2021年 5月7日

笑顔が似合う「VAN WEEZER」トリビュートから探るヴァン・ヘイレンの魅力

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セッションワークから探るエドワード・ヴァン・ヘイレンの魅力


エドワード・ヴァン・ヘイレンが亡くなった時、様々なミュージシャンが追悼のコメントを発していて、その影響力の大きさを改めて痛感した。

あれから1年と少しの時間が過ぎた。

そこで、エディの影響力について、今日のコラムでは考えてみたい… と思って、現在におけるヴァン・ヘイレンのフォロワーって誰がいるだろう? と考えてみた。

しかし、いくら考えてみてもフォロワーが思いつかない。逆を返せば、ヴァン・ヘイレンがそれだけ唯一無二な存在ということなのだろう。

と、このままではコラムも終わってしまうので、もう少し他の角度からギタリスト、エドワード・ヴァン・ヘイレンに迫ってみよう。

エディが亡くなったとき、テレビでも随分と報道されたけれど、その時に紹介された映像は「ジャンプ」が一番多かったか。それはヴァン・ヘイレンの最大のヒット曲だし、彼らを最も印象付ける楽曲なので当然のことだと思う。

そして、「ジャンプ」の次に多かったのが、マイケル・ジャクソンと共演した「今夜はビート・イット」だった。この選曲の意図は、“マイケルの知名度とハードロック・シーンのギタリストなのにポップなフィールドでも凄いことやってる人なんですよ” 的な狙いがあったのだろう。しかし、エディが他のアーティストと共演したマテリアルを思い出そうとしても、マイケル以外にはかなかな思い付かない。

「エドワード・ヴァン・ヘイレン セッション」とインターネットで検索しても、出てくる情報は「今夜はビート・イット」ばかり…。そんなわけだが、私の知る範囲のエディのセッションワークのいくつかを聴きながら、ギタリスト、ミュージシャンとしての魅力を探ってみよう。

セッション1:ニコレット・ラーソン~デビュー間もないギタリストとして~


ご存知の方も多いと思うが、ヴァン・ヘイレンのデビューアルバムは当時のワーナー作品の多くをプロデュースしていたテッド・テンプルマンが担当しており、テンプルマンこそ、ヴァン・ヘイレンの育ての親と言われている。

この当時、テンプルマンがプロデューサーとして関わっていたヴァン・ヘイレン以外のデビューアルバムにニコレット・ラーソンの『愛しのニコレット』(1978年)がある。エディは、本作に収録の「あなたのとりこ(Can't Get Away from You)」でリードギターを弾いているのだが、アルバムのクレジットには名前がなく、「Lead Guitar:?」と表記されている。

しかし、エディがギターを弾いていることは周知の事実。本曲で聴けるギターもエディらしい気持ち良いエッジの立った音色がバリバリと鳴っており、エンディングではド派手に好き勝手にやらかしている。

デビュー間もないこの段階から、とてつもない個性と「オレ様がエディ・ヴァン・ヘイレンだぜ!」という存在感抜群のギターを聴かせてくれて、何とも痛快だ。

この共演を仕組んだのも両アーティストに関わっているテッド・テンプルマンであることは明らかだし、レーベルもどちらもワーナーということで、レコード会社のバーターによる共演だったことは間違いないだろう。

セッション2:マイケル・ジャクソン~ロック界を代表するギタリストとして~


前述のとおり、インターネットの検索でもガンガン出てくるマイケル・ジャクソンとの共演「今夜はビート・イット」(アルバム『スリラー』収録、1982年)では、実績も充分の時期でアメリカンロック、ハードロックの両シーンでヴァン・ヘイレンの存在感は大きなものになっていた。

「今夜はビート・イット」のレコーディングにおいて、プロデューサーのクインシー・ジョーンズはエディに対して好きに弾いてオッケーという指示を出しており、エディも自由奔放すぎるギターソロを弾きまくっている。ちなみにソロ以外のギターパートは、こちらも当時、エディと人気を二分していたスティーブ・ルカサーが弾いており、太くて厚みのある、気持ち良い音を聴かせてくれる。

セッション3:LL・クール・J~生きる伝説ギタリストとして~


エディは、2013年にLL・クール・Jのアルバム『オーセンティック』に参加している。この共演、実はあまり知られていないが、LLはアメリカのヒップホップ黎明期から今日に至るまで活躍するスーパースターにして超V.I.P.であることは皆さん、ご存知のことだろう。

本作でエディは2曲でギターを弾いており、特筆すべきは、「ノット・リーヴィング・ユー・トゥナイト」だ。スムースでメローなこれぞLL節といえるナンバーのエンディング近くでエディは、エモーション大爆発のド派手なギターソロを弾いている。

まさしくクールの極みと言える曲調の中に、存在感バキバキのギターソロをぶっ込んでくる瞬間はカタルシス大爆発で、抗いようのない気持ち良さだ。

また、こうしたコラボレーションをマッチングしたLLの手腕も見事としか言いようがない。一見ミスマッチに思えるコラボだが、クールと激エモの組み合わせと対比はかなりハマっており、いつ、どこで、誰と絡んでも自分の個性を発揮できるエディは、間違いなくスーパーギタリストであり、ロックスターだと痛感できる快演だ。

ハードロック、ヘヴィメタル系のコラボがない?


