2月22日

スティーヴ・ペリー加入!ジャーニーのレコジャケから読み解くスーパースターへの道のり

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累計では1,000万枚を越えるセールスを記録した「エスケイプ」


レコード会社の洋楽ディレクターとして、私がジャーニーを担当したのは、1981年リリースのライブアルバム、『ライヴ・エナジー』からです。続いて同年に発表されたスタジオアルバム『エスケイプ』は全世界で人気大爆発。アメリカでもナンバーワンを獲得し、80年代を代表する名盤として今なお人気があります。当時の全米で800万枚、累計では1,000万枚を越えるセールスを記録しています。

業界の常として、スーパーセールスを記録した後は、得てして失敗しがちですが、『エスケイプ』の次に発売されたアルバム『フロンティアーズ』は前作同様に大成功しました。『エスケイプ』がロングセラー化して売れ続けているタイミングでの発売ですから、お店に入る初回枚数やメディアの露出など、新譜に対する全ての期待感に勢いがあったのです。

当事者だった私も、アルバムのマスターテープが届いて「セパレイト・ウェイズ」のイントロを聴いた瞬間に “これは絶対勝てる!売れるぞ“ と確信しました。プロモーションチームの仲間たちに聴かせた時は、期せずしてみんなから拍手が起きたほど盛り上がったものです。



500万枚のスーパーセールスを記録した「フロンティアーズ」


当時の時代背景としては、MTVの開局と共に、世界的にロックが産業として成立していく右肩あがりのタイミング。レコードもライブもマーケットが巨大化し、何百万枚というセールスを記録するアルバムも数多く出始めていました。『フロンティアーズ』が発売された1983年、アメリカではマイケル・ジャクソンのモンスターアルバム『スリラー』が長期政権をとっていたので、アルバムチャートは残念ながら9週連続の2位どまりでしたが、これとて凄い記録です。発売当時、このアルバムも500万枚ほどのスーパーセールスを記録しています。

レコード会社の洋楽ディレクターとして、アーティストの人気最高潮時に担当できたことはラッキーだったというしかありませんが、それまで苦労していた前任者に申し訳なく思う気持ちも多々あります。そう、その前任者の時代からこの『フロンティアーズ』に至るまで、アーティスト側の気合というか熱い思い、つまり、“絶対に成功するぞ” というコミットメントや “成功への誓い” が、それぞれのアルバムタイトルとカバーデザインに込められていたのです。


ジャーニー結成のきっかけにはハービー・ハーバートが


バンドのヒストリーを簡単に説明しましょう。そもそもジャーニーとは、サンタナのツアースタッフだったハービー・ハーバートが、サンタナのバンドメンバーだった10代のギタリスト、ニール・ショーンを連れて飛び出し、彼のために作ったバンドです。専任ヴォーカリストがいた時期もありますが、インストゥルメンタル曲主体のプログレ的ロックバンドという位置付けで、1975年から77年の間にアルバムを3枚発売するものの、ベイエリア(サンフランシスコ)周辺で支持を得ていたくらいでした。

マネージャーのハービーとしては、バンド成功のために、抜きん出たボーカリストが必要だと感じていました。そんな時、スティーヴ・ペリーとの出会いがあるのですが、彼の歌唱力のみならずソングライティングの才能に成功を確信したのでしょう。彼との出会いでハービーは、一気に大きな設計図を描き始めました。

バンドのサクセス第一歩だった「インフィニティ」




1978年に発売されたアルバム『インフィニティ』では、プロデューサーに、クィーンを大ヒットさせたイギリス人のロイ・トーマス・ベイカーを起用。バンド本来のプログレ的な要素に、スティーヴのハイトーンボーカルが見事な調和を創り出し、これが大当たり。ヒット曲が生まれ、アルバムはミリオンセールスを記録しました。バンドのサクセス第一歩です。

アルバムジャケットに描かれていたのは、今まさに広がろうとしている翼。そう、アルバムタイトルである『インフィニティ』という言葉通りに、その翼が無限大に広がろうとしているのです。デザイン担当は、サンフランシスコのフラワームーブメントの中で、サイケデリックなデザインで人気のあったアルトン・ケリーとスタンリィ・マウスのコンビ。ちなみに、グレイトフル・デッドの頭蓋骨と薔薇のデザインも彼らの手によるものです。

