BEGIN、36年目のツアーに突入
突然だが、“歌” というものは形がない分、素敵で厄介だ。同じ曲でも、聴く人によって違う感じ方や意味を持って、とっても遠くまで、一瞬で響く。励まされ、癒され、染みわたって。また、流行に乗って人気になればなるほど、キューッとこれまで感じなかった型にはまり、不自由さが出てきたりもする。そんな素晴らしくも繊細な “歌” たちを、縛り付けず、仲良くできたら。彼らのように――。
毎回、そんな風に羨ましくなるのが、石垣島出身のBEGINだ。比嘉栄昇(ボーカル・三線)、島袋優(ギター・ボーカル)、上地等(ピアノ・ボーカル)という幼馴染み3人による音色は限りなく自然だ。寄せる波のようにジワジワと聴きたくなって、砂が水を吸うように心に沁み入り、穏やかな波のように聴きたい欲が押し寄せる。
時には遠くに感じてもいい。聴きたいときにふっと思い出して聴くのもいい。まさに声のおまもりだ。だから、何周年?と考えたこともなかったが、BEGIN、なんと36年目に突入していた。もうそんなに経つのか!
観客席もステージ! 「さにしゃんサンゴSHOW!!」ツアー
彼らのデビュー記念日で36年目突入のタイミング、2026年3月21日。この日は『さにしゃんサンゴSHOW‼ 〜35年目の音楽旅団ツアー〜』の終盤。大阪オリックス劇場でライブが開かれていた。その日のことから少し振り返っていきたい。
Photo:浜野カズシ
毎回、BEGINのライブに来て思うのが、いい意味で、会場が狭く感じるということである。会場のオリックス劇場はじゅうぶん広い。しかしライブが始まると、なんとも心地いい親近感というか、距離の近さを感じ、彼らに直接話しかけることができそうに思えてしまう。待ち構えたように大勢の観客が両手を上げ、3人にぶんぶんと手を振る。そう、“心の” 距離が近いのだ!
1曲目の「防波堤で見た景色」から、まあるく切なく会場を包み込む。この曲は比嘉がニューヨークで書いた曲。ニューヨークで生み出したのは沖縄の曲で、やっぱり自分は沖縄が好きなんだと感じたというエピソードが私は本当に好きだ。遠い地に行った時のほうが故郷愛を思い出すこと、あるある……。
前半には記念すべきデビュー曲「恋しくて」が披露され、心がギュッとなる。さらに印象的だったのは、僕は希望ばかりを歌うのが苦手なんだねと、比嘉が言って「空気いただきます」を歌ったこと。太陽のように明るいBEGINだが、切なさや哀愁とも仲良しだ。彼らにしか出せない、やさしい “日陰” を感じる曲もある。
逆に言えば、ふっと漂う影の部分があるからこそ光の部分が眩しい。後半のお祭り感は圧巻で、客席がザッと立ち上がって踊り出す。一応ステージと客席に分かれてはいるが、もはや心の段差はゼロ。なんだかもう、客席も全部ステージ、みんな主役。躍動感が半端ない。「オジー自慢のオリオンビール」「島人ぬ宝」などが披露され、見渡すと誰もが両手を挙げ、右へ左へと揺らしていた。
Photo:浜野カズシ
きれい!波みたいだ。「♪イーヤサッサ!」と踊り、BEGINの歌に心も身体もまかせて揺らしている。短期バイトで島を訪れた大阪の女性を歌った「ほなバイバイ〜大阪マドロス女~」では、キャラクターの “マルシャンちゃん” が登場。お手本としてガッツリ踊ってくれるもんだから、私も真似をしながら自然に笑ってしまう。楽しい、楽しい、ほろりとする、を繰り返した、笑顔だらけの1日だった。
1990年、「恋しくて」でデビュー
BEGINは1990年3月21日に「恋しくて」でデビューした。『イカ天』(三宅裕司のいかすバンド天国 / TBS系)からすごいバンドがデビューしたと評判になったものだった。デビュー後は「声のおまもりください」や「空に星があるように」のカバーが話題になったけれど、しばらく大きなヒット曲が出なかったBEGIN。
開かれるライブの会場が小さくなっても、むしろ3人は、車1台で身軽に全国を回る旅を楽しんだそうだ。デビュー時から彼らを追っかけている友人とともに、私もその時代はライブに何度か足を運んでいるが、どの会場でもみーんな身体の力を抜いて、BEGINの音を楽しんでいた。
そう、このオリックス劇場のBEGINは、そのときの印象と全然変わらない。会場が狭く感じるのもそのせいだろう。時代や価値観、流行が変わっても、彼らが歌うハコのサイズが変わっても、ファンとの距離感は変わらないのだ。ーー比嘉さんが言う。“楽にしてください。立つも座るも自分で考えて~” ああ、なんとホッとする掛け声なのか!
Photo:浜野カズシ
今年も開催「うたの日コンサート」
1990年代と今で、BEGINが大きく変わったのは、故郷・沖縄の歌を歌うようになった、ということだろう。デビューから5年くらいは、フラットに歌を届けたいとあえて沖縄の歌は封印していた彼ら。それが、新たなフェーズに入ったのは2000年。
「沖縄の曲を作ることをずっと封印してきたから、全国区になるような島唄をつくりたい」
(琉球新報)
と、アルバム『ビギンの島唄 〜オモトタケオ〜』をリリースした。当時から、沖縄の素晴らしい音楽の扉になれたらいいねと3人で話していたそうだが、今、本当にそうなっている。
BEGINの音楽は沖縄に一度も行ったことのない私にも、そこにしかない温かさやざわめき、喜怒哀楽を伝えてくれる。そして『ビギンの島唄 〜オモトタケオ〜』リリースの翌年、2001年から彼らの声掛けにより沖縄で開催しているライブが『うたの日コンサート』。今年は7月4日(6月27日予定だったのが、台風の悪天候により延期)に『うたの日 キャラバン 2026 at 竹富島』と銘打って開催予定。平和コンサートではない。“うたをお祝いする” ことが目的だ。
BEGINを聴けば、いつだって思い出せる。35周年のツアー名にあったあの言葉、“さにしゃん” の大切さを。3人の出身地、沖縄八重山地方の方言でうれしいという意味だ。うたがあればうれしい。そんな、シンプルだけど一番尊い気持ち。これからもBEGINのうたと “さにしゃん” が続きますように。
2026.06.28