死してなお名を残し、80年代にも絶大な人気を保ち続けたエディ・コクラン――
1987年1月21日にロックの殿堂入りを果たし、この年に公開された伝記映画『ラ★バンバ』では、ブライアン・セッツァーがエディ役を熱演し、高評価を得ました。
翌88年には、リーバイス501の CM で彼の楽曲「カモン・エヴリバディ」が使われます。実はこの CM、彼の恋人であるシャロン・シーリーが、エディと初めて出逢った時にジーンズを履いていたというエピソードから楽曲の採用に至ったのだそうです。
1960年4月17日に21歳の若さで夭逝し、後世に多大な影響を与えたロックスター。ビートルズのジョンとポールが初めて出逢った時に彼の「トゥエンティ・フライト・ロック」をポールがプレイし、ジョンに聴かせたというのは有名な話ですが、その後70年代、80年代にも数多くのミュージシャンがエディをリスペクトし、カヴァー曲を残しています。「トゥエンティ~」は十代の激情をそのまま歌詞にしたような曲で、ザ・ローリング・ストーンズもプレイしていますね。内容はこんな感じです。
彼女はビルの20階に住んでいるが、エレベーターが壊れている。一階ずつ階段で登っていくが息も絶え絶え。ようやく昇りつめても、こんなんじゃ腰もガクガクで ROCK する気も起きない。
ROCK=FUCK だという隠喩を含んでいる過激な曲なのですが、素顔のエディ・コクランは、大変柔和で物静かな性格だったらしく、休日は恋人でソングライターのシャロンと自室で過ごすことが多かったらしいです。
また、同時代を築いたロックスター、バディ・ホリー、ビッグ・ボッパー、リッチー・ヴァレンスが飛行機事故で他界した時も、その悲しみを「スリー・スターズ」という美しいバラードにして発表しました。そんな心優しき彼の楽曲が反逆の象徴として後世に受け継がれたのは興味深いですね。
50年代末、当時はまだ珍しかったエレキベースを導入した「サムシン・エルス」は、彼をアイドルとして崇拝していたシド・ヴィシャスのカヴァーで有名です(この曲はエディの兄であるボブ・コクランとシャロンとの共作)。また、「サマータイム・ブルース」はザ・フーの歴史的名盤『ライヴ・アット・リーズ』(1970年)に収録されている他、Tレックス、ブルー・チア―など、数多くのアーティストにカヴァーされています。
日本人に馴染みの深い「サマータイム・ブルース」は、アルバム『WE LOVE 子供ばんど』(80年)で子供ばんどがカヴァー。また、RCサクセションが反原発を掲げたアルバム『カバーズ』(88年)の中でも披露していますね。
清志郎さんの歌う「人気のないところで泳いだら 原子力発電所が立っていた」という歌詞も強烈ですが、子供ばんどのカヴァーでは…
暑い夏がまたやって来る
みんなで海へくり出そうぜ
イカシタあの娘に声かけりゃ
アンタはまだまだ子供だよ
どうにもならないこの気持ち
どうすりゃいいのさ
サマータイム・ブルース
と、エディのイメージに近い形で歌われているようです。どうやら、「サマータイム・ブルース」というのは、日本語の歌詞が乗せやすい非常にキャッチ―なナンバーだということに気が付きました。
実はこの曲、クレージーキャッツの「スーダラ節」の歌詞を乗せるとしっくりくるんです。
チョイト一杯の つもりで飲んで
いつの間にやら ハシゴ酒
気が付きゃ ホームのベンチでゴロ寝
これじゃ身体に いいわきゃないよ
分かっちゃいるけど やめられねぇ
スイスイ スーダララッタ
スラスラスイスイスイ
特に、ザ・フーや子供ばんどのヴァージョンだとがっちりハマると思うのですが… どうでしょう。
こうした親しみやすいメロディというのもエディ・コクランの天才たる所以であり、後世に受け継がれる理由のひとつではないかと思います。
歌詞引用:
サマータイム・ブルース / RCサクセション
サマータイム・ブルース / 子供ばんど
スーダラ節 / ハナ肇とクレージーキャッツ
2018.08.15
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