1月22日

EPICソニー名曲列伝:渡辺美里「My Revolution」エピック黄金時代がやって来た!

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photo:SonyMusic  

EPICソニー名曲列伝vol.13

渡辺美里『My Revolution』
作詞:川村真澄
作曲:小室哲哉
編曲:大村雅朗
発売:86年1月22日

この連載「EPICソニー名曲列伝」を俯瞰するならば、第1回で取り上げたEPICソニー初の邦楽ヒット=ばんばひろふみ『SACHIKO』が「ホップ」、EPICソニーの方向性を決定付けた佐野元春『SOMEDAY』が「ステップ」、そしてこの曲をもって「ジャンプ」となるだろう。

つまりこの曲は「EPICソニー黄金時代」の到来を意味する。「黄金時代」とは、EPICソニーが音楽マーケットのど真ん中に駒を進めたということでもある。

その分、この曲には、佐野元春ほどのラディカリズムはない。また大沢誉志幸ほどスタイリッシュではない。でもその分、佐野元春や大沢誉志幸の作品には無い、音楽マーケットのど真ん中に分け入った楽曲だけが持ち得る、あるキラキラとした輝きのようなものがある。

ここで言う「音楽マーケットのど真ん中」を構造的に語れば、歌謡曲とニューミュージックとロックの真ん中ということになる。それぞれから等距離で、かつそれぞれの要素をうまくすくい取った音楽。

70年代までは、そんな音楽は無かった。しかし、佐野元春や大沢誉志幸、さらには大江千里やラッツ&スターなど、EPICソニーの音楽家たちによる不断のチャレンジによって、その場所に黄金郷が作り上げられた。この曲が放つキラキラとした輝きとは、つまりはその黄金郷の輝きである。

黄金郷は、EPIC の黄金時代を生み出し、そして90年代になって「Jポップ」と名付けられることになるのだが。

という、重要な意味を持つ楽曲=渡辺美里『My Revolution』について。私は様々な本で語り尽くしてきた。『イントロの法則80’s~沢田研二から大滝詠一まで』(文藝春秋)では「80年代最高傑作イントロ」「大村雅朗最高傑作アレンジ」と評し、先日発売された『80年代音楽解体新書』(彩流社)では、コード進行の妙味に言及した。

今回は、さらに具体的な分析として、歌い出し冒頭のたった4小節を抽出して、その中に込められた、この曲の新しさを検証してみたいと思う。

まずは歌い出しの音形である。「♪ さよなら Sweet Pain 頬づえついていた夜は 昨日で」が冒頭4小節の歌詞となるが、実にゆったりとした前の2小節と、実にせわしない後ろの2小節の対比はどうだろう(図1)。





後に述べる音使いやコード進行もさることながら、この曲を初めて聴いたときに驚いたのは、この音形だった。まさに新感覚。今までの日本の、いや世界の音楽に無かったであろう、斬新で機械的なフレーズ。

作曲は、この曲が実質的なブレイクとなる小室哲哉。90年代に栄華を極める、斬新で機械的な小室哲哉サウンドの萌芽が、すでにここで見て取れるのだ。

次に、細かくなるのだが、「♪ (さ)よ(なら Sweet Pain)」の「よ」の音を注意深く聴いてほしい。何だか宙に浮いたような、妙な浮遊感があることに気付かれる方もいるかと思う(図2)。





この音は、専門用語で言う「9th(ナインス)」の音なのである。この「9th」には、大沢誉志幸『そして僕は途方に暮れる』のイントロから流れ続ける「♪ レレ・レレレミ」というリフの影響がある。この「レ」の音が「9th」で、この曲も『そして僕は途方に暮れる』も、編曲は大村雅朗。

―― 小室:大沢(誉志幸)さんの「そして僕は途方に暮れる」は、大村さんの最高傑作かなと思ってるんですけど、絶妙な組み合わせだなぁと思っていて。「これぞアレンジ」というか、曲を生かすアレンジはすごいなと

―― 「そして僕は途方に暮れる」リフは小室さんの中では add9th ですか、それともトニック+1度?
小室:add9th ですね。これで何曲書けたか数えられないくらいです。実は僕は sus4 でデビューできたというか、sus4 でメジャーレーベルに行けたと思っているくらいなんですが、それだけじゃだめだってことで、6th や 9th もメロディやリフに入れていこうっていう時に add9th に出会って。

梶田昌史・田渕浩久『作編曲家 大村雅朗の軌跡1951 ― 1997』(DU BOOKS)にある、小室哲哉へのインタビューより。小難しい音楽理論の話はさておき、小室哲哉が、『そして僕は途方に暮れる』や大村雅朗、「9th」の音に強い影響を受けていることが、よく分かるくだりである(ちなみに「sus4」は「♪ わかり始めた. My Revolution」で転調する前に鳴り響くコード)。

そして最後に、この4小節のコード進行について。図3(キー)にある進行で、これは私が「後ろ髪コード進行」と名付けるものである。クセがあり、そのため普通はサビだけに用いられるコード進行を、臆面もなく、歌い出しから何度も繰り返すところに、小室哲哉の新しい感性が体現されている(キーBをCに移調)。





以上、このたった4小節、されど4小節。4小節計16拍の中に、新しい試みが、「これでもか!これでもか!」と詰め込まれている。ただ、それが積もって珍奇な響きになるのではなく、歌謡曲とニューミュージックとロックのど真ん中で、キラキラと光り輝き出すのだから面白い。

渡辺美里が、大村雅朗が、小室哲哉が、音楽シーンのど真ん中に繰り出したのは、86年1月のこと。さぁ、EPIC の黄金時代がやって来た!

2019.09.07
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カタリベ
1966年生まれ
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