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CBSソニー２０周年企画「STAR BOX」アーティスト・ベスト盤がリリースされた日
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1988年８月26日、CBSソニー20周年企画として、洋楽部で『STAR BOX』アーティスト・ベスト盤を発売しました。
ラインナップはビリー・ジョエル、ボズ・スキャッグス、シカゴ、ジャーニー、TOTO、アース・ウインド＆ファイアーの６タイトル。当初、10タイトル以上を申請していましたが、創業記念盤という事でアメリカ CBS から特別に許諾がおりたものです。
CBSソニーレコードは株式会社として1968年に創業。国内アーティストに先んじて、サイモン＆ガーファンクル「サウンド・オブ・サイレンス」が大ヒット。シカゴ、サンタナ、ブラッド・スウェット＆ティアーズなど新しいアーティスト達で会社を支え、マーケットを引っ張ってきたという自負もあり、インターナショナルなイベントで20周年を祝いたいという想いがありました。というところで発案された、大型イベントとそれにともなう商品企画。その一つが『STAR BOX』というわけです。
まず、この年３月にオープンしたばかりの東京ド―ムで、『KIRIN DRY GIGS』（1988年７月24日）と称されるライブイベントを開催することが決まります。今でこそ、夏フェスなどで普通の出来事ですが、当時としては珍しく５アーティスト、オムニバススタイルでのコンサートでした。ヘッドライナーはビリー・ジョエル。他にボズ・スキャッグス、アート・ガーファンクル、フーターズ、そしてオープニングにインぺリテリと、昼過ぎから夜までライブを繰り広げるという、洋楽好きにはたまらない画期的なものでした。
この企画発案が、当時の私の上司・Ｔ部長。20周年イベントとして 「ビリーとボズを呼んで、一緒にライブやるぞ！」と熱く語っていたのが４月頃。このアーティスト、共に私の担当です。アイデアを聴かされた私の感想は… 絶対無理、そんなこと不可能だと思ってました。当時、No.１アーティストだったビリーは新譜発売前で創作中。ツアーも何もやってない彼が、この日だけの為に来日するとは到底思えなかったのです。上司には申し訳ありませんが、どう考えてもあり得ないなと内心思っていました。
部長、毎晩、夜遅くまで残ってアメリカ CBS を動かします。我々も帰るわけにはいきません。日本の業務時間が終わる頃、NY オフィスはスタートです。元来、ビリ―・ジョエルと CBSソニーの関係は良好でしたが、この徹夜に近い作業を10日間ほど繰り返し、その熱意と粘り強い交渉の結果、彼の参加が決まったのです。もちろん、一般興行を兼ねているので当初からウドー音楽事務所とも歩調を合せています。ヘッドライナーのビリーが決まれば、他はそれほどの苦労はありません。
ボズは自身の日本公演が終わった後の日程ですし、アート・ガーファンクルは新譜を出したばかり。あとは、当時売り出し中のフーターズとインぺリテリをオープニングにつけています。音楽ジャンルの幅も CBS っぽく、新旧のスターたちが揃いました。
時代はバブル絶頂期。ビール業界ではドライ戦争真っただ中。この東京ドームコンサートに KIRIN がジョインして DRY GIGS が誕生した次第です。このコンサートの正式なネーミングはこう表示されています。
THE DAY OF THANKS FOR YOU KIRIN DRY GIGS’88 UDO ARTISTS PRESENTS IN CONJUNCTION WITH THE 20TH ANNIVERSARY OF CBS SONY GROUP INC.
