レイ・チャールズを描いた『Ray / レイ』、フランキー・ヴァリを描いた『ジャージー・ボーイズ』、ジョニー・キャッシュを描いた『ウォーク・ザ・ライン / 君につづく道』など著名なアーティストの伝記映画はこれまでにいろいろ制作されました。来年にはクィーンを描いた『ボヘミアン・ラプソディ』も公開されるようです。
こうしたちゃんと俳優を配してアーティストの人生を描いた伝記映画、ロック題材のものは80年代くらいから登場し始めました。そんな80年代ロックアーティスト伝記映画の決定版のひとつが87年の『ラ★バンバ』です。
『ラ★バンバ』の主人公はリッチー・ヴァレンス。わずか17歳で早逝した伝説のロックンロールアーティストです。伝説と言っても我々日本人にとってはほぼ無名、欧米の人にとっても若いひとにはほとんど知られてなかったと思われます。ですので、この映画のヒットによって彼の存在を知った人がほとんどでした。
では、そのヒットの要因は何か? 脚本、キャスティング、演出など映画における重要なポイントはすべてにおいて見事なんですが、それ以上に決定的なのが「音楽の見せ方」でした。
カルロス・サンタナと音楽プロデューサーのマイルズ・グッドマンが音楽監督を担当、映画における音楽キャスティングが見事にハマります。なかでも主役であるリッチー・ヴァレンス役のルー・ダイアモンド・フィリップス以上の存在感を見せつけたのがロサンゼルス出身のヒスパニック系バンド、ロス・ロボスです。
1950年代に録音されたリッチー・ヴァレンスの作品は音質的に使用しにくいこともあり、映画におけるリッチー・ヴァレンスの曲はすべてロス・ロボスによって演奏されました。リッチー・ヴァレンスの「カム・オン・レッツ・ゴー」を過去にカヴァー(デビューEPに収録)していたこともあって起用されたようですが、この起用がこの映画の成功のキーともいえるほど、どハマりしたワケです。
この映画のトレイラー替わりにもなった「ラ・バンバ」のミュージックビデオもガンガン流れまくり、ビルボード3週連続1位を獲得します。
劇中にもメキシコ民謡「ラ・バンバ」を演奏するバンドとして登場し、愛嬌をみせるロス・ロボスはこのヒットで一躍スターに。その後こういったシングルヒットには恵まれませんでしたが、T・ボーン・バーネットやチャド・ブレイク、ミッチェル・フルームといったマニア好みのプロデューサーらと素晴らしいアルバムを残し現在も活躍中です。
「ラ・バンバ」の印象が強すぎて「ロス・ロボス=ラ・バンバ」のようになってしまったのは残念ですが、ライ・クーダーなみにアメリカンルーツミュージックやメキシカンミュージックなどのさまざまなジャンルの音楽を表現し続ける姿勢は立派です。是非彼らの音楽に触れていただきたいです。
しかし『ラ★バンバ』の見どころはロス・ロボスだけではないんです。
<つづく>
2018.01.05
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