いわゆる団塊ジュニア、その昔 “いちご世代” と呼ばれていた!
いきなりだが、“いちご世代” という呼称を覚えている人はどれくらいいるだろうか?
実は、世代ごとの呼称には色々ある。どんなものがあったか、以下にちょっと例を挙げてみよう。※諸説あり(以下、カッコ内は生まれ年)
■ 団塊の世代(1947~1949)
■ しらけ世代(1950~1964)
■ 新人類世代(1961~1970)
■ バブル世代(1966~1969)
■ 団塊ジュニア(1971~1974)
■ ポスト団塊ジュニア(1975~1979)
■ ミニマムライフ世代(1980~1988)
■ ゆとり世代(1987~2004)
世代ごとにネーミングがあるというのが、いかにも分類好きな日本人らしく、それらの呼称の節々に、“しらけ” であったり “ゆとり” であったり、皮肉的意味合いが込められているのもまた日本的な感じがする。1972年生まれの僕は、団塊ジュニア世代ということになる。
団塊ジュニア世代… 実はこの世代はその昔 “いちご世代” という可愛らしい呼ばれ方をされていた時期があった。第2次ベビーブームで人口が多いこの世代が15才を迎え、購買力を持ち始めた1980年代後半の頃、マーケティングプロデューサーの辻中俊樹氏がこのゾーンの塊を “いちご(15)世代” と命名したのが由来らしい。当時この、いちご世代というキーワードは雑誌媒体を中心に、ちょくちょく飛び交っていた覚えがある。
そういえば、『15(いちご)はドキドキ ピンクコング』などというラジオ番組もあった。西村知美、仁藤優子、渡瀬麻紀、男闘呼組といったアイドルが出演していたこの番組は、タイトルのとおり15歳前後の中高生にターゲットを絞った内容で、当時、楽しみに聴いていたリスナーも多かっただろう。
80年代後半の歌姫、いちご世代の4番打者~渡辺美里
ところで、この世代のど真ん中だった僕は、高校生の頃、自分がいちご世代であることを自覚していた。そして、“いちご世代が聴きそうな音楽” を自分の中でイメージして、CDショップで色々物色していたのだ。よく読む雑誌が、『月刊明星』から『PATi-PATi』に変わったのもこの頃だ。佐野元春、レベッカ、大江千里、小比類巻かほる、岡村靖幸、エコーズ… あれ? なんだかレーベルに偏りがあるぞ…。
その中で当時僕が、いちご世代が聴きそうな音楽で打順を組んだ際、勝手に4番打者に位置づけていたのが渡辺美里。ファーストアルバムの『eyes』が発売されたのは1985年の10月2日。ちょうど80年代前半の歌姫、松田聖子が結婚で休業モードに入り、その空いた席を埋めるようなタイミングだった。
その後、8年連続でアルバムチャート1位を獲得した彼女は、記録面でもまさに80年代後半の歌姫に成長。そんな彼女がいちご世代から多くの共感を集めた要因は、ロックなのに厳つくなくて可愛い!というビジュアル面もあったと思うが、深読みすると、男女雇用機会均等法が制定された時代背景(1985年)と関係ありそうだ。
“少女と乙女の微妙な境目” ならぬ “少女と大人の微妙な境目”
思えば、80年代前半の歌姫である松田聖子は、歌の中でどこまでも “女優” だった。
靴の底には砂がつまって痛いから
逆さに振れば二人だけの夏がこぼれるわ
(マイアミ午前5時 / 松田聖子)しかし、80年代後半の歌姫、渡辺美里の歌からは、女優を演じている意識はあまり感じられない。性差を超えて、ひとりの人間として時代と対峙するような覚悟が伝わってくる。
工事現場には新しいビルディング
じっと待つだけじゃダメさ
街はさりげなく教えてた
歩き続けていけそうよ
(eyes / 渡辺美里)“少女と乙女の微妙な境目” を表現する天才だった松田聖子に対し、渡辺美里は “少女と大人の微妙な境目” を表現していて、そこに、女性の社会進出という時代背景も相まって、彼女は80年代後半、同世代から多くの共感を集める存在となったように思う。
やがて、世は歌につれ… と言うべきか、2000年代初頭には世間では女優を俳優と呼び、看護婦を看護師と呼ぶようになっていく。逆に、歌は世につれ… なのだろうか、少女と乙女の微妙な境目を表現していた古典的アイドルは、だんだんと絶滅に近い状況となっていった。
団塊ジュニア=いちご世代→氷河期世代→人生再設計第一世代!
さて、いちご世代だった僕達団塊ジュニアは、90年代には氷河期世代と呼ばれ、ついに2019年、“人生再設計第一世代” という微妙な呼称を頂戴した。こういったネーミングが登場するというのは、年功序列制度の行き詰まりとか様々な要因で、再設計を余儀なくされている、そんな人達が世の中に溢れているということなのだろう。
やれやれ、難しい時代になったものだ。そんな重苦しい気分で窓の外を眺めていた時に、ふとアタマの中で流れてきたのは、僕がまだいちご世代だった頃に、ヘビーローテーションで耳にしていた、美里の「GROWIN’ UP」だ。
本当の私をさがしたいの
生きるって自分を燃やすこと
振り向いて悔やんだりしたくない
昭和の終わりに近い頃、渡辺美里が発信していたメッセージは、30余年の時を越え、僕の心にそっくりそのまま到達している。強い生命力を持つ彼女の歌声は今でも新しい。
狙うは逆転満塁ホームラン! 代打の切り札「eyes」
そして、僕があの頃勝手に “いちご世代の4番打者” に位置づけていた、渡辺美里のファーストアルバム『eyes』は、令和の今、“人生再設計第一世代の代打の切り札” として、この部屋のCD棚のネクストバッターズサークルに鎮座している。
GROWIN’ UP!GROWIN’ UP!
MY DREAM 心に FIGHT!
感じて GROWIN’ UP
そう、狙うは勿論、逆転満塁ホームランなのだ。
※2019年10月2日に掲載された記事をアップデート
2020.07.12