできる。歌い終わったあと、にっこりと笑う明菜ちゃんのギャップに陥落するのはこの映像シリーズのお決まりである。カワイイ!



白いワンピースを翻し波のように踊る「サザン・ウインド」


「LA BOHEME」と同日の『レッツゴーヤング』で披露された「ロンリー・ジャーニー〜サザン・ウインド 」のメドレーは、同じボブウィッグながら、衣装をゆったりニットのツーピースに変えることで、リゾートモードへのシフトに成功。このあたりの匙加減、さすがセンスの塊の明菜姫である。

シンガーソングライターEPOによる「ロンリー・ジャーニー」は1985年3月リリースの「ミ・アモーレ〔Meu amor é…〕」のカップリング曲。しかしあえて「ミ・アモーレ」ではなく、1984年4月にリリースされた「サザン・ウインド」とのメドレーになっているのは、今となっては貴重。「ロンリー・ジャーニー」の「♪ha… 命を懸けた 逃避行なの」の笑顔からの「サザン・ウインド」のつなぎが神!

ここで『レッツゴーヤング』専属ダンサーであるヤングメイツたちが待ちわびたとばかりに登場し、白いワンピースを翻し波のように踊るのだ。このステージでの開放感は、ヤングメイツがいるからこそ。超絶技巧を持つ著名ダンサーとのコラボももちろんいいが、ユルいバランスのバックダンサーでしか表現できない可憐さがある。中森明菜の表現の見事さと同時に、改めて “伸びしろ系ダンサーズの復活" が恋しくなる映像といっていい。



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危うい凄みさえ感じる「TANGO NOIR」


そして、今回アップされた「TANGO NOIR」は怖い。最初の反りのポーズはもちろん、乱れ髪、細かく震えながら伸びる指先、見え隠れするピンヒール、影までが美しい。まったく隙が無い。美しすぎるものを観ると、人は怖さを感じるのだ。

映像は1987年のもので、この時期の中森明菜は危うい凄みさえ感じる。音楽の中に溶けて、消えてなくなりそうな、もしくは歌の世界に入って戻ってこなくなりそうな―― 。けれどその危うさと儚さがすさまじい光を放つものだから、もっと浴びたいと望んでしまう。鬼気迫る(ちょっと涙ぐんでいるようにも見える)この舞は何かを思い出させる。何だっけ、誰だっけと数日間かけて記憶を掘り起こしたところ、映画『国宝』の吉沢亮さんが踊る鷺娘だった。完璧を求め、自分を追い込んで追い込んで、てっぺんの尖がった先、ギリギリのところに立つ人にしか出せない気迫。多分それが似ているのだろう。

私は中森明菜に引き寄せられ、何度も異世界に迷い込んだ。やさしく誘うように、でも同時に “こっちに来てはならない” と突き放すように舞う彼女は、孤独と向き合い、ひたむきにさまよい人を表現する。だからこそ中森明菜は唯一無二なのだ。



彼女には、勝負曲も勝負ステージもない。なぜなら毎回がそうだから。『NHK紅白歌合戦』といった大きな歌の祭典も、毎週あった『レッツゴーヤング』などの歌番組も、いつだって観ていてハラハラするほど全力で歌い、踊っていた。それを改めて思い出す『中森明菜 Best Performance on NHK』の更新は今回で最後となるけれど、これまで公開された映像は全100本以上。再生ボタンを押せば、明菜に誘われ、私たちは100もの旅に出ることができる。熱くて寂しくて強くて儚い、このうえなく美しい旅に。

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2026.03.25
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カタリベ
1969年生まれ
田中稲
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