2024年 9月18日

産業ロックと揶揄されたジャーニー!21世紀になっても全然ナツメロじゃなく愛される理由

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ジャーニーのベストアルバム「グレイテスト・ヒッツ〜永遠の旅」(最新リマスター2LP・180g重量盤)発売日
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来日目前にジャーニー「グレイテスト・ヒッツ〜永遠の旅」アナログ盤がリリース


ジャーニーの『グレイテスト・ヒッツ〜永遠の旅』が、9月18日に180g重量盤2枚組アナログ盤として再リリースされた。バンドのボーカリストであった(現在は脱退)スティーヴ・ペリーがリマスター監修した輸入盤国内仕様で、10月に行われる7年ぶり12回目のジャパンツアー敢行を前に、待望のリリースとなった。

『グレイテスト・ヒッツ〜永遠の旅』のオリジナルは1988年11月に発売。翌年2月11日付の全米アルバムチャートで10位を記録し、その後800週以上もチャートインするというロングセラーになった。99年にはLPとCDのセールスが1,000万枚を突破し、2024年1月時点では、フィジカルのセールスとデジタルダウンロード / ストリーミングを合わせて、1,800万枚セールスに相当する数字を叩き出している。RIAA(全米レコード協会)のベストアルバム売上では、イーグルス、ビリー・ジョエルに続く歴代3位の記録を保持しているのだ。

今回の最新リマスター版『グレイテスト・ヒッツ』は、オリジナル盤と同じ曲順で構成され、加えて96年、10年ぶりに再始動したジャーニーの復帰作『トライアル・バイ・ファイアー』からのファーストシングル「ラヴ・ア・ウーマン」が収録された。

キャッチーなアメリカンハードロックのスタイルへと変貌していったジャーニー


周知の通り、ジャーニーは1975年のファーストアルバム『宇宙への旅立ち』の時点では、プログレッシヴロックを指向するバンドだった。ラテンロックの雄、サンタナのバンドに71年、16歳で参加したギターのニール・ショーンが中心となって組まれたバンドだったので、ショーンのギタープレイを聴かせるインストナンバーに重きを置いていたのである。

このスタイルが激変したのは、77年の4作目『インフィニティ』から。今回のベスト盤はこれ以降の作品で構成されているが、『インフィニティ』以降のジャーニーは、新たなボーカリスト―― 伸びやかなハイトーンボイスを活かしたスティーヴ・ペリーの加入により、バンドサウンドの幅も広がり、ニール・ショーンのギタープレイもアメリカン・ハードロックを強力に打ち出す、キャッチーなフレーズが繰り出されるようになる。



スケール感の大きいアメリカンロックの魅力


この時期、ジャーニーは日本の音楽メディアから “産業ロック” と揶揄され、旧来のロックファンからは敬遠される傾向にあった。商業主義的で主張のない音楽性、ということのようだが、ポップに寄せたことにより、多くのファンを獲得し、スケール感の大きいアメリカンロックの魅力を世に知らしめたこともまた事実である。

その少し前、70年代後半のディスコミュージックの世界的流行とパンクの登場によって、それまで一時代を築いてきたロックバンドの多くが低迷、または解散や活動休止を余儀なくされたことも大きいだろう。アメリカ音楽業界はロック音楽の大衆化を図り、そこで万人受けするメロディーと、スケールの大きなサウンドメイクを実現できるロックバンドがメインストリームに躍り出る。

ジャーニーの他にもTOTO、フォリナー、スティクスといったグループが次々と大ヒットを放っていったのは、そういうアメリカ音楽業界の要請と、時代の必然があいまってのことだったのだ。特にギターのニール・ショーンに関しては、ハードロックやヘビーメタルの人気とは別に、メロディアスで哀愁のあるギタリストとして一定の人気があった。

正確無比なピッキングによるテクニカルなプレイも上手いが、まとまりのあるフレージングもまた聞くものを魅了する、ニール・ショーンはそんなギタリストで、セッションワークの多さも含め、同時期に人気を博したTOTOのスティーヴ・ルカサーと共通する魅力がある。そして、スティーヴ・ペリーの広い音域とスケール感を持った歌唱は、スタジアム公演でのライブアクトに最も適したものだった。

