バンドの中ではどうしても地味な存在ともいえますが、縁の下の力持ちでもある存在、ドラマー。ヴォーカリストやギターほど特徴や個性を見つけにくいのですが、実に様々なプレースタイルがあるのも事実。プログレ界では変拍子の達人的な人、メタル界ではへヴィなサウンドが醸せる人が重宝されますし、ドン・ヘンリーやフィル・コリンズのように歌えるドラマーも素敵です。
そんな中で私が特に好きなのが “カッコよく叩ける” 人。ステージ上でも後ろのほうにいることが多いのに、その奥の方に目が奪われるなんていいじゃないですか。前置きが長くなりましたが、そんな私が好きな “カッコよく叩ける” ドラマー、それがコージー・パウエルです。
ワイルドで男っぽいルックスも勿論かっこいいし、テクニックも抜群なんですが、なんといってもその叩き方がカッコイイ。映像で見ていただくのが手っ取り早いのですが、「この人絶対ナルシストだろう」と思わずにいられないくらいカッコつけてドラムを叩きます。「カッコつけて」叩くんだけど “カッコ” だけでなくてサウンドも素晴らしい。これは理想的です。
ハイハットの位置をわざと遠くに離してセットしているのではないかと思うくらい大きなアクション(ジェフ・ベック・グループの「Definitely Maybe」参照、キメがしつこい)や、その楽曲に必要なのか考え直したくなるほど目立つツーバス(バスドラが二つあるやつです)、チャイコフスキーの「1812年序曲」をバックにワンマンショー化してしまうドラムソロ、千手観音ならぬ八手観音になったソロアルバム「オクトパス」のジャケット等々。
ネタが豊富でどうしても目立ってしまうコージーさんはなかなか安住の地が見つけられず、バンドを転々とし「スティックを持った渡り鳥」と称されることもあります(下手したらバンドのメインより目立っちゃいますからねえ)。それでもセッションドラマーとして生計を立てるのを主とせず、ちゃんとパーマネントのメンバーとしてバンドに加入するのがまた彼らしいところ(エマーソン、レイク&パーマーならぬエマーソン、レイク&パウエルなんてのも組んでました)。
私がリアルタイムで彼のドラムを聴いたのがマイケル・シェンカー・グループのアルバム「神話」。ギターヒーロー、マイケル・シェンカーに負けないくらいドラムが派手でした。バンドのアンサンブルは大事だと思うのですが、これくらい自己主張するドラム、嫌いじゃないです。当時の私の思い出としては、生で見たコージー。ホワイトスネイクのメンバーとして出演した84年のメタル野外イベント「スーパー・ロック・イン・ジャパン」。
大阪公演を観に行った私が印象に残ったのは、同じく出演したボン・ジョヴィでもスコーピオンズでもマイケル・シェンカーでもなく、ホワイトスネイクのステージでのコージーのドラムソロ(この時はホルストの「惑星」!)でした。盛り上がりきったセット中盤をまたアンコールまでゼロから温めなおすホワイトスネイクのメイン、デイヴィッド・カヴァデールが大変そうでした。
そんなコージーさんは残念ながら98年に自動車事故で他界してしまいます。レーサーへの転向も考えていたほど車やバイクが好きだった彼らしい最期ともいえるでしょう。「すげえスピード出して走ってたんだろうな」と勝手な推測をしてしまうほどのもの、彼の生き様みたいなものが、今思うと彼のプレースタイルに凝縮されていたような気がします。
2016.10.16
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