80年代に音楽を聴いていた人の口から必ず出るのがビルボードとMTV。日本ではラジオの深夜番組『全米TOP40』と小林克也の『ベストヒットUSA』。怠け者の私には今の人の情報源など皆目見当もつかないのですが、とにかく当時はみんなが夢中でした。
土曜の夜になると、眠い目を擦りながらヒットチャートに耳をそばだてる… と書くと、いかにもヒット曲に敏感だったように聞こえますが、ランキング上位に食い込めずタイトルが読み上げられる背後で数秒流れるだけの曲に興奮し、新たなアーチストを発見するのが結構好きでした。
本コラムでも「最高位2位の妙味!」とか、「一発屋」として紹介されるような曲は、それでも高位についたのです。対して、そこそこ上昇したと思いきや翌週には落ちていく「数秒の曲」なんてのが数多ありました。
マドンナだって後に「ライク・ア・ヴァージン」の快進撃があったからこそトップスターですが、「ホリディ」や「ボーダーライン」なんかは全米チャートをのっそり上昇しながら、トップ10に届くか届かないうちに再び後退していったので、ラジオで長々と流れることはなかったと思います。
10位以内に入っても最高位が6位、7位あたりだとそんな感じですぐに忘れられてしまいます。
本サイトで私が書いたコリー・ハートの「サングラス・アット・ナイト」は7位どまりでした。アウトフィールドというバンドの「ユア・ラヴ」もそんな曲の一つです。
大ヒットでもないのに、なぜかアルバムが私の棚にありました。ギターとベースとドラムのシンプルな3人組。ストレイ・キャッツを想わせつつ、あんな癖もロカビリー色もない。同じギターサウンドでも少し後のザ・ストーン・ローゼズのような妖しさはなく、晴朗・明快ひねりなし。さらにアルバム全曲が似たり寄ったり。でもこれは私の興味が失せたからです。私には、興味が無いものすべてが同じに聞こえてしまうのです。演歌とか。今後興味が持てる日が来ることを願ってやみません。
なぜどこで購入したのかまるで思い出せません。痴呆の始まり、記憶の抑圧、去る者は日々に疎し。アウトフィールドの曲が何位までいったのか、他にアルバムがあるのか、果てはこんなバンドが存在したのかどうかすら確信が持てません。
でもそんな忘却のおかげで、再発見に小躍りしました。こんなシンプルでノリノリなギター演奏を、CDが売れなくなりライブ人気が甦りつつある今でこそ生で聴きたいという衝動に駆られたのです。そこで少し調べたら2014年に中心メンバーが亡くなっていました。
やはり不義理にはそれなりの対価がつきまとうようです。
2018.01.07