4月25日

伊藤銀次が語る「BABY BLUE」② 横尾忠則が手掛けたアルバムジャケットの魅力!

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photo:SonyMusic  

伊藤銀次のピクチャージャケット「BABY BLUE」は横尾忠則!


80年代に入っていきなり大ブレイクした我が師、大瀧詠一さんの『A LONG VACATION』のヒットは、もちろんそのナイアガラ印のポップスが素晴らしかったことはいうまでもないが、なんといっても本人がアルバムジャケットには登場せず、永井博さんが描くトロピカルなイラストによるイメージジャケットがとても新鮮だったからだとも思うのだ。



僕の82年リリースのアルバム『BABY BLUE』のレコーディングが大詰めにさしかかったとき、スタッフミーティングで、このアルバムのポップ感を活かすために、このロンバケのように、銀次自身の写真を使わないでイラストで行こう、ということになった。そしてそのとき名前の上がった何人かのデザイナーの中に、なんと横尾忠則さんの名前があったのだ。

「えっ? 横尾さん?」

―― 横尾さんというと、その頃の僕には、サイケっぽかったり、シュールだったりした70年代の横尾さんの作品の印象が強くて、そのギラッとした感じがはたして、この『BABY BLUE』のサウンドの質感に合うのだろうかと一瞬クエスチョンマークが頭に浮かんだのだが、「いや、横尾さんはジャケットも描いてて、最近はまたちがう感じでステキなんだよ」というスタッフの強い薦めがあった。

そしてサンタナの『アミーゴ』など彼のデザインしたものを見せてもらうも、「う~ん大丈夫かなあ? 合うかなあ?」という戸惑いが。おっと、それよりも引き受けてくださるだろうか… などと思いながらも、とりあえずお願いしてみることにした。



まさに絵画! ポップな質感を見事に表現


と、なんと、快く引き受けてくださったとのこと!! おお、アンビリーバブル!! 横尾さんは『BABY BLUE』を聴いてどんなデザインを考えてくださるのだろうか? ワクワクしながら待っていたら、アルバムの最後の工程で忙しくしていた頃、ついに横尾さんの絵が手元に届いた。

それはアルバムジャケットというより、まさに絵画だった。『BABY BLUE』の “青” を基調にした繊細だけれども大胆な、これまで僕が勝手に横尾さんの作品に思い描いていたイメージとはまったく異なった素晴らしい一枚の絵画だったのだ。

あのアルバムの中にある底抜けには明るくはないけれど、そこはかとない暖かさのやわらかでポップな質感を見事に表してくださっていた。横尾さんがこんなにステキな絵を描てくださったなんて、そのときはホントなのかすぐに信じられないくらいに嬉しかったよ。

心に響く言葉 “芸術はすべからく偉大なるシロウトによるものです”


後日、横尾さんが油絵の個展を開かれているというので、お礼に伺うことにした。もう40年近くも前のことなので、なんという画廊だったかすっかり忘れてしまったけれど、そこに飾ってあった壁一面くらいの大きな油絵に、思わず息を呑んだことを今でもはっきり思い出す。

まるで山脈のように力強く盛り上がった絵の具の迫力。間近に見る横尾さんの絵は、それまでのポスターで見ていた作品とは大きく異なる、カンバスから飛び出てくるような立体感を感じることができた。それもただ綺麗に描かれているのではなく、絵の具を投げつけたような、塗りたくったような乱暴で大胆な描き方に心をすっかりつかまれてしまった。

そのときそこで、横尾さんと確かビートルズの話になって、“偉大なるシロウト” について語り合ったような記憶がある。

「芸術はすべからく偉大なるシロウトによるものです」

―― とはっきりと言い切っておられた横尾さんの言葉は今も僕の心にずっと響き続けているものだった。

以降のピクチャージャケットは、原田治、秋山育、日比野克彦…


アルバム『BABY BLUE』は、おかげさまで1977年リリースの僕のデビューアルバム『DEADLY DRIVE』をはるかに超えるセールスをあげることができた。そして裏方としてではなく、表舞台でのアーティスト活動をまた始めることができるようになったのだが、それにはこの横尾さんの描いてくださったアルバムジャケットが大きく貢献してくれたのだと思う。

横尾さんによるこのジャケットが好評だったのでこの後、次の『SUGAR BOY BLUES』では原田治さん、『STARDUST SYMPHONY』では秋山育さん、『WINTER WONDER LAND』では日比野克彦さん… というふうに、さまざまなデザイナーにピクチャージャケットを描いていただくことに。その先鞭が横尾さんだったのだ。

「横尾さん、すばらしい絵をありがとう」

あらためて今、感謝の言葉を言わせてください。





※2020年3月30日に掲載された記事をアップデート

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2022.11.23
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カタリベ
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