11月

ニューエイジの旗手、ウィンダムヒル・レコードを採用したクルマCMの名作

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photo:georgewinston.com  

記憶が曖昧ではあるが、リリースと同時期にこの楽曲を耳にするということはなかったように思う。耳慣れない『ニューエイジ・ミュージック』というカテゴリーがレコード店の一角を占め、ウィンダム・ヒル・レコードという新しいレーベルのディスプレイが目立ち始めたのは、1982~83年ぐらいになってからではないだろうか。

リチャード・クレイダーマンに代表されるイージーリスニングの甘いメロディや、環境音楽として知られ始めたエリック・サティ、さらにその源流ともいえる「カノン」や「G線上のアリア」といった定番クラシックなど、数あるピアノ曲のどれにも似ていないの独特の音色。

『ニューエイジ・ミュージック』が多くのリスナーを魅了するきっかけになったのは、1984年に放送されたテレビCMであったに違いない。ジョージ・ウィンストンが奏でる「憧れ・愛(Longing / Love)」が、俳優の山崎努が出演するトヨタの乗用セダン「クレスタ」のCMで使用されたのだ。

「クレスタ」という車はアッパーミドルクラスのセダンで、その中でもやや個性的なイメージで売り出していた車である。今は80年代ほど車が売れなくなり、モデルが統合され無くなってしまっているが、当時は「いつかはクラウン」という宣伝文句に象徴される “トヨタ・ヒエラルキー”、すなわちカローラに始まり、コロナ、マークⅡ、クラウンへと続く、上級移行のラインナップとして中核を担う重要車種の1台であった。

その中でも「マークⅡ」は国内乗用車の中でトップクラスの販売台数を誇っていたが、あまりにバカ売れ状態であったため、他と同じ車種になるのを嫌ったユーザーたちは、販売系列が異なる「クレスタ」や、もう一台の兄弟車「チェイサー」を選ぶようになっていたのだ。

さて、山崎努という俳優の名前を知ったのは、1980年の黒沢明監督の映画「影武者」で、武田信玄の弟、武田信廉という重要な役を演じていたことがきっかけ。その時既に知られたキャラクター、必殺シリーズの「念仏の鉄」役を私が知るのは、実はその後である。言葉少なに台詞を吐き、時折ニカッと笑う独特の演技で圧倒的な存在感を示す役者さんだが、スターダムにのし上がってきたのはまさにこの頃で、彼はそんな1980年からクレスタのCMに出演している。

発売当初のCMは、タキシードを着た彼がクレスタに乗って荒野をひた走るというもの。使われた楽曲はボズ・スキャッグスの「トワイライト・ハイウェイ(You Can Have Me Anytime)」。キャッチフレーズも「何と私的なクルマだ。」とはなっているが、映像はグランドツーリング感に満ちた、割と無難な演出であった。

ところがこのクレスタがモデルチェンジを行い、2代目となった1984年のCMでは個性を大きく強調したアプローチに変わってくる。ジョージ・ウィンストンの哀愁を帯びたピアノの旋律、CMの中に恣意的に現れる一匹のオオカミの映像に、山崎さんの台詞「オオカミは走らない。男は狩りをしない。」というナレーションが入る… 今もって難解だが、孤高の存在であれというメッセージは伝わってくる。

なお、「オオカミは走らない…」というのは、かつて「羊の皮をかぶった狼」と異名を取ったライバル、日産「スカイライン」を揶揄したものと一部では言われていたが、真偽のほどは定かではない。

個性を重視したクルマ、個性的な俳優、群れないオオカミ、そしていままで聴いたことのない個性的な楽曲。すべてが一点に注ぎ込まれた、クルマCMの名作して非常に印象深い作品といえるだろう。

ジョージ・ウィンストンのアルバムは、この楽曲を含むアルバム『Autumn』の後、『Winter into Spring』『December』『Summer』と続き、四季を表現したシリーズが展開されることになる。いずれも名盤だが、万人向けにはお馴染みパッヘルベルの「カノン」が収録されている『December』を個人的にはお勧めしたい。

2016.11.19
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カタリベ
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