「エヴォリューション」で今まさに飛び立とうとしていたジャーニー




翌1979年に発売されたアルバムは『エヴォリューション』。上り調子の時は特にそうですが、間を置かずコンスタントに新譜を発表するということが業界の鉄則。前作で使った宣伝費やエネルギーがマーケットに残っているうちに発売されるわけですから、レコード会社的にもアーティスト的にも非常に大きなアドバンテージになるのです。

カバーデザインでは前作に登場した翼がタイトル通りさらに大きく “進化” を遂げ、無限マークに囲まれて羽根が増えていることが分かります。無限大に進化した翼が現れ、ジャーニーは今まさに飛び立とうとしています。

「ディパーチャー」で揺るぎないポジションを確保




1980年に発売されたアルバムのタイトルは『ディパーチャー』。ジャーニーはいよいよ新しい目的地に向かって “発進” しました。TOP40シングルヒットも増え、この作品はアルバムチャートの8位まで上昇。78年『インフィニティ』、79年『エヴォリューション』、80年『ディパーチャー』と続いたホップ・ステップ・ジャンプの3部作は見事に大成功。アメリカンバンドとして揺るぎないポジションを確保することになります。

翼をひろげて飛び立って行ったのは、エジプトの神話にもあり、その象形文字にも登場する黄金のスカラベ(昆虫)。調べてみると色々な伝説がありました。太陽神の化身であったり、月の公転に関係しているとか。はたまた、大空を横切り太陽の周りをまわって、その日の夜には天国 / 新世界に到達したとしても、翌朝にはまた戻ってくることもできる… という創造、復活、不死のシンボルとのこと。無敵の昆虫です。『ディパーチャー』のジャケットをよく見ると、翼を広げて宇宙空間を飛んでいく光り輝くスカラベが描かれています。新しい惑星、そこが目的地だと思いますが、この星に向かっているようです。

「ライブ・エナジー」次なる物語の始まり




そして、この3部作のケジメとして発表されたのが1981年のライブアルバム『ライブ・エナジー』です。原題は『CARTURED』。意味は “つかまえられた” です。ライブアルバムにこのタイトルを使っているケースは他アーティストでも見られますが、ジャーニーの場合は、まさに翼を広げて発進していったはずのスカラベが捕獲されたということで、なかなか意味深いネーミングではないかと思います。

このアルバムのジャケットをじっくり見ると、スカラベは丸い円の中に取り囲まれているようです。そして裏ジャケットではメンバーが球体の中に閉じ込められています。そう、実はこのライブアルバムは次なる物語の始まりでもあったのです。

世界中でスーパーセールスを記録した「エスケイプ」




ライブアルバムの半年後に発売された新譜が『エスケイプ』。捕らえられたスカラベは太陽の化身でもあり不死身です。大ヒットアルバムですからカバーデザインはみなさんご存知だと思いますが、囲っていた球体をぶち抜けて、黄金に輝くスカラベが飛び出しています。まさにタイトル通り “エスケイプ” に成功し、世界中でスーパーセールスを記録するのです。

エジプト神話のように新世界に到着したジャーニー




そして、スカラベが向かおうとしていた目的地は、未だ誰しもが足を踏み入れたことのない新世界(フロンティア)でした。1983年のアルバム『フロンティアーズ』では、スカラベの化身なのか、宇宙飛行士のヘルメットをかぶった未来人なのか宇宙人なのか分かりませんが、そんな顔形が描かれています。​​これは目的地に到達できたということでしょうか。お約束の無限大マークもあるし、口まわりはエジプトの王、ツタンカーメンのマスクに似せているようにも見えます。

裏ジャケットでは、スカイダイビングで輪になって宙に浮いているメンバーの写真が使われています。偶然ではないと思いますが、1975年のデビューアルバムのジャケットでは無重力に浮かぶメンバーがデザインされており、しかも思わずニヤついてしまいますが、邦題は偶然にも “宇宙への旅立ち“ でした。

無限大(インフィニティ)に進化(エヴォリューション)した翼をもった太陽神の化身・黄金のスカラベは、宇宙空間に向かって発進(ディパーチャー)。いったん捕獲(CARTURED)されたものの脱出(エスケイプ)に成功し、エジプト神話のように新世界(フロンティアーズ)へ到達―― こんなストーリーでしょうか。


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2024.09.26
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カタリベ
1950年生まれ
喜久野俊和
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