CBSソニー20周年イベントに、KIRIN の冠がついた一般興行が合体してウドー音楽事務所に仕切ってもらった、というハイブリット型コンサートでした。
思い出してもため息が出るほどです。この準備に洋楽部員全員、疲弊する事となりました。メディアとディーラーさん達を集めた記者会見とパーティの主催、その式次第と演出、招待客の選出、地方ゲストの宿泊の手配… そして、公演当日のライブの合間の演出など、もちろん我々の業務です。５アーティストが同時に来日している状況ですので、その滞在中のアテンドや取材の事前準備など、部員全員が総がかりで２か月はかかりっきりでした。他のアーティストやプロダクツに係わる仕事、全くやれてなかったのではないかと思います。
また、宿泊ホテルと記者会見＆パーティ会場は違います。アーティスト達のトランポも一苦労でした。携帯電話がない時代です。高性能トランシーバーを十数台購入し、宿泊ホテルと記者会見＆パーティ会場の中継だけのためにホテル高層階に部屋も押さえます。
人柄よきフータ－ズと新人インペリテリは楽ですが、他３人は超 VIP であるか変人でした。あれだけ要望していたのに記者会見出席をぐずったり、パーティ会場から姿を消したり、この準備と当日の苦労はイベントが終わった後、３名の退職者を出したほど過酷なものでした…
さて、イベントに並行して発案された二種の商品企画。ともに私の制作担当案件でしたが、ひとつは、タイトル『THANKS FOR YOU』と名付けられたオムニバス CD です。ビリー以下、出演者が１枚の CD に数曲ずつ収まっており、ドームコンサートと同じデザイン＆イメージのもの。グッズとして、ライブ当日には即売に並んでいます。
そして —前置きが長くなりましたが— もうひとつの商品企画が、この『STAR BOX』だったというわけです。普通、ビリーやボズの「日本特別ベスト盤」などありえないものなのですが、このドーム出演とセットでアメリカ関係者が全面協力してくれたのです。
当初、７月24日のイベント当日に発売を間に合わせたいという希望ありましたが、残念ながら US の許諾状況と制作進行都合により、途中から７月発売は断念し、翌８月の発売となりました。営業的、製造工程的にも６月頭にはラインナップが確定していないと無理でした。とはいえ、これとて制作過程は社内ルールを飛び越えて、超法規な進行で発売まで漕ぎつけたのです。
なにしろ20周年記念と銘打っています。ユーザーにお買い得感と満足感を与えるものでなければいけません。『STAR BOX』というくらいですから、パッケージも BOX 仕様を模索しました。とはいえ緊急発売体制で製造期間は短い。しかもビリーやボズは人気アーティストですから、結構な量が必要です。
BOX 仕様の箱はレコード会社の工場では作れません。いくつもの会社に当たってもらいましたが、残念ながらその納期の問題で諦めています。結局、CD と 48P の歌詞ライナーブックをプラスティック製の三方背ケースに差し込むというカタチに落ち着きました。
こういうギリギリの工程で商品を作っていく事は、制作マンとしては緊張の連続です。統一フォーマットを決めた後は、各アーティスト担当に分担して作業をやりますが、私自身は来日するビリー、ボズに加えてジャーニーの３タイトルを持っています。アシスタントがいるとはいえ、来日準備と並行して、商品企画書や発売資料作成、各々の解説、歌詞、対訳などを出稿し、文字校正を行います。担当案件は大物が多いのでミスった場合は被害が大きいのです！
価格的には2500円で18曲。１曲あたり140円というお買い得感を出しています。当時の収録曲数は LP レコード的な考えがあり、12曲前後の収録がスタンダードの時代でした。普通のベスト盤とは違い、たっぷりヒット曲が入っているというのが『STAR BOX』の理念。購入者が満足してくれていれば嬉しい限りです。
