5月14日

岡田有希子「花のイマージュ」かしぶち哲郎が手掛けた幻のシングル!初のアナログリリース

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岡田有希子デビュー40周年!7インチシングル・コンプリートBOX 発売記念コラム vol.9

A面:花のイマージュ
作詞:かしぶち哲郎
作曲:かしぶち哲郎
編曲:かしぶち哲郎
B面:秘密のシンフォニー
作詞:麻生圭子
作曲:大貫妙子
編曲:かしぶち哲郎

コーディングもジャケット撮影も済んでいながら世に出なかった「花のイマージュ」


岡田有希子デビュー40周年を記念した『7インチシングル・コンプリートBOX』がいよいよ8月22日に発売される。当時発売されたアナログ7インチ盤(いわゆるドーナツ盤)をジャケット含め復刻したもので、嬉しいのはこれが “9枚組” ということだ。

ユッコが発表したシングルは「ファースト・デイト」から「くちびるNetwork」までの全8枚だが、レコーディングもジャケット撮影も済んでいながら世に出なかった1枚がある。本来なら1986年5月14日にリリースされる予定だった「花のイマージュ」だ。

この曲、当時ユッコが出演していたラジオ番組でも先行公開されていたので、ファンは発売を心待ちにしていた。とはいえ、発売中止はあのときの状況を考えるとやむを得なかっただろうし、そこを “商売” にしなかった判断もアーティストに対する敬意である。だがその一方で、発売を願って署名運動までしたファンの気持ちもすごくわかる。結果的にこの曲が “幻の名曲” になってしまったことが、私には正直もどかしかった。

本来の発売日から38年が経過した今、アナログ7インチ盤をリリース


後年、熱い要望に応えて「花のイマージュ」はCD化されたが、レコードは出ていなかった。だから、本来の発売日から38年が経過した今、ジャケット込みでポニーキャニオンから “正式に” アナログ7インチ盤がリリースされることは非常に感慨深いものがある。このレコードに針を落とした瞬間、思わず感極まってしまう人もいるはずだ。わかる、よーくわかりますよ、その気持ち。

ただ私は、当時からのファンだけでなく、むしろ普段サブスクで音楽を聴いている10代・20代・30代の方々にこそ、この曲をぜひアナログレコードで聴いてもらいたいと思う。“え、曲は同じでしょ?” と言うかもしれないが、“質感” が全然違うのだ。もちろんCDにはCDの良さがあるけれど、レコードで聴くとボーカルの帯域は、よりその歌声の魅力が増すことも多く、歌手としてもこれから飛躍しようとしていたユッコの歌をより生声に近い形で聴くことができる。



作詞・作曲・編曲をすべてを手掛けているかしぶち哲郎


アナログ盤で聴いてほしい理由はもう1つある。「花のイマージュ」は、(本来なら前作にあたる)ラストシングル「くちびるNetwork」で編曲を担当したかしぶち哲郎が、作詞・作曲・編曲のすべてを手掛けているからだ。

かしぶちは鈴木慶一率いるムーンライダーズのドラマーである。才人ぞろいのライダーズだが、彼も自分で詞・曲が書けたので(ソロ曲もある)バンドでの活動とは別に、映画・ドラマの劇伴やCMなども手掛けていた。言うまでもなく、音にはものすごくこだわるミュージシャンだ。

また、かしぶちは、女性シンガーへの楽曲提供も積極的に行っていた。石川セリ、中原理恵、斉藤由貴にも佳曲を提供。いずれも “表現力で聴かせるシンガー” であり、岡田有希子もまた、かしぶちが特に力を入れた歌手だった。だからこそ、今回のアナログ盤発売は大きな意味がある。1986年当時の音楽メディアはまだレコードがメインであり、かしぶちは聴き手がレコードで聴く前提で音作りをしていたからだ。

さらに今回のシングルレコード初復刻においては、レコードというフォーマットの魅力を最大限に発揮することを目標に制作。デジタルフォーマットで聴かれることを前提に調整したハイレゾマスター音源ではなく、再度オリジナルのシングルマスターに改めて遡り丁寧な微調整を重ね、新たに原盤ラッカーのカッティング制作を行っているそうだ。オリジナルリリース時の魅力は活かしつつ、より緻密なニュアンスや質感も向上したレコードの制作が行われているという。

かしぶちは、ユッコのセカンド、サードアルバムにも楽曲を提供しているほか、傑作の誉れ高いシングル第7弾「Love Fair」の作詞・作曲も手掛けている。「花のイマージュ」以前のかしぶち提供作品については、今回の岡田有希子特集「Love Fair」の中で鈴木啓之氏が詳しく書かれているので、そちらを参照していただきたい。