ギタリストとボーカリストが魅力的であることが、ロックバンドの必須条件であるなら、ジャーニーが80年代に爆発的な人気を得たのも、また納得のいくところだろう。

「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」のエンドロールで使用された「お気に召すまま」


80年にリリースされた6作目『ディパーチャー』では、ギターを前面に打ち出したハードロック風の作品と、ペリーのボーカルを重視したポップチューンが、アナログAB面に絶妙のバランスで分けられており、本ベストアルバムにも収録されている「お気に召すまま」(Any Way You Want It)のキャッチーなメロディーとショーンの速弾きギターソロは、ジャーニーというバンドの魅力を凝縮したかのような作品である。同曲は、2003年のアクション映画『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』のエンドロールでも効果的に使用されている。



ファッションデザイナーの高田賢三が監督を務めた81年のファンタジー映画『夢・夢のあと』のサウンドトラックを手掛けたり、ライブアルバム『ライブ・エナジー』をリリースしたのと同じ年に発表した7作目『エスケイプ』には、代表作の1つでもある「ドント・ストップ・ビリーヴィン」が収録されている。

この曲に象徴されることだが、ジャーニーのヒットナンバーは、その時代の象徴的な楽曲として、繰り返しリバイバルヒットとなる傾向が強い。ジャーニーの地元であるMLBサンフランシスコ・ジャイアンツのホームゲームでは、毎回8回にスタジアムで流されており、2007年には、アメリカの人気ドラマ『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の最終回でこの曲が起用されて人気が再上昇した。



さらに2009年からスタートしたミュージカルドラマ『glee』でも効果的に起用されたほか、トム・クルーズ主演のミュージカル映画『ロック・オブ・エイジス』(2012年)でもキャスト全員で演奏するエンディングテーマとして使用されるなど、「ドント・ストップ・ビリーヴィン」は、アメリカでは80年代を象徴する楽曲として繰り返し用いられ、その度に人気が再燃しているのだ。

『エスケイプ』にはもう1曲、キーボードのジョナサン・ケインによる名バラード「オープン・アームズ」が収録されている。こちらもマライア・キャリーが95年にカバーして再び注目を集めたほか、日本では2004年に伊藤英明の主演映画『海猿』の主題歌に起用され、リアルタイムのジャーニーに接していない日本のリスナーにとっても馴染みのある楽曲となっている。



日本で最大のヒットとなった「セパレイト・ウェイズ」


そして83年発表の8作目『フロンティアーズ』は、アルバム自体が1,000万枚を超える大ヒット作でもあり、多くのファンが彼らの最高傑作に挙げている。中でも「セパレイト・ウェイズ」は日本で最大のヒットとなった楽曲で、その後も日産自動車「エルグランド」のCMに起用されたことで注目が高まり、さらに2009年よりTBSの『ワールド・ベースボール・クラシック』のテーマ曲、また侍ジャパンの関連試合などで流されることで、野球ファンにはお馴染みの人気曲となっている。また、Netflixのオリジナルドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』での起用による再ヒットも記憶に新しい。

他にも『グレイテスト・ヒッツ』収録曲では、1曲目の「オンリー・ザ・ヤング」が85年の映画『ビジョンクエスト〜青春の賭け』のオープニングシーンに起用されており、同映画のサントラが大ヒットしたことで、初期のMTVとロックの融合を決定づける作品になっている。また「ライツ」は、NFLサンフランシスコ49ersの応援歌として定着していたり、アメリカ国民にも長期間に渡って愛される楽曲ぞろいなのだ。



スケール感とダイナミズムを必要とされるシーンにピッタリはまるジャーニーの楽曲


ジャーニーの楽曲が時を超えて愛される理由は、野球や映画のエンディングテーマといったスケール感とダイナミズムを必要とされるシーンにおいて、実にピッタリとハマる音楽であり、同時にミュージカル作品のような、全員で演奏、あるいは合唱する際にも有効な大衆性を兼ね備えたメロディとサウンドであることが大きいのだろう。

練りに練られたジャーニーのサウンドメイクは、時を超えても古くならず、21世紀以降も様々なメディアで使用されるだけの耐久力を持ち合わせている。80年代にロックの大衆化を目的として生まれたジャーニーのサウンドは、時代を超えた名曲として、今、ここに存在しているのだ。


Information



ジャーニー「グレイテスト・ヒッツ~永遠の旅」
▶ スティーヴ・ペリー本人監修による最新2024年リマスター
▶ 180g重量盤2枚組
▶ 歌詞・対訳・解説(2024年新規)付
▶ 日本語帯付
▶ 1,000セット完全生産限定盤
購入はこちら(https://sonymusicjapan.lnk.to/Journey_ghAW)

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