ちなみに、この『STAR BOX』シリーズ、翌年にラインナップを増やしてⅡを発売。この後、当初の理念は消え、単なる洋楽のアーティスト・ベスト盤のニックネームとなり、翌々年にはⅢを発売しています。既に CD の時代を迎えていましたが、その流れをより加速させるため、会社としては積極的にアナログ盤を店頭から引き上げてベスト盤の CD に替えていくという行政指導的な動きもありました。
そう、CD のフォーマットホルダーはフィリップスとソニー。ソフト会社の我々もこれに呼応するカタチで CD 化を率先していたというわけです。
2018.08.25
ラインナップはビリー・ジョエル、ボズ・スキャッグス、シカゴ、ジャーニー、TOTO、アース・ウインド＆ファイアーの６タイトル。当初、10タイトル以上を申請していましたが、創業記念盤という事でアメリカ CBS から特別に許諾がおりたものです。
CBSソニーレコードは株式会社として1968年に創業。国内アーティストに先んじて、サイモン＆ガーファンクル「サウンド・オブ・サイレンス」が大ヒット。シカゴ、サンタナ、ブラッド・スウェット＆ティアーズなど新しいアーティスト達で会社を支え、マーケットを引っ張ってきたという自負もあり、インターナショナルなイベントで20周年を祝いたいという想いがありました。というところで発案された、大型イベントとそれにともなう商品企画。その一つが『STAR BOX』というわけです。
まず、この年３月にオープンしたばかりの東京ド―ムで、『KIRIN DRY GIGS』（1988年７月24日）と称されるライブイベントを開催することが決まります。今でこそ、夏フェスなどで普通の出来事ですが、当時としては珍しく５アーティスト、オムニバススタイルでのコンサートでした。ヘッドライナーはビリー・ジョエル。他にボズ・スキャッグス、アート・ガーファンクル、フーターズ、そしてオープニングにインぺリテリと、昼過ぎから夜までライブを繰り広げるという、洋楽好きにはたまらない画期的なものでした。
この企画発案が、当時の私の上司・Ｔ部長。20周年イベントとして 「ビリーとボズを呼んで、一緒にライブやるぞ！」と熱く語っていたのが４月頃。このアーティスト、共に私の担当です。アイデアを聴かされた私の感想は… 絶対無理、そんなこと不可能だと思ってました。当時、No.１アーティストだったビリーは新譜発売前で創作中。ツアーも何もやってない彼が、この日だけの為に来日するとは到底思えなかったのです。上司には申し訳ありませんが、どう考えてもあり得ないなと内心思っていました。
部長、毎晩、夜遅くまで残ってアメリカ CBS を動かします。我々も帰るわけにはいきません。日本の業務時間が終わる頃、NY オフィスはスタートです。元来、ビリ―・ジョエルと CBSソニーの関係は良好でしたが、この徹夜に近い作業を10日間ほど繰り返し、その熱意と粘り強い交渉の結果、彼の参加が決まったのです。もちろん、一般興行を兼ねているので当初からウドー音楽事務所とも歩調を合せています。ヘッドライナーのビリーが決まれば、他はそれほどの苦労はありません。
ボズは自身の日本公演が終わった後の日程ですし、アート・ガーファンクルは新譜を出したばかり。あとは、当時売り出し中のフーターズとインぺリテリをオープニングにつけています。音楽ジャンルの幅も CBS っぽく、新旧のスターたちが揃いました。
時代はバブル絶頂期。ビール業界ではドライ戦争真っただ中。この東京ドームコンサートに KIRIN がジョインして DRY GIGS が誕生した次第です。このコンサートの正式なネーミングはこう表示されています。
THE DAY OF THANKS FOR YOU KIRIN DRY GIGS’88 UDO ARTISTS PRESENTS IN CONJUNCTION WITH THE 20TH ANNIVERSARY OF CBS SONY GROUP INC.