「花のイマージュ」には原曲があった


かしぶちがユッコにいかに思い入れがあったか、それはこんなエピソードでもわかる。実は「花のイマージュ」には原曲があって、かしぶちが高校生のときに作曲した「Piano No.13『夜明け』」という曲だ。この曲は、2009年にリリースした彼のソロアルバム『LE GRAND(ル・グラン)』の初回BOX盤に収録されている。「花のイマージュ」よりもスローテンポで、どこかもの悲しい感じのする2分45秒のピアノ弾き語りだ。

かしぶちにとってはおそらく「いつかちゃんとした形で世に出そう」と考え、長年温めていた楽曲だったと思われる。その大事な曲を、岡田有希子がさらなる高みに昇るための曲として提供したのだ。サビの歌詞は実に情熱的だ。

 あぁ 愛し合いたい バラになりたい
 彼の腕に抱かれて

 あぁ 見つめられたら めまいの季節
 恋は 花のイマージュ

“イマージュ” はフランス語で、英語の “イメージ” と同義。冒頭の歌詞「♪恋化粧 ルージュにキッス」と呼応させているのだろう。ちなみに、“ルージュ” はフランス語で “赤 → 口紅” の意味だ。

このサビの前に「♪いたずらに ブラウスの プティ・ボタン はずしてみた」というドキッとするフレーズもあり、歌詞だけ読むと、松田聖子が書いた「くちびるNetwork」以上に艶っぽい感じもするが、そこはさすが岡田有希子。ちゃんと “ユッコ流” に変換し、ピュアな歌声で歌っている。結果、愛する人への秘めた情熱がまっすぐに伝わってくるのだ。むろん、そうなることを見越してかしぶちは曲を書いているのだが、この阿吽の呼吸は、過去の提供作品で築き上げた2人の信頼関係のたまものだ。

恋する女性を “花” に喩えたところも、いかにもかしぶちらしい。ムーンライダーズの楽曲における耽美的な部分をかしぶちは担っていたけれど、かしぶち作品において、はかなくも時に情熱的な “花” は重要な要素である。中でもバラは、かしぶちがこよなく愛した花だった。

ようやく、あの曲を歌うのにふさわしい歌手に巡り会えた


振り返ってみると、かしぶち提供作には他にも “花” が登場する曲がいくつかある。これはあくまで私の想像だけれど、かしぶちはユッコと仕事をするうちに、彼女の内面に秘められた、燃え上がるようにまっ赤な “バラ" を見たのではないか。“ようやく、あの曲を歌うのにふさわしい歌手に巡り会えた…” 作詞・作曲・編曲を手掛け、この曲へ全力を注いだかしぶち。それだけに、本曲が発売中止となったことは、本当に落胆したことと思う。

かしぶちは2013年暮れに、63歳で惜しまれつつこの世を去った。元気であればたぶん、今回のリリースをことのほか喜んだことだろう。年の差を超えて “歌による情熱の表現” というところで通じ合ったユッコとかしぶち。だからこそこの曲は、可能ならぜひアナログ盤に針を落として聴いてほしい。なお今回のBOX盤に収録されたアナログ7インチはカラー仕様で、「花のイマージュ」の盤はジャケット写真に合わせ、ピンクのバラを彷彿とさせる色になっているのも嬉しいところだ。



幻のラストシングル「花のイマージュ」の初アナログリリース含む、全7インチシングル9枚を収録したコンプリートBOXセット。各ディスクに、別カラーを使用したカラーヴァイナル仕様でリリース! 詳細はこちらから。

2024年8月22日発売      
品番:PCKA-18
価格:¥19,800(税込)
限定生産商品

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2024.08.18
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あれから38年。いつもの通り私は日曜の深夜に「夜遊びしナイト」を聴き、ゆっこが卒業することにがっかりしながらも、新曲にはとても期待感を抱いていました。既にアルバム「ヴィーナス誕生」で全曲編曲を手掛けていたかしぶちさんが作った曲。イントロからインパクトがあり、めくるめく”かしぶちワールド”が繰り広げられる歌詞。「Love Fair」では多少の違和感を覚えましたが、今回は大いに納得しました。3年目はこの路線で勝負するんだと。私は録音したカセットテープを繰り返し聴き、機会があれば歌うつもりで歌詞も覚えて、新入生オリエンテーションに旅立ったのでした。

あれから38年。こちらは年を取ってしまいましたが、ゆっこは今でも18歳のまま。いつまでも心の中に生き続けています。
2024/08/18 21:33
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カタリベ
1967年生まれ
チャッピー加藤
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