こうして、バンド以外の3つのセッションを見てきたわけだが、ハードロック、ヘヴィメタル系のコラボレーションがひとつもないのだ。

おそらくは、ハードロックやヘヴィメタルのバンドやアーティストの楽曲でエディにギターを弾かせると、あまりにもヴァン・ヘイレンみたいになってしまい、それこそセッションを依頼したアーティストは全く美味しくない結果になってしまうのではないだろうか?

面白いことにエドワード・ヴァン・ヘイレンをハードロックやヘヴィメタルとは別の角度から分析することで、エディのギタリストとしての個性が浮き彫りにされてくる。

また、現行のロックシーンにおいてもエディから大きな影響を受けたギタリストはたくさんいるのだが、そのほとんどは演奏方法、演奏技術における影響で、ギターの音色や破天荒なフレーズ作りにおいて、エディ・フォロワーというのは見当たらないのだ。

一筋縄ではいかないギタリスト、それがエドワード・ヴァン・ヘイレンなのである。

ウィーザー「ヴァン・ウィーザー」でヴァン・ヘイレンを見事にトリビュート


さて、ハードロックやヘヴィメタルから離れることで見えてきたエドワード・ヴァン・ヘイレンの意外性と革新性を現在のロックシーンに照らし合わせてみると、オルタナ世代のアーティストがヴァン・ヘイレンを見事にトリビュートしている作品があることに気づかされる。そこで “これぞヴァン・ヘイレンへの最高のトリビュート” という作品を紹介させて頂こう。

2021年、ウィーザーは、アルバム『ヴァン・ウィーザー』をリリースしている。アルバムタイトルをカタカナで表記するより、アルファベットで表記した方が、よりらしくなるので改めて『VAN WEEZER』である!

ウィーザーは、1994年にデビューしたアメリカのパワー・ポップを代表するバンド。カーズのリック・オケイセックがプロデュースしたデビューアルバムが大ヒットし、現在まで多くの作品をリリースしている。まさに、ポスト・グランジを体現するバンドでグランジが焼き払ってしまったロックシーンという荒野に楽曲重視のポップなギターロックを鳴らすことで、シーンのその先を切り開いた90年代以降のロックシーンの立役者と言っても過言ではないバンドだ。

ボーカルでありソングライターのリヴァース・クオモは、1970年生まれのアラフィフ男、我々と同じリマインダー世代だ。そんな彼らが昨年リリースしたアルバム『VAN WEEZER』は、ヴァン・ヘイレンを筆頭に80年代ハードロックへの限りない愛がヒシヒシと伝わってくるリマインダー世代にはまたらない作品となっている。

リスペクトとユーモアが共存


特に本作からのリードトラックにも選ばれた「ジ・エンド・オブ・ザ・ゲーム」は、ヴァン・ヘイレン大好き気質丸出しのギターサウンドを聴くことができる。イントロのライトハンド奏法からザクザクした音の響き方、曲のブリッジで挿入されるフレーズの暴れ方までホントにヴァン・ヘイレンへの愛が感じられる音作りになっているのだ。

しかし、メロディーラインやリヴァースのボーカルはいつものウィーザー・サウンドが満載で、闇雲にヴァン・ヘイレンに寄せているようなあざとさはこれっぽっちも感じない。きっちりと自分たちの個性の中にヴァン・ヘイレンの要素を取り込むことに成功しており、リスペクトとユーモアが共存する最高のトリビュートに仕上がっているのだ!

現在、アラフィフのメンバーにとって、ヴァン・ヘイレンは、キッズの頃に夢中になったロックバンドであり、アイドルなのだろう。ギター奏法云々よりも “オレ、ガキの頃、ヴァン・ヘイレン大好きだったんだよ!” っていうミーハー気質や憧れが嫌味なく表現されており、こうした純粋な気持ちがヴァン・ヘイレンをリアルタイムで体験してきた私たちだけでなく、ヴァン・ヘイレンを知らない若い世代まで魅了するサウンドを獲得できている秘訣なのではないだろうか?

そんな分析は抜きにしても、この曲を聴いているとたまらなく楽しい気分で笑顔になっちゃうこと間違いなしのゴキゲンなナンバーなのだ!

泣き虫ロック代表選手なんて言われているウィーザーでさえも、最高に笑顔が似合うロックに変えてしまうヴァン・ヘイレン。

そう、エドワード・ヴァン・ヘイレンの最大の魅力は笑顔なのだ! いつもステージでギターを弾きながら見せてくれる最高の笑顔。

コロナ禍を生きる我々が必要としているものは、エディの最高の笑顔なのかもしれない。

残念ながら、今ここに、エディがいないなんてこと、まだ笑うことができないんだけどね。

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2022.01.26
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カタリベ
1972年生まれ
岡田浩史
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