ものの本によれば、トロピカルカクテルブームは1984年であったという。当時カクテルはホテルのラウンジやバーで提供されるのが一般的であったが、カフェバーやディスコブームと相まって日本の若者に浸透し流行したそうだ。
マイタイ、チチ、シンガポールスリング、ブルーハワイなどなど、誰しも一度は口にした事があるだろう。1988年にはトム・クルーズ主演の映画「カクテル」が公開され、同時に主題歌であるビーチボーイズの「ココモ」もヒットした。小生の廻りでトロピカルカクテルブームが起こったのは、それから十年後の1994年、社会人4年目のことであった。
当時、鎌倉の材木座海岸至近に住んでいた友人の両親がベトナムに2年間の転勤となり、当然の成り行きとして友人宅が我々のたまり場となった。週末になると毎週のようにBBQ大会が開催され、半年もしないうちに常連がマイボトルをキープし始めた。その友人には妹がおり、常連客は妹の友だちの為にカルーアミルクやカンパリといったリキュール類もそろえ始めた。もうドンドン友人宅にお酒が溜まっていく。
水は高いところから低いところに流れる自然の摂理と同様、1年後には家人が居なくても週末は友人宅で宴会が催されるようになり、そこに集まる妹の友だちのため、常連客のカクテル作りの腕も上がっていった。しまいには「もう冷蔵庫が古くなってきて、氷りの固まりが遅いから買い換えたらどうだ」と、大きなお世話なことを言い出す客まで現れた。
友人宅は海岸から100m位しか離れていないので、夏は窓を開け放ち、潮の香りを導き入れ、トロピカルカクテルを飲んでいると、まるでフロリダのココモに居るような趣であった(イメージには個人差があります)。
しかし物事にはいつしか終わりがやってくる。寺尾聰ではないが、そして2年の月日が流れ去り、ご両親が帰国すると同時に材木座のカフェバーは閉店した。後には、沢山のお酒の瓶と、ココモのメロディーと、行き場を失った常連客だけが残った。
Kokomo / The Beach Boys
作詞・作曲:Mike Love, Scott McKenzie, Terry Melcher, John Phillips
プロデュース:Terry Melcher
発売:1988年7月18日(US)
2016.10.25
YouTube / ClassicVideos80s
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