1969年にデビューしたシカゴは「長い夜(25 Or 6 To 4)」の大ヒットの後、「サタデイ・イン・ザ・パーク」や「君とふたりで(Just You 'n' Me)」などを発表し、72年から75年にリリースしたアルバムが5作連続で全米No.1になるなど、米国を代表するロックバンドのひとつにまで登りつめた。しかし、「愛ある別れ(If You Leave Me Now)」を最後に、メンバーの死亡事故やプロデューサーの解雇などによって低迷期に入っていた。
そんな彼らが、80年代に入って突如劇的に復活する。その仕掛け人が、ソングライター兼プロデューサーとして参加したデイヴィッド・フォスターだ。
大ヒット曲「素直になれなくて(Hard To Say I'm Sorry)」で彼は自らピアノを弾き、弟分であるTOTOのメンバー3人(スティーヴ・ルカサー、デヴィッド・ペイチ、スティーヴ・ポーカロ)を参加させた。そして当然のことながら、かつてのシカゴサウンド(ホーンセクションを中心としたソフトロックスタイルで、ブラスロックとも言われた)とは似ても似つかない、まるでTOTOのようなサウンドに仕上がったのだった。
当時、この手の話は掃いて捨てるほどあったが、それも当然だ。TOTOメンバーのようなスタジオミュージシャンの方が技術的にはるかに上だったし、時代に合った音を出せたからだ。そのことに気づいた音楽関係者達は、何かにつけて彼らに声をかけ、彼らは「呼ばれたらどこへでも行く」職人気質でそれに応えた。その結果、80年代前半のヒットチャートは、「同じ人間が演奏する似たようなサウンド」に埋め尽くされることになった。
これらは、アーティストのアイデンティティと楽曲のクオリティがトレードオフ(一方を追求すれば他方を犠牲にせざるをえない関係)になる、典型的な例なのかもしれない。しかし、当時まだ10代だった僕は「自分のバンドの曲を他人が演奏しているなんて残酷すぎる」と、悲しい気持ちになっていたのであった。
Song Data
Chicago / Hard To Say I'm Sorry
■ 作詞・作曲:Peter Cetera・David Foster
■ プロデュース:David Foster
■ 発売:1982年(昭和57年)5月12日
脚注:
■ Chicago
「25 Or 6 To 4」(70年9月12日4位)
「Saturday In The Park(72年99月23日3位)
「Just You 'n' Me」(73年12月8日4位)
「If You Leave Me Now」(76年10月23日1位)
「Hard To Say I'm Sorry」(82年9月11日1位)
2016.04.11
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