洋楽ロックを聴きあさっていた私がジャズやフュージョンを聴くきっかけになったアーティストはスティーリー・ダンでした。
アメリカの有名セッションメンやジャズミュージシャンが大挙参加していたスティーリー・ダンのアルバム『彩(Aja)』、『ガウチョ』が大好きだった私がそのセッションメンに興味を覚えるのは至極当然の流れだったのですが、まずデイヴィッド・サンボーンのアルバムに手を出したことは、ジャズ・フュージョンの世界に一歩踏み出すのに非常に好都合となりました。
マーカス・ミラーが大きな働きをするデイヴィッド・サンボーンの80年代の諸作にはロックファンでもハマりやすい魅力のポイントがいくつかあります。
■メロディーの輪郭がわかりやすい
■メロウなバラードがアルバムに数曲含まれる
■ジャズというよりブラコン、AORの雰囲気
■マーカス・ミラーと共にソリッドなハイラム・ブロックのギターが定着
そして80年代に関わらずデイヴィッド・サンボーンだけが奏でることができる彼特有のサックスの音色がいちばんの武器です。
声に例えるとハスキーとでも言いましょうか、いい枯れ具合なんだけど力強いブロウ。音の輪郭をはっきりと紡ぎながらもビブラートが実にメロウ。クセのある音かもしれませんが、ハマると抜けられません。なんか本当に歌ってるみたいなんです。さらには彼の最初のキャリアがブルースやロックだったというのが私のようなロック耳にフィットしたのかもしれません。
彼が最初に加入したのはポール・バターフィールドのバターフィールド・ブルース・バンド。70年代の中ごろからはロックやジャズの大御所たちのアルバムに参加。なかでも印象深いのがデヴィッド・ボウイの『ヤング・アメリカンズ』。
ボウイが独自のファンクネスを展開したこの作品でのサンボーンのサックスはかなり重要なファクターだったと言えましょう。75年から自身のリードアルバムを発表し始めますが、本領を発揮したのは前述の通り80年代。このころTVの音楽番組のホストなども務め人気を博しました。
既にかなりのアーティストの作品に参加してましたから交友関係も広い。番組側のスタッフにとっても、サンボーンに友人を紹介してもらうだけでミュージシャンがキャスティングできるから、さぞかし重宝されたでしょう。そんな彼の80年代作品は全て素晴らしいですが、特に私のおススメを3枚紹介しましょう。
『ささやくシルエット(As We Speak)』(1981年)
まるでボビー・コールドウェルの邦題のようですが(ジャケットも!)、実際にAOR色の濃い作品。映画『フラッシュダンス』の「マニアック」でもお馴染みのマイケル・センベロが作曲にギターにヴォーカルと大活躍です。
そんなマイケル・センベロによるヴォーカル曲2曲に加え、ミラー作の「ストレイト・トゥ・ザ・ハート」やサンボーン作「雨のクリスマス(Rain On Christmas)」など人気曲を収録。アルバム全曲、美メロ満載の大変聴き易いアルバムです。
『ストレイト・トゥ・ザ・ハート(ライヴ!)』(1984年)
初のライヴ盤ですがスタジオライヴ。やや軟派なイメージに見られがちなサンボーンですが、パンチのある骨太なライヴです。スタジオライヴというのが適度な緊張感を生んでいるのかもしれません。アヴェレイジ・ホワイト・バンドのヘイミッシュ・スチュワート(後にポール・マッカートニーのツアー・メンバーとしても活躍)が歌うアル・グリーンの「ラヴ&ハピネス」も素晴らしい。当時映像版も発売されてました。
『ダブル・ヴィジョン』(1986年 / ボブ・ジェームスとの共作)
当時人気絶頂だったフュージョン界の2大スターによる共演ということで話題になりましたが、中味の方は大人っぽい、落ち着いた作風となりました。ここでもマーカス・ミラーのサポートが光りますが、トミー・リピューマによるプロデュースによって全体的にクールにまとめあげられてます。派手さに欠けるものの、聴けば聴くほど美しいメロディラインが沁みてくるまさに時代を代表するフュージョンの名盤です。
80年代がピークだったとはいえ90年代以降も精力的に活動を続けているサンボーン。最近は再びマーカス・ミラーと組んでアルバムを発表するなどファンを喜ばせてくれてます。
ジャズであり、ソウルであり、そしてロックな彼のスタイルを引き続き応援したいと思います。
2018.03.01
YouTube / Jeremy Johnson
YouTube / bowerwilkins2
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