CBSソニー20周年イベントに、KIRIN の冠がついた一般興行が合体してウドー音楽事務所に仕切ってもらった、というハイブリット型コンサートでした。
思い出してもため息が出るほどです。この準備に洋楽部員全員、疲弊する事となりました。メディアとディーラーさん達を集めた記者会見とパーティの主催、その式次第と演出、招待客の選出、地方ゲストの宿泊の手配… そして、公演当日のライブの合間の演出など、もちろん我々の業務です。５アーティストが同時に来日している状況ですので、その滞在中のアテンドや取材の事前準備など、部員全員が総がかりで２か月はかかりっきりでした。他のアーティストやプロダクツに係わる仕事、全くやれてなかったのではないかと思います。
また、宿泊ホテルと記者会見＆パーティ会場は違います。アーティスト達のトランポも一苦労でした。携帯電話がない時代です。高性能トランシーバーを十数台購入し、宿泊ホテルと記者会見＆パーティ会場の中継だけのためにホテル高層階に部屋も押さえます。
人柄よきフータ－ズと新人インペリテリは楽ですが、他３人は超 VIP であるか変人でした。あれだけ要望していたのに記者会見出席をぐずったり、パーティ会場から姿を消したり、この準備と当日の苦労はイベントが終わった後、３名の退職者を出したほど過酷なものでした…
さて、イベントに並行して発案された二種の商品企画。ともに私の制作担当案件でしたが、ひとつは、タイトル『THANKS FOR YOU』と名付けられたオムニバス CD です。ビリー以下、出演者が１枚の CD に数曲ずつ収まっており、ドームコンサートと同じデザイン＆イメージのもの。グッズとして、ライブ当日には即売に並んでいます。
そして —前置きが長くなりましたが— もうひとつの商品企画が、この『STAR BOX』だったというわけです。普通、ビリーやボズの「日本特別ベスト盤」などありえないものなのですが、このドーム出演とセットでアメリカ関係者が全面協力してくれたのです。
当初、７月24日のイベント当日に発売を間に合わせたいという希望ありましたが、残念ながら US の許諾状況と制作進行都合により、途中から７月発売は断念し、翌８月の発売となりました。営業的、製造工程的にも６月頭にはラインナップが確定していないと無理でした。とはいえ、これとて制作過程は社内ルールを飛び越えて、超法規な進行で発売まで漕ぎつけたのです。
なにしろ20周年記念と銘打っています。ユーザーにお買い得感と満足感を与えるものでなければいけません。『STAR BOX』というくらいですから、パッケージも BOX 仕様を模索しました。とはいえ緊急発売体制で製造期間は短い。しかもビリーやボズは人気アーティストですから、結構な量が必要です。
BOX 仕様の箱はレコード会社の工場では作れません。いくつもの会社に当たってもらいましたが、残念ながらその納期の問題で諦めています。結局、CD と 48P の歌詞ライナーブックをプラスティック製の三方背ケースに差し込むというカタチに落ち着きました。
こういうギリギリの工程で商品を作っていく事は、制作マンとしては緊張の連続です。統一フォーマットを決めた後は、各アーティスト担当に分担して作業をやりますが、私自身は来日するビリー、ボズに加えてジャーニーの３タイトルを持っています。アシスタントがいるとはいえ、来日準備と並行して、商品企画書や発売資料作成、各々の解説、歌詞、対訳などを出稿し、文字校正を行います。担当案件は大物が多いのでミスった場合は被害が大きいのです！
価格的には2500円で18曲。１曲あたり140円というお買い得感を出しています。当時の収録曲数は LP レコード的な考えがあり、12曲前後の収録がスタンダードの時代でした。普通のベスト盤とは違い、たっぷりヒット曲が入っているというのが『STAR BOX』の理念。購入者が満足してくれていれば嬉しい限りです。
ちなみに、この『STAR BOX』シリーズ、翌年にラインナップを増やしてⅡを発売。この後、当初の理念は消え、単なる洋楽のアーティスト・ベスト盤のニックネームとなり、翌々年にはⅢを発売しています。既に CD の時代を迎えていましたが、その流れをより加速させるため、会社としては積極的にアナログ盤を店頭から引き上げてベスト盤の CD に替えていくという行政指導的な動きもありました。
そう、CD のフォーマットホルダーはフィリップスとソニー。ソフト会社の我々もこれに呼応するカタチで CD 化を率先していたというわけです。
2018.